想い
そのころ、アルリフィーアは私室でエメレネアと茶を飲んでいた。
討議室から執務室に戻ったアルリフィーアは、自席でしばらくぼんやりした後、私室に下がった。その間、何かと理由を付けてエメレネアをそばに置き続けた。どうやら1人になりたくないらしい。
「こうしていてよろしいのですか? セレイス卿のところに真っ先に報告に行かれると思っておりましたが」
「う~ん、それがのう。なんだか恥ずかしゅうてな。ウィンの顔を見る自信がない」
そう言って、アルリフィーアは眉尻を下げて唇を尖らせた。どういう意味の表情なのかはさっぱり分からない。分からないが、そのヘンテコな表情で会うのはやめた方がいい、とエメレネアは思った。
アルリフィーアの頬がぽっと赤くなった。目をぎゅっと閉じて、右手で自分の額をぺちぺちとたたいている。どうやら、ウィンに会ったときの状況を想像して勝手に照れているらしい。
アルリフィーアは急に目を見開くと、天井を眺めながらつぶやいた。
「ウィンと、本当に結婚できるんじゃなぁ」
アルリフィーアの目が希望に輝いているのを見て、エメレネアは少し羨ましいと思った。
そんなふうに想える相手がいるというのはどんな気分だろうか。




