表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
カーリルン公領へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/76

決断 その1

 謁見の間から客室に連行もとい案内されたウィンは、3カ月前まで使っていた部屋に居た。が、懐かしがっている場合ではない。

 扉を開けて廊下をのぞくと、扉の横に衛兵が立っていた。ウィンが扉を開けたことに気付いて、横目でウィンの動きを見ている。

 「……いや、逃げないから」

 扉を閉めた。

 しばらくしてもう一度廊下をのぞくと、衛兵はまだ立っていた。横目でウィンの動きを見ている。

 「逃げないってば」

 アルリフィーアが怒る気持ちは分かるのだが、ウィンにはどうすることもできないのだ。ならばせめてアルリフィーアの目の前から早急に立ち去るべきである。こうしてフロンリオンにとどめ置かれても、互いに得るものはない。


 「本当にどうすることもできないとお思いですか、ウィン様」

 アデンがまたウィンの痛い所を衝いてくる。

 「できないだろ?」

 「本当に?」

 「何が言いたいのさ」

 「あのお方を頼ったら、どうにかできるのでは?」

 「そんなことは……できない」

 「ウィン様、あなたは逃げているだけだ」

 「……」

 「あのお方は何もしてくれないかもしれません。でも、可能性を試しもしないで全てを諦めるのですか?」

 「……」

 「それではアルリフィーア様がおかわいそうです」

 「リフィが……」

 「あらゆる可能性を試して、それでもだめだったのであれば仕方ないと言えるでしょう。でもウィン様は最善を尽くしていない。いつもそうだ。ナルファストのときのように」

 「……」

 「アルリフィーア様よりもあの方へのわだかまりの方が重要ですか?」

 「比べるようなことじゃ……」

 「要は覚悟の問題です。優先順位を付けて、優先すべきものに全力で向き合ったかどうか。先ほどのアルリフィーア様のお顔を見なかったのですか? あんな顔をさせて平気なのですか?」

 もちろん見た。泣いていた。涙は出ていなかったが、泣いていた。もちろん、平気なわけがない。あの木漏れ日のような笑顔でいてほしかった。二度と会うことはないと覚悟して帝都に戻った後も、笑っていてほしいと願った。

 「分かったよ。私が間違っていた」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ