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居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
ラフェルス副伯領へ

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接近

 翌日、旧ラフェルス副伯家について調べるため、ムトグラフは帝都に出発した。ラフェルス副伯領での業務は、ムトグラフが同僚として帝都から連れてきたソド・バンクレールフ・キャリセインが引き継いだ。ムトグラフが見込んだだけのことはあり、彼も事務処理に長けていた。騎士階級は一定水準の教育を受けていることが多いので、没落して武官としての機能を失った騎士は文官の供給源になっている。バンクレールフもまた、所領を失い軍事奉仕の能力を喪失した没落騎士の一人だった。

 ウィンはというと、ムトグラフやバンクレールフが作成した書類、ティルカールが用意した引き継ぎ用の書類に目を通して署名するという業務に忙殺された。

 特に、ムトグラフが帝都に行く前に作成した書類のおびただしさにウィンは恐怖した。「これ、読むだけで何日もかかるじゃないか!」

 しかし、ウィンは7日後にこの業務から強制的に解放された。


 「どうも気になることがあるのだが」と言いながら、ディランソルがウィンの執務室兼寝室に入ってきた。

 「どこかの兵が近づいている」

 「兵?」

 「2000はいるな、あれは」

 「2000!?」

 ラゲルスやティルカールらと共に城壁に上がって西の方を眺めると、騎兵と歩兵がドルトフェイムに向かってくる。

 「やや! 本当だ。通告はあったかい?」と、ウィンはバンクレールフに確認した。一定以上の兵力を伴って他領を通過する際は、事前に通告するのが通例だ。ウィンが監察使としてナルファスト公国に行った際も、行く先々で領主にいちいち通告してからその領地に入っていた。面倒だが欠かすことができない処置である。

 「いえ、事前通告はありませんでした」

 「ディランソル卿、10騎ほど連れて確認してきてくれ。バンクレールフ卿はワイトに伝えて、城門を閉じる準備を」

 単なる通告のし忘れならば、笑い話で済む。だがあの軍隊が何らかの意図を持っているとしたら厄介なことになる。

 「どう思う? ラゲルス」

 「ありゃ……ただの行軍じゃないように見えますな」

 「ドルトフェイムにいる兵力は?」

 「帝都から連れてきた騎兵50に歩兵200。代官殿の歩兵200もドルトフェイム守備の任務は解かれてねぇはずです」

 「合わせて450か。野戦は無理だな」

 「包囲されて一瞬で全滅でしょうなぁ」

 ウィンとラゲルスはわははと笑った。


 そうこうしているうちに、ディランソルらが謎の兵団に接近した。すると、相手はディランソルらに矢を射かけてきた。ディランソルらは慌てて回避し、こちらに戻ってくる。

 「ありゃりゃ、これは決まりだね。ディランソル卿を収容しだい、城門を閉じて。籠城の準備だ!」

 ウィンは、やれやれとつぶやきながら空を仰いだ。

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