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居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
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理由

 10月下旬、ウィンはフロンリオンにいた。カーリルン公領でくすぶっている貴族の子弟をラフェルス伯領に連れていくための最終手続きのためだ。

 夕食の準備が整うまでの間、ウィンとアルリフィーアは大理石の廊下を一緒に滑って楽しみ、ボルティレンとエメレネアをあきれさせた。

 「侍女殿の雇い主は、怒っていらっしゃらないのですか?」とボルティレンはエメレネアに尋ねた。「大層恐ろしい方だと伺っていますが」

 「私の雇い主はカーリルン公です。どなたかとお間違えでは? 執事殿。あなたこそ、やんごとなきお方から褒美でも頂戴したのでは?」

 「私の主君であらせられるカーリルン公の笑顔こそが何よりの褒美ですよ」

 2人は険のある目で相手の顔を見合うと、同時にふっと笑いをこぼした。

 その間にも、ウィンとアルリフィーアは「どっちが長く滑ったのか」で揉めていた。アルリフィーアが、床に足をたたきつけながら怒っている。またウィンが何か余計なことを言ったらしい。ボルティレンは肩をすくめてどこかに行ってしまった。

 エメレネアは、廊下に飾られた花の角度を少し調整する振りをして2人に背を向けた。


 その後、険悪な雰囲気で、というかアルリフィーアが一方的に怒りながら夕食を済ませると、2人は寝室に下がった。ウィンが露台(バルコニー)に出て星を眺めていると、アルリフィーアも露台に出てきた。

 「そろそろ許してやってもよい」

 「え? 何を?」

 「夕食前にウィンが言ったことじゃ!」

 「まだその話!? しつこいなぁ」

 「しつこいとは何じゃ! どうしてウィンはいつもいつも……。もうよい!」

 アルリフィーアは唇を尖らせると、ぷいと横を向いた。小動物のような動きで、見ていて飽きない。ウィンはこらえ切れず失笑してしまった。

 「そうじゃ。前から聞こうと思いながら忘れておった」

 「何?」

 「トルトエン副伯から領地の交換を持ち掛けられたとき、なぜ拒否したのじゃ? ウィンなら『そんなに欲しいのならいいよ』とでも言いそうじゃと思ってな」

 「アデンにもそんなことを言われたなぁ」

 「何か理由でもあるのか?」


 「そうだね……ラフェルスは父上から初めてもらったものだから、かな」

 名もなき帝国の物語 第3章『居眠り卿と純白の花嫁』は以上で完結です。お付き合いいただきありがとうございました。ようやく、主要な登場人物の初期配置が完了しました。

 続編『居眠り伯とオルドナ戦争(仮)』の前に、現在進行中の短編『帝国軍とロメルト・クリズル戦争』、その後でもう一つの短編を出す予定です。もしよろしければお付き合いください。


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