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居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
ラフェルス副伯領へ

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不安

 ウィンは護衛として騎士のソド・ディランソル・ウイスンのみを連れてフロンリオンに向かった。到着したのは10日なので、予想通り4日の距離だった。


 アルリフィーアとは約1カ月振りの再会だった。ウィンは言葉が見つからず、「久しぶり」と芸のないことを言った。それでもアルリフィーアは嬉しそうに笑った。

 ベルロントとレンテレテスは、縁組辞退のためにダルンボック伯のところに行っているという。出発前、ベルロントは明らかに憔悴していた。カーンロンド家を相手に「縁談を拒否する」と丁重に説明する役目など、考えただけで食欲も失せる。ただし、この件を片付けなければアルリフィーアとウィンの婚約を公表することはできない。

 ウィンとアルリフィーアの婚姻契約の条項もおおむね固まった。各領地の統治は、ウィンとアルリフィーアが存命の間は個別の統治機構によって運用される。2人に子ができた場合、長子が両領地を相続する。統治機構は温存するが、将来的には統合することも検討する。継承者の幼少時にウィンとアルリフィーアのどちらかが死亡した場合、残った者が後見および摂政として両領地を統治する、などなど。単純化して列挙すると大したことはないが、それぞれ例外や違約した場合などについてもこまごまと定めるため、最終的には本が1冊できるくらいの文字と紙を費やすことになる。

 婚礼の式は半年後の10月1日と決まった。「もっと早くてもいいのではないか」と男たちは口をそろえて反対したが、デシャネルが「姫様の衣装を仕立てるのには半年かかる」と強硬に主張して押し切った。デシャネルは、アルリフィーアの婚礼を最後の仕事と思い定めているのだ。


 お互い雑務に追われて、ゆっくり会話ができたのは夕食時になってからだった。

 「ラフェルス副伯領はどうであった?」

 「いいところだよ。まだ市の要人としか会ってないけどうまくやっていけそうだ」

 「それはよい。ワシも行ってみたいものじゃ」

 「落ち着いたら招待するよ」

 「前の副伯はどのような御仁だったのじゃ?」

 「詳しくは知らないが、不祥事を起こしたらしい。いや、しなかったと言うべきか」

 アルリフィーアの表情が少し曇った。

 「その件じゃが、もう少し調べた方がよいのではないか?」

 「7年も前の話だよ?」

 「ウィンにとってはな。じゃが当事者にとってはそうではないかもしれぬ」

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