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居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
ラフェルス副伯領へ

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暗黒

 6月5日、ウリセファは生まれて初めて帝都の土を踏んだ。父オフギースが生涯を終えた地だ。そこから自分の運命は急変した。まさか、男に体を弄ばれる汚らわしい生き方をすることになろうとは夢にも思っていなかった。

 もはや自分のことなど、どうでもよかった。この汚れ切った心と体でどうなろうというのか。ウリセファは自分自身を蔑んだ。汚い女。汚された女。汚らわしい女。汚れ切った汚物の固まり。吐き気がする。自分は無価値だ。生きるに値しないゴミだ。

 だから死ぬべきだ。さっさとこの世から消えるべきだ。死んだ方がいい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。




 だが、その前にやるべきことがある。

 リルフェットを助け出す。どこにいるか分からない。生きているのかどうかすら分からない。だが必ず探す。あの人が命を懸けて守ろうとしてくれたリルフェットを助けなければならない。そうでなければあの人の死が無駄になってしまう。最後まで気高く生き、そして死んでいったあの人のために。

 そして、全てに復讐する。あの人を殺し、リルフェットを攫った男に。ナルファストをめちゃくちゃにした監察使に。彼らをとことん苦しめて殺してやる。彼らの大切なものを全て奪い、破壊した上で、殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。




 そのためには、力が要る。相手を陥れる力が。相手を苦しめる力が。相手を殺す力が。小娘の細腕では何もできない。だったら、力を持つ男を使えばいい。自分を汚した男を利用してやる。ついでにそいつも破滅させてやる。

 全てに復讐すると誓ったその日から、男を悦ばせる技術を娼館の娼婦たちから学んだ。その技術を使って、男たちのあらゆる要求に応えた。身の毛もよだつようなおぞましいこともやった。だが、そのうち気持ち悪い、汚らしいという感情すらなくなった。汚物が詰まった汚れた革袋に過ぎない自分が、何を厭う必要があるだろう。

 この汚らわしい体が欲しいなら好きに使うがいい。使わせてやる。その代わりに、男の力を利用してやる。

 娼婦たちから学んだ技術を使うと、男たちは異常に悦んだ。そして私の言うことを何でも聞くようになった。だが、田舎者どもにできることなどたかが知れている。はした金を私に貢ぐ程度のことしかできない。こんなゴミのようなカネでは何もできない。ゴミのような男を相手にしていても仕方がない。


 だからこそである。帝都だ。高位の貴族も多い。彼らはカネと権力を持っている。分不相応の力を持っている。それを利用してやる。有効に活用してやる。

 早く来い。私の復讐を実現する力を持つ、汚らわしい男よ、早く来い。悦ばせてやる。そして、利用してやる。そして、破滅させてやる。利用し尽くして、苦しめて、破滅させてやる。この世のあらゆるものを地獄に落としてやる。






 そして、早く死にたい。

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