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居眠り卿と純白の花嫁  作者: 中里勇史
ナルファスト公国へ

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交差

 帰路に就いたウィン一行は、ストルン街道を北上してナルファスト公国内最後の宿場町で一泊すると、翌日も朝から馬に揺られた。ウィンは相変わらず寒さに震えている。


 デウデリアという宿場町を通り抜けようとしたとき、見覚えのある女性と出くわした。

 「おや、アディージャじゃないか」

 「ウィン!? アレス副伯(フォロブロン)にベルウェンまで?」

 お互い、こんなところで知り合いに会うとは思いも寄らなかった。

 「こんなとこで何してんだい」

 「ナルファスト公(レーネット)の婚礼に呼ばれてね。寒いのに」

 「ウィン様、いちいち寒いを連呼するのはやめましょう」

 「アディージャはどうしてたんだい?」


 2年前、帝都からナルファストまで共に旅をしたが、アルテヴァーク戦争が始まった際に別れた切りだった。アディージャはその後、安全なナルファスト北部で商売をしながらデウデリアに流れてきて、一時的にここの娼館をねぐらにしていることを語った。

 「しばらくここに居るつもりだったんだけどね、所用ができて帝都に行くところさ」

 「帝都に? そりゃまた何で」

 「娼館に気になる娼婦がいるんだよ。その娘を帝都に連れてってやろうと思ってね」

 「相変わらずだなぁ。一緒に行くかい?」

 ストルン街道の治安は良い方だが、やはり女の一人旅は危険だ。

 「ありがたい話なんだけどね……。まあ、街外れから乗合馬車が出てるからね。それに乗ってのんびり行くつもりさ」


 帝都に、早く安全に移動するならウィンの提案に乗った方がいいことは分かっている。だが、自分でも表現し難い想いがモヤモヤして、ウィンと共に旅をすることにアディージャは抵抗を覚えた。多分、自分はウィンにこれ以上近づくべきではない。近づけば、これまで経験したことのない、この胸の奥がムズムズする感情が大きくなって苦しむことになる。この変な感情が小さいうちに断ち切るべきだと本能が告げていた。

 「ストルン街道を行くんなら、俺の名前を出せば便宜を図ってくれるやつが宿場町にいる。困ったときは俺の名前を使え」

 「助かるよ、ベルウェン。じゃ、みんなも達者で」


 こうして、ウィン一行とアディージャは別れた。ウィンは、レーネットがウリセファと再会できることを祈りながら。アディージャは、ウリセファが帝都で目的を果たすことを願いながら。


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