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居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
カーリルン公領へ

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タッカツァーカ

 侍従長のマーティダから「セレイス卿に与える副伯領を選定するように」と通達された宮内伯のヴァル・タッカツァーカ・カンスエラは、持っていた茶碗を床にたたきつけた。屈辱感が体中を駆け巡る。怒りで体が震える。

 あの小ざかしい監察使が副伯? ヘルル貴族の分際で帝国爵位を与えられる? 宮内伯の上に立つというのか?

 本来ならお目見えできる身分ではない下級貴族の分際で、皇帝に直接会って報告する権限を与えられている監察使。これだけでも十分目障りだが、しょせんは領地も持たない下級貴族。自分よりも下等な存在であるということで溜飲を下げ、許容してきた。そのウィンが宮内伯よりも上の存在になるなど我慢ならなかった。

 タッカツァーカが取り乱す様子を、家臣のソド・レルトリエバ・ピエテスは冷ややかに眺めていた。そのうち頭に上った血が下がるだろう、と。

 「なぜ私がセレイスごときの領地を探してやらねばならぬのだ」

 「タッカツァーカ宮内伯は紋章院の次官であらせられます。領地を選定して陛下に奏上するのもお役目の一つ。実務級の宮内伯に適当にお命じなさればよろしいかと」

 「そんなことは分かっておる。ただ不快なだけだ」

 タッカツァーカは執務机の上にあるものを腹いせに払い落とした。これ以上放っておくと後片付けがどんどん面倒になる。レルトリエバはため息をついた。

 「領地の選定をお任せいただいたのですから、タッカツァーカ宮内伯が自由に決められるではありませんか」

 「それがどうした」

 「空いている副伯領にもいろいろございます。良い地もあれば、そうでない地も……」

 「なるほど、セレイスにふさわしい地を選んでやればよいということか」

 タッカツァーカは分厚い唇をゆがめてほくそ笑んだ。そんなタッカツァーカの背中を、レルトリエバは汚物を見るような目で眺めていた。

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