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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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89.クラス対抗リレーと精霊除けのお札とカンガルー

 午後の競技が次々と進み、興奮と熱気に包まれる体育祭。俺は最後の競技「クラス対抗リレー」へ気持ちを高めていた。


「これで今年の体育祭も締めくくりかぁ……」

「そうだね、美玲ちゃん。最後の締めだから、がんばろう!」


 横で水を飲んでいる結月が笑顔で声をかけてくる。


「うん……まぁ、ここまで色々あったし……クマに乗せられたり、馬と綱引きしたりとか……最後ぐらいは普通に走りたいんだけど……」

「ははは、希望を捨てちゃだめだよ!」


 笑う結月を見ると不安が募るが、もう祈るしかない。


(頼むからまともに走らせてくれ……)


 クラス対抗リレーの準備が行われている最中、周囲にチラホラと怪しげなお札を貼って回る生徒が目に入る。同じ3年のオカルト研究部のメンバーだった。

 制服の上に怪しげなマントを羽織り、額に三日月模様をペイントしたりしている。


(体育祭の日に何してんだ……)


 聞き耳を立てると、彼らは俺のことをつぶやいている。


「美玲さんは魔法を使って動物を呼び寄せているのかもしれない……」

「よし、この結界札を貼れば動物を寄せつけないはず……」

 などと本気で話しているようだ。


「なんだそれ……」

 ふいに隣から結月がクスクス笑っていた。


「あはは、ついにオカルト研究部まで動きだしたんだね!」


(いや、むしろすでに散々騒ぎになってるし、今更お札とか貼っても…… それに魔女じゃない!!)


 オカルト研究部員たちはリレーのトラックや、スタート&ゴールラインの杭などに「精霊除け」とか書かれた紙をベタベタ貼り付けている。


「はぁ……こんなの効果あるのかな?」

 思わず呟くと、部員の一人が反論してくる。

「こうすることで魔女の術が弱まるんだ」

 謎の理論を展開し、俺に鋭い視線を向ける。怖い……


「まぁまあ……気にしないで走ればいいんじゃない?」

 結月が肩をすくめる。俺は苦い顔しつつ、リレー準備に入った。


 さあ、3年生クラス対抗リレーが始まり、各クラスでバトンをつなぐ。うちのクラスは結月が1走、他のクラスメイトを挟んで、俺が5走目という流れになっている。

 最初の数走は特に事件もなく普通に進み、結月も全力で走ってバトンを繋ぎ、順調に順位をキープしている。


(おお、今回は平和じゃん! いい感じ)


 やがて、4走からバトンを受け取るタイミングが来て、気合を入れて構える。


「がんばれ、美玲ちゃん!」

 クラスメイトが熱い声援を送る。バトンを受け取ると同時にスタートダッシュ――その瞬間、パアンッ! という不思議な破裂音があちこちから響いた。


「え、何!?」

 見ると、グラウンド周囲に貼られていたオカルト研究部のお札がパチパチとはじけ飛んで、紙吹雪になっているではないか。まるで炎で焼かれたように四散。

「ぎゃあ、結界が破れた!?」と遠くでオカルト部員が絶叫する。


 いったい何が起こったのか分からないが、とりあえず俺は走らないとリレーにならない。


(今は競技に集中……)


 が、案の定、また動物たちが出てきた…… どこからともなく犬や猫やサル、鹿、馬、さらにはリスなどの動物がゾロゾロとトラックに侵入して、俺の横を走り並走し始める!


「ちょ、邪魔しないで! 危ないし……」

 観客たちは「うわっ、また動物!?」「こっち走ってきたぞ!」などと悲鳴と笑いが混じった声を上げる。だが、意外にも動物たちはこれまでと違い、俺に触れたり妨害したりせず、ただ並走しているだけだ。


(何なの!?)


 俺は全力疾走。動物たちがガチャガチャ騒ぎながらも、追随してくる形。……でも、あまり邪魔してない?


 バトンを無事に6走のクラスメイトへ渡したところで、動物たちがふっと踵を返し、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。馬や鹿も裏山へ消え、犬や猫も校外へさっと出ていく。


「え、あれ……ちょ、結界はじけたのに、何も起こさず消えた?」

 オカルト研究部員たちは唖然として混乱している。


「うわあ……結局特に妨害もなかったし……なんだろうね……」

 結月が首をかしげ、「むしろ優しかったじゃん、並走してくれただけだし」と笑う。


(お札を貼った結果がコレか……ほんと意味なかったな……。ていうか、何しに来たんだろう……)


 最終的にリレーは白熱し、俺のクラスは2位でゴール。惜しくも優勝には届かなかったけど、みんな拍手し合い、「今年はいい勝負だったね!」と喜び合う。


――――


 先生がマイクで「さあ、皆さん、間もなく閉会式ですよー」と呼びかける。


 そうして整列し、表彰式兼閉会式が始まったが。

「本日は校長が都合により不在ですので、挨拶は省略します」

 先生が淡々とアナウンスする。


(またか……去年も校長が行方不明になったりしたな……)


 そのまま閉会式があっさり終わり、解散。後日談として聞いたところ、校長は昼休みに塩分を取りすぎたらしい。こっそり保健室でダウンしていたが回復せず、救急車で病院へ搬送されたとか。昼の塩キャンペーン被害者か……


 競技がすべて終了し、生徒や先生がグラウンドを片付けたり、テントを解体したりする時間になる。俺もクラスメイトと一緒にラインテープを剥がしたり、道具を運んだりしていた。

 ふと脇を見ると、視界の隅でカンガルーがまたシャドーボクシングをしている姿が……。


(こいつは前にもいたな……まさかまたいるとは……)


「あれ? まだ練習してるの……?」

 少し疑問に思い近づくと、カンガルーはシュッシュとボクシングポーズを続けているが、もはや周りに観客はいないし、大会も終わってる。


「……体育祭、もう終わったけど……」

 俺が声をかけると、カンガルーは動きを止めて「えっ!?」という驚き顔をする。

 どうやら本番に出ようと構えてたのかもしれないが、何の出番もなく体育祭が終了した事実を知らなかったのだろうか。カンガルーはガクッとうなだれるように肩を落とし(?)、呆然と立ち尽くす。


「そ、そっか……ごめんね。もう終わっちゃったんだよ、競技……」

 俺も謝るように声をかけるが、カンガルーは意気消沈してとぼとぼと校門方向へ歩き出す。


(なんか可哀想……)


 まるで夢破れたアスリートみたいな後ろ姿に、俺は思わず同情を覚える。確かに大した出番もなかったもんな……


「がんばってたのにね……シャドーボクシングして練習してたのに……」

 なぜか結月が横にいて、しみじみ言う。


 クラスメイトと話しながら最後の撤収を進める。テントを畳み、椅子を教室へ運び、ゴミを集め……長い一日だった。


「今年はクマや馬もでたし、塩分騒動で10人が運ばれ、校長もいなくなるし……」

「本当に何でもありな体育祭だったね……」

 結月が笑う。


 3年生の俺にとって、これが最後の体育祭。「もう来年は無いんだ……」と少し切ないが、今の状態であと一年あったら身体がもたないかもしれない……。


「はあ、もう終わったか……クマに乗せられたり、塩中毒とか、クラス対抗リレーで動物並走したり……色々あったけど……いい思い出……?」

 誰に聞かせるでもなく独り言をつぶやいて、ロープをまとめた後、最後のゴミ袋を持って移動する。


 こうして、俺の高校最後の体育祭は、動物まみれの大混乱ながら一応幕を下ろすことになった。

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