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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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87.塩分補給は大事

「はあ……午前中だけで、もうこんなに疲れるなんて……」


 グラウンド脇に設置された休憩所のベンチで深いため息をつきながら座った。先ほどの騎馬戦で、まさかのクマが乱入し、強制的に俺が優勝扱いという前代未聞の展開……。まだ心が落ち着かない。


「もうクマに乗るとかないよね……」

「でも、無事で良かったよ?」

 クラスの女子が声をかけてくれる。確かに怪我をしなかったのは幸いだけど……


 昼食休憩の時間になり、クラスメイトや他学年たちも思い思いの場所でお弁当を広げ始める。


「美玲ちゃん、お疲れ様! 一緒に食べよ!」

 結月も笑顔で呼んでくれたため、彼女の横に腰を下ろす。

「はぁ、騎馬戦は散々だったよ……」

「大丈夫! お弁当食べれば元気になるって! 私もがんばって手作りしてきたんだー」

 結月はフタを開けたタコさんウインナーや卵焼きを見せてくる。わりと美味しそう……


「ねえ聞いてよ、美玲ちゃん。何か、保健委員たちが塩分補給キャンペーンを始めるみたいよ?」

「え、塩分? 確かに暑いから熱中症対策が必要かな……?」


 体育祭は春先とはいえ、晴天になると意外に暑いし、動き回って汗をかく人も多い。保健委員が企画したらしい「塩分補給キャンペーン」は、塩タブレットを無料配布したり、弁当に少し塩を足す「塩おかわりサービス」などを行っているようだ。よく見ると、そこかしこに保健委員が黄色い腕章をつけて立っていて、声をかけている。


「なるほど、なかなか気が利いてるね。熱中症予防は大事だし」

「そうそう。ほら、タブレットもらおうよ!」


 結月が早速保健委員のところへ行き、俺もついて行く。


「こんにちは! 塩分補給しませんか?」

 保健委員が声を掛けてくれ、小袋に入った塩タブレットを渡してくれた。さらに「塩を少量混ぜたドリンクもあるよ!」と紹介してくれる。


(しっかり用意してるな……)


 さらに保健委員は言う。

「もしよかったらお弁当に塩を少し足すサービスもやってます! 特製ブレンド塩です!」

 ブレンド塩? なんだそれ……


「ちょっと試してみよ♪」

 結月はウインナーにパラパラ振ってみる。俺も冷やしトマトにパラっとかけてみた。

「ん? 何これ……凄く旨い……」

「うん、私の卵焼きがさらに美味しくなった感じ……なにが入ってるんだろう?」


 ほんのひとつまみの塩なのに、絶妙な旨味が広がる。聞けば最高級海塩に複数のハーブやスパイスを微量配合しているという。実際食べてみると中毒性があるくらい美味い。


「すごいや……塩だけでここまで……!」

「保健委員、やるじゃん!」


 そう感動していたのだが、これが大騒動の始まりになるとは、その時は誰も思っていなかった。


 まもなく、あちこちの生徒がこのブレンド塩の美味しさに気づき、「塩ちょうだい」「もっと多めに!」と保健委員ブースに殺到する現象が起きる。

 保健委員が「順番にどうぞ!」と呼びかけるも、みんな「これ好きだわ!」「追加でかけたい!」「塩タブレットもう一つ!」と殺気立っていて、長蛇の列が形成される。


「なんか……異常に盛り上がってない?」

 結月が笑いながら眺める。次々に「まだ足りん!」と山積みの塩タブレットや塩袋を抱えているのを見ると恐怖すら感じる。


 さらに、一部の生徒が塩の魔力に取り憑かれたように興奮し始め、隣の友達の弁当にも勝手に「もっと美味くしてやるよ!」と言って塩を振りかけまくるという行動に出る。


「ああっ、オマエ勝手に塩振るな!」

「でもこれマジやばい旨さだろ? 食ってみて!」


 結果、一部の弁当が塩分過多で食べづらい状態になり、喧嘩寸前の場面も出る。「うわ、塩まみれ……」「やりすぎだろ!」と騒然。


(ああ、やっぱり何事もやりすぎは良くないんだよ……)


「美玲ちゃん、私たちは被害に遭わないようにしようね……」

 結月が苦笑い。ところが数秒後、俺が大事にとっておいたデザートのプリンが、目を離した隙に大量の塩をぶちまけられてしまう。


「ぎゃあああ! 私のプリンが……! しょっぱすぎて食べられない……」

「ひゃはは、塩好きには最高だぜ!」

 ニヤつく謎の生徒。プリンを勝手に魔改造するな!

 しかし、見ると相手はすでに塩中毒の顔で頬が紅潮している。「もっと塩を!」とか言い出してヤバい雰囲気。


(何だこれ……怖い)


 やがて、一部の塩大好き生徒が「もっと塩を、もっとだああ!」と飽くなき欲望を剥き出しにし始め、弁当の白飯が完全に真っ白(塩だらけ)になるほど振りかける人まで現れる。


(いや塩にそこまでの魅力があるの?)


 数十分後、そうした人々の中で、「うっぷ……なんか気持ち悪い……」「頭痛い……」と顔面蒼白になる者が多数出てきた。

「ひい、ヤバい、塩分取りすぎでしょ……これ……」

 既に10人くらいが地面に倒れたり吐いたりしている。先生たちも慌てて保健室に運ぶが、とても捌ききれないので救急車を要請する事態に。


(え、そんな大事に…?)


「ウソでしょ……塩で救急搬送……」

 俺は混乱しながらも、結月が「やっぱり何事もほどほどにしないとね」と呑気に言うので、苦笑しかできない。


 結局、体育教師や保健室の先生だけでは対処しきれず、救急車が到着。10名程度が急性塩中毒というか過剰摂取で搬送されていく。周囲の生徒は「あんなに食べたら危ないわ……」「そりゃ当たり前だろ……」とドン引き。


 保健委員も「すみません、私たちはあくまで適量の補給を推奨してただけなんです……」と涙目。顧問の先生も「なんでこうなるんだ……」と頭を抱えている。


「はあ……『何事も過ぎたるは及ばざるがごとし』だなぁ……」

 俺は自分のしょっぱプリンを見つつ、しみじみそう思う。


(せっかくのキャンペーンが大騒ぎになっちゃったね……)


 こうして、昼休み中に勃発した塩分補給騒動は10人の入院という衝撃的な結末を迎えた。教頭はスピーカーで「塩分は大事ですが、取りすぎ注意……!」と再三呼びかけ、応急対応に追われている。


 自分のプリンが台無しになったショックより、まさかの決着に目を丸くする出来事だった。

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