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居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
カーリルン公領へ

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重臣会議再び

 討議室に、再びニレロティス、レンテレテス、ポロウェスらの武官と有力領主のゾルトアエル、レオテミルらが招集された。招集したのは今回も宿老のベルロントだった。議題は、爵位を得るという信じ難い離れ業をやってのけてカーリルン公の縁組の候補者に名乗りを上げたウィンについてである。

 事前に知っていたベルロントとニレロティスを除く出席者は、ベルロントの説明を聞いてあんぐりと口を開けたまま固まっている。

 「爵位というものは帝都に行けばもらえるものなのか?」

 レオテミルがアルリフィーアと同じ疑問を口にした。少なくとも、カーリルン公の家臣、つまり皇帝にとっての陪臣が爵位を得る可能性はほぼない。皆無というほどではないが、まずもらえない。帝国爵位とはそういうものなのだ。

 「最終判断は叙位証書を見てからだが、すぐにばれるような嘘をはくほどセレイス卿は姑息でもあるまい」とベルロントは応じた。証書を待つまでもなく、帝都に問い合わせれば済むことだ。一時的にベルロントらを騙したところで得るものはない。

 「よって、セレイス卿が副伯を与えられたという前提で話を進めたい」

 「貴賤結婚ではなくなるとはいえ……副伯との縁組で我らが得るものはあるまい」とゾルトアエルが否定的な意見を述べた。

 「領地の場所によっては利が生じるやもしれんが、まだ領地も定まっていないのではな」とレオテミルも同調する。

 「カーンロンド家に取り込まれるという懸念はどうするのです?」

 「だがカーンロンド家を蹴れば、オールデン川の通行税を上げられるなどの報復を受けるやもしれぬ」

 「ワルヴァソン公に睨まれるのは得策ではない」

 「ではワルヴァソン公の言いなりになるということか?」と言って、ニレロティスは重臣たちを見回した。

 「ワルヴァソン公に目を付けられた時点で詰みだったのだ」

 「そもそも公爵の縁組が遅過ぎたのだ。普通なら12、3歳くらいで相手を決めておくものではないか。もっと早く、ステルヴルア家に都合の良い相手を見つけておくべきだったのだ」

 カーリルン公領統一戦争後に重臣に列したゾルトアエルやレオテミルらからすれば、今まで何をやっていたのかという思いが強い。

 「いまさら過去を云々して何が生まれるのか! 駄言を弄していないで建設的な意見を出すべきであろう」

 「無礼な。やるべきことをやっていなかった者の責任をまず問うべきであろう」


 アルリフィーアの意向もあって、重臣には武断派、穏健派、武官、文官、譜代、外様など、さまざまな思惑や出自を持つ者たちを登用した。ウィンという新参者が加わったことで硬直した方針を壊し、カーリルン公領の統一が成ったことを踏まえたものだった。これが奏功したこともあるが、不毛な対立に発展することもある。

 ベルロントは議論の方向性を定めるに当たり、初心に戻ることにした。先代ラエウロント3世であればどうしたのか。


 「あ……」


 重要な要素が欠落していた。他家との縁組を決定する権限を持つ人物がこの場にはいなかったのだ。

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