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居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
カーリルン公領へ

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33/76

提言

 アルリフィーアは、執務室の机の上で両腕を組み、その上に顎を載せて壁を睨んでいた。何もやる気が起きない。今日中に決裁すべき書類は片付けたのだから、君主としての役目は果たした。怠けているわけではない。心の中で無意味な言い訳をしながら、壁を睨んでいた。


 部屋の片隅に、エメレネアがまだ控えていることに気付いた。

 「エメレネア、下がって休んでおれ。ワシもほれこの通り、休んでいるゆえ」

 エメレネアは、アルリフィーアを1人にする気になれなかった。

 「ではお茶をお持ち致しましょうか」

 「ああ、それはよいな。ではエメレネア、一緒に飲もう。ワシの相手を致せ」

 「御意」

 執務机から離れて、くつろぐための深い椅子に移動する。エメレネアには向かいの席に座るように勧めた。使用人が使うなど許されない椅子なのだが、アルリフィーアはそうしたことに頓着しない。ただ、デシャネルには彼女なりの哲学があるらしく、アルリフィーアがいくら勧めてもその椅子に座ることはなかった。

 「会議が気になりますか? 公爵」

 「いや、全然」

 アルリフィーアはここ数カ月で君主として大きく成長した。相変わらず表情が豊かだが、必要な場面では必要な表情を保つこともできるようになった。だが、今はそれに失敗している。本人は「平静である」という表情を作っているつもりのようなのだが。

 エメレネアは、アルリフィーアに気付かれないようにため息をついた。どうも、この高貴な女性を見ていると「お役目」を越えた差し出口を挟みたくなる。そのうち、自分は処断されるかもしれない。それでも……。


 「公爵、他家から縁組を申し込まれたら、是非をどうやって決めるものなのですか?」

 「縁組は政治じゃ。当家にとって有利か否か、さまざまな観点から重臣が議論する」

 「では重臣が決めるのですか?」

 「重臣にできるのは、好ましい縁組か否かを提言することじゃな」

 「提言するだけ、ということはその通りにしないこともあるということですね」

 「重臣の力が強ければ、それに従わざるを得ないということもあるじゃろうが」

 「では重臣たちの提言を受けて決定を下すのは?」

 「それは……」

 アルリフィーアはエメレネアを見た。エメレネアは彼女の視線を受けて、にっこりと笑った。エメレネアが何を言いたいのか分かった。

 アルリフィーアはエメレネアにほほ笑み返すと、立ち上がった。

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