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居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
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トルトエン副伯 その1

 ウィンは、元トルトエン副伯の身柄を預かっている某貴族の屋敷に向かった。彼の刑はまだ決まっていない。


 「初めてお目にかかる。トルトエン副伯」

 「貴公がラフェルス副伯……いやラフェルス伯か」

 ヴァル・ラフェルス・ダリオネイムは彫りの深い顔で、鷲鼻と幅が広い顎が特徴だった。

 「まさか領内から金が出るとはな。そんなもののために全てが狂ってしまった」

 トルトエン副伯には同情すべき点が多々ある。無実の罪を着せられて転封処分となったのは悲劇と言える。

 「父上は死ぬまで繰り言を言い続けていた。なぜこんなことになったのか、と。どうすれば知らなかったということを証明できるのか、と。最後は食事も拒んで死んでしまった。父はどうすればよかったのだろうな」

 「……」

 「我らに落ち度があったのであれば罪は甘んじて受ける。だが父上は知らなかったのだ。そして、本当に命令書は送られていなかったというではないか。無念だ」

 ダリオネイムは、父の無念を晴らすためにもラフェルスへの復帰に拘泥した。父の死後、トルトエン副伯を継ぐと帝国に本領復帰の嘆願書を送り続けた。これによって、パルセリフィン公はラフェルス獲得の動きを手控えざるを得なかった。ラフェルスが注目されて金の存在が露見しては困るからだ。

 そうしている間に、ラフェルスはウィンに与えられることがタッカツァーカによって決まった。今回もまた深い理由などない。本領復帰にこだわるダリオネイムの矛先をウィンに向けて困らせたかっただけである。

 帝国直轄領であれば本領復帰の望みはあった。だが他者に与えられてしまったら本領を取り戻すことは不可能になる。ダリオネイムは焦った。そこに、パルセリフィン公らが接触してきた。ウィンは宮内伯と共謀して不当な手段でラフェルスを手に入れた。彼はダリオネイムの希望を不当に邪魔しているのだ。ダリオネイムが立つなら、助力を惜しまないと。

 「トルトエン副伯はそれを信じたというわけですか」

 「信じたかった、と表現するとより真実に近くなるかな。それに、貴公の話しぶりだともう一人の登場人物が欠けているようだ」

 「といいますと?」

 「ラフェルス副伯領の領民が助けを求めていると、ラフェルス副伯領から知らせがあった。新たな副伯は無理な要求で領民を苦しめようとしている、と。ドルトフェイムにいる兵力が少ないことも、彼から知らされていた」

 「それは……」

 「それも、あの男の嘘であったのだろうな。私は信じてしまったが。領民を保護するという大義名分とパルセリフィン公らによる宮廷工作があれば、本領復帰がかなう絶好の機会だ、と思ってしまったのだ」

 「あの男?」

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