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居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
ラフェルス副伯領へ

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ラフェルス副伯領

 ウィン、ムトグラフ、ラゲルスらがラフェルス副伯領に入ったのは4月。ドルトフェイムには5日に到着した。

 ドルトフェイムで、帝国代官のソド・ティルカール・ウーゼリムがウィン一行を待っていた。

 「お待ちしておりました、ラフェルス副伯」

 「ティルカール卿、久しぶりだね」

 ティルカールとは、帝都で何度か顔を合わせたことがある。ある帝国代官の調査に際して同僚のティルカールに協力してもらったのだ。「誠実な男だ」という印象を受けた。当時もラフェルスの代官だったはずだが、それについては知らなかった。単に、聞いたのに忘れただけかもしれない。


 帝国代官は、帝国の各所にある帝国直轄領を統治するために派遣されている下級官僚である。能力的にも人格的にも優れた者が選ばれ、原則として5年の任期を担当の直轄領で過ごす。領民から悪政の訴えがあると即解任されるため、代官による帝国直轄領の統治はおおむね評判が良い。私財を投じて任地の発展に尽くす代官も多く、任期満了に伴う離任時には領民が大挙して集まって涙ながらに別れを惜しむことも珍しくない。ウィンも監察使として各地の代官を形式的に監査したことがあるが、悪い評判を聞いたことはなかった。

 ただし例外というものはあるようで、領民に重税を課して私腹を肥やした悪代官も皆無ではないらしい。そうした者の多くは解任され、特に悪質な場合は斬首に処される。

 ティルカールは良心的かつ有能な代官だった。彼が治めていたのであればラフェルス副伯領は安定しているだろう。

 ドルトフェイムの市庁舎に案内され、市長のワイト・ベルを紹介された。少し太り気味の小男だった。禿頭で灰色の口髭を蓄えている。

 「基本的にティルカール卿の統治を引き継ぐ予定だ。ドルトフェイムの市民やラフェルス副伯領の領民が不安に感じる必要はないよ」

 「副伯から直接それを伺って安心しました。副伯に忠誠を誓いましょう」

 ウィンがやるべきことは領民との円満な関係の構築だ。実務的な話はムトグラフが担当する。

 「ざっと見たところ、市内は活気もある。特別問題はなさそうだね」

 「恐縮です」


 統治権限の委譲については平穏かつ穏便に行われたが、領地の末端までそれを周知するのは難しい。統治体制が変わることに不安を持つ領民も当然おり、これが政情不安の引き金になることもある。代官所属の兵とラゲルスが率いている兵が、当面の間は共同で治安維持に当たることになる。

 ここでのウィンの仕事は終わった。次の仕事はフロンリオンだ。

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