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居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
ラフェルス副伯領へ

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始動 その1

 フロンリオンに、ウィンの叙位証書が到着した。このとき初めて、ウィンは領地がラフェルスであることを知った。

 「ラフェルス副伯か。なかなかいい響きではないか」と、レンテレテスは爽やかに笑った。

 それはいいが、ラフェルスとはどこなのか。

 「確か、カーリルン公領から見て北西の辺りではなかったかな」とゾルトアエルが言った。何年か前に不祥事を起こして取り潰された副伯領だという。地図で確認すると、フロンリオンとも街道で直接つながっており、オールデン川からも近いから4日程度でカーリルン公領と行き来できる。

 「なかなか良い立地ではないか」とベルロントも感心した。カーリルン公との縁組に配慮した封土だと思ったようだ。


 証書を持ってきた使者は、陛下へのお礼言上と領地の統治体制の構築を急ぐように、と言って帝都に戻っていった。

 こうして、やるべき仕事が急増した。叙位証書の到着によってウィンの身分が法的に保証されたのを受けて、カーリルン公との縁組にまつわるさまざまな契約事項の確定と調印を行い、ラフェルスに行って帝国代官から統治を引き継ぎ、ウィンの家臣による統治体制を構築しなければならない。ラフェルスの各種収益を調べて徴税の仕組みを整え、軍役に対応できる騎士や領主を配置する。考えるだけで頭がくらくらする。逃げ出したい。

 「何代にもわたって構築された領地を継承するのとは訳が違うからな。実に大変そうだ」と、レンテレテスはにやにやしながら言った。同情しつつ、面白がっている。

 縁組・婚姻に関してウィンには特に要求はないので、契約条項については基本的にベルロントらに任せた。彼らにたたき台を作ってもらった上で、細部だけ調整すればいい。となると、まずウィンが着手すべきは領地経営ということになる。帝都に戻って皇帝に拝謁し、ラフェルスに乗り込むことにした。アルリフィーアがまだ巡察から戻っておらず、会えないのは残念だが。


 帝都に戻ると、まずは宮殿の外廷に行ってお礼言上のための拝謁の日程調整を行った。2日後の「3月23日であれば可能」だという。公式な拝謁ともなれば10日は待たされるのが通例なので、かなり異例だ。

 領地経営については、一つ腹案があった。外廷に来たついでに、コーンウェの詰め所に向かった。

 「やあムトグラフ卿、久しぶり」

 「これは、セレイス卿! いや、ラフェルス副伯とお呼びすべきですね」

 「もう知ってるのか」

 「ヘルル貴族への授爵ですからね。異例です。みんな知ってますよ」

 「でね、ムトグラフ卿にラフェルス副伯領の家宰になってほしいんだが」

 「私が!? ラフェルス副伯の家臣にってことですか?」

 ウィンはひどく嫌そうな顔をした。

 「家臣とか、そういうのは好きじゃないんだけど、形としてはそうなる。十分じゃないかもしれないけど領地もあげる」

 ムトグラフは指で自分の額をコツコツたたきながら顔をしかめた。

 「少し考えさせてください。急なことで、頭が回らない」

 「もちろんだ。奥方やコーンウェ宮内伯とも相談したらいい」

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