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居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
カーリルン公領へ

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領地決定

 「ラフェルス?」

 「御意」

 皇帝宮殿外廷にある皇帝の執務室にしつらえられた机の前に、タッカツァーカが直立している。皇帝は、タッカツァーカに提示された地名に引っ掛かるものを感じてしばし考え込んだ。椅子の背もたれに体重を乗せて、肘掛けに手を置いて目をつむる。

 「聞き覚えがあるな。どんなところだ」

 「複数の諸侯領に通じる街道を領内に擁する交通の要衝です。耕作地は多いとは言えませんが商業的な発展が望めます」

 「それだけか?」

 「と言いますと?」

 「他に何かあったような気がしてな」

 「5年ほど前に帝国代官が殺害される事件がありましたが、下手人は既に斬首されて解決しております」

 「なるほどそれか……」

 旧ラフェルス副伯家は7年前に転封され、ラフェルス副伯領は帝国直轄領として管理されている。その管理を担っているのが帝国代官である。

 「そのようなことまで覚えておいでとは、感服致しました」

 「世辞はいい」と言って、皇帝は右手を煩わしそうに振った。皇帝は、宮内伯ごときの見え透いた追従で喜ぶような男ではない。

 「よかろう。これをフロンリオンに届けてやるがいい」

 皇帝は叙位証書に署名して玉璽を押した。これで、ウィンはラフェルス副伯になることが法的に確定した。

 諸侯の場合は皇帝宮殿で叙位式が行われる。レーネットもアルリフィーアも公位継承に際して帝都に上り、皇帝による叙位を受けている。ただし副伯や士爵は証書の交付で済ませ、叙位を受けた者が後日にお礼言上の拝謁をする、という略式を取ることが多い。


 タッカツァーカは皇帝から叙位証書を受け取ると、しずしずと退室した。笑いが漏れそうになるのをこらえるのに苦労した。

 自分の詰め所に戻れば思う存分笑うことができる。それまでの辛抱だ。

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