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居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
ラフェルス副伯領へ

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抱擁

 ドルトフェイム解放の8日後、カーリルン公アルリフィーアがラフェルス副伯領に初めて足を踏み入れた。6頭立ての馬車を仕立てるなどという迂遠なことはしない。自ら馬を駆って乗り込んできた。

 カーリルン公領を出たときには護衛として30騎が従っていたが、宿場町に用意されている変え馬は多くない。最後までアルリフィーアに付いてこられたのは10騎になってしまった。公爵としても女性としても護衛の欠如はあり得べからざる状態であるが、アルリフィーアは諫言を一切聞き入れなかった。「文句があるなら付いてこい」と言って、突き進んだ。

 自身が変え馬を使って全速で進むのだから、先触れを出すいとまもない。結果として、前触れもなく突然ドルトフェイムに現れた。当然ながら、突然乗り込んできた公爵にドルトフェイムは騒然となった。あのラゲルスが驚いて飛び上がった。

 ウィンが寝泊まりしているという市庁舎の一室に案内されると、アルリフィーアは扉をたたくこともせず部屋に押し入った。

 ウィンは寝ていた。すやすや寝ていた。

 少し痩せたか……。

 安らかな寝顔を見たら、無性に腹が立った。腹いせとして、ウィンの両頬に思いっきり平手打ちを入れた。

 「痛っ! 何? 何何何?」

 「この馬鹿者」

 アルリフィーアの突然の出現に、ウィンは硬直した。何が何だか分からない。

 「えっ、リフィ?」

 「この馬鹿者」

 アルリフィーアはウィンを抱き締めて、泣いた。涙が止まらない。この男に何度泣かされたことか。また泣かされてしまった。

 「やあ、心配させちゃったかな」

 「この馬鹿者」


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