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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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84.3年生の体育祭

「それでは、今年の体育祭は来月の半ばに実施する。3年生は最後だし、思い切り盛り上がろう!」


 朝のHRで、担任の小早川先生が活気に満ちた声で言った瞬間、教室内が「おおー!」とどよめく。俺も唇をかみしめながら思う。


(やはり来たか……体育祭)


 去年ははげおじさんたちに追いかけられて大騒ぎになったし、また何か起こるかもしれない。


「3年生だし、今年こそまともにやりたいな……」

「無理無理、また変なトラブル絶対起きるでしょ?」

 結月が肩をすくめて、にやり。


「おまえらしっかり準備するんだぞ。3年生は競技にもリーダー役にも積極的に取り組んでくれ!」

 先生が促し、ホームルームは終了。


(今年も派手に盛り上がりそうだ……)


 1時間目が終わり、体育祭の役割を話し合うためのクラス会議が開かれる。去年は俺が選手宣誓をしたが、マイクトラブルと謎のラジオ放送が混線して大騒ぎになったというトラウマがまだ新しい。

 にもかかわらず、クラス委員がなぜか俺を推薦し始める。


「それじゃ、選手宣誓は……美玲ちゃん、今年もお願いね!」

「え、私が!?……去年散々だったじゃん……」

「でも美玲ちゃんが一番盛り上がるじゃん! 去年もマイクトラブルとはいえ、大ウケだったし!」

「ウケなくていいから!」


 俺が慌てると、結月がニヤニヤしながら「やっちゃえやっちゃえ!」と焚き付けてくる。最後は「決定~!」とクラスが拍手を始め、強制的に選手宣誓に決まってしまった。


(……嫌な予感しかしない……)


 一方、他の役割は順調に決まっていく。応援リーダーや放送係なども立候補があり、揉めることもない。ここまでは平和だ……

 クラスの雰囲気は「最後の体育祭、盛り上がろう!」とポジティブ。みんな高揚感があり、サブイベントや仮装計画も出始めている。

できれば、普通に終わってほしいと俺は密かに祈った。


「じゃあ、今日はグラウンドのラインを確認しに行こうか!」

 男子が声かけして、俺も含め数名で運動場へ出る。そこでは1・2年生の準備チームがコーンやロープを設置中だ。

「こんにちはー、今年も頑張ろうね!」

 なんて微笑ましい会話……のはずが、急に遠くの方から黒猫の集団がタタタッと走ってきた。


「うわ、猫がいっぱい……」

 結月が思わず「かわいい!」と言うが、その数が尋常じゃない。10匹、20匹……30匹……あれよあれよと増え、最終的には100匹近くいるんじゃないかという勢いで、俺の足元をスルリと横切っていく。


「え、ええ~!? こんなに猫が!? しかも全部黒?」

「なんで美玲ちゃんのとこ通るの?」

 皆が目を丸くする中、俺は慣れたもので「またか……」とため息。


(毎年体育祭の前に、横を黒猫が横切る……何の予兆だよ……)


 クラスメイトも「まぁ、美玲ちゃんだし……」という妙な納得顔で、猫が立ち去るのをぼんやり見届ける。


 さらに、準備作業でラインテープを貼っている最中、空を見上げるとカラスの大群が旋回しているのに気づく。クラスメイトが「おい、カラス来てるぞ……」と指差し、やっぱりか……と思う。

 周りの生徒が慌てて声を張り上げ、何人かが「追い払う係」を名乗り出て、竹箒を振ったり掛け声で威嚇する。カラスも一応遠巻きにしてるが、時々カーカーと鳴いてこっちを見ている。


 俺は気まずそうに苦笑い。

「なんか、今年も動物来まくりじゃん……」

「だね~。もう定番だね、動物がいっぱい来るの。でも仕方ないんじゃない?」

 結月が吹き出して笑う。


――――


 翌日、昼休みに用具を取りに行こうと体育倉庫へ向かったところ、何やら2足でピョンピョン跳ねる生き物がちらりと視界に入る。


(何だ、あの動き……)


 近づくと、カンガルーが上半身をくねらせてシャドーボクシングをしているという衝撃的な光景が飛び込んできた。まるでパンチの練習をしてるかのように、前足を左右に突き出す動作。は!? カンガルー!?


「うわあああ!? なんでカンガルーがいるの!」

 声を上げると、カンガルーは一瞬こっちを見て「フン……」と鼻を鳴らして、再びシャドーボクシングに戻る。まるで「俺は練習中だから邪魔すんな」と言わんばかり。


(誰だよ、このコイツ……)


「うわ、ほんとだ! カンガルーがシャドーボクシング……なにそれ!」

 結月が目を丸くしている。

「日本に生息してないよね!? 野生じゃないよね? どこから来たの?」

「いや分かんない……けど確実にやる気満々っぽいよね、体育祭に備えて……?」


 結月が「今年は動物たちもやる気満々で、ウォーミングアップに余念がないね!」と言って爆笑する。もう呆れるしかない。


 さらに午後の授業が始まって少し経った頃、クラスメイトが窓を見て「うわ、馬が走ってる!」と叫んだ。見ると、グラウンドを馬が一頭、優雅に駆け回っているではないか。なんで馬……


「え、競馬の練習? 誰の馬?」

 先生も唖然と黒板のチョークを止める。クラス全員が窓辺に詰めかける。


 騒動を聞きつけた体育教師らがグラウンドへ飛び出し、馬を捕まえようとするが、走り回る馬のほうがずっと速い。どうやって捕まえるのか……


 窓から見ていると「おい止まれー!」と教師たちが叫んで馬のあとを追いかけている。馬はひらりと方向転換し、軽々と人の間をすり抜ける形で逃げていく。結局、正門の隙間から出て行ってしまう。


 教室内は爆笑の渦。「何あれ!」「馬のほうが一枚上手だね!」


「やっぱり今年も動物のテンションが高いね。ウォーミングアップに余念がないよ、あの馬も!」

 結月が楽しそうに笑う。


 なんかスポーツ大会に向けて動物が練習してるみたいになってるし……いや、馬が入り込んでくる時点で意味わからない……俺は苦笑いで返事するしかない。


 結局、この一週間ほどで黒猫やカラス、カンガルーや馬など、謎の動物たちが次々と学校周辺に出没して不安が漂っている。

 先生たちも半ば呆れていて、対策を立てようにも難しい。さらに「美玲が絡むと動物が増える説」まで囁かれているが、否定しても信じてもらえないだろう……


「去年も黒猫やカラスは来たけど、今年はカンガルーとか馬とか、レベル上がってない?」

 クラスメイトが休憩中に談笑している。

「マジあり得ん……オーストラリアかよ……」

翔が言い、結月も笑っている。

「いやもう面白すぎる。馬まで参加するのかな!?」


「面白くないよ。まともに今年こそ体育祭したいのに……」

 俺は複雑な心境だ。


「ま、まあ大丈夫じゃない? 結局、本番はちゃんとやれるって!」

「それだといいんだけど……」


 何にせよ、準備期間はまだ少しある。動物たちがさらに増えたりしないだろうな……戦々恐々になりながらも、みんなでライン引きや種目練習をやっている。


「はぁ……今年も、波乱の幕開けか……」


 そう内心つぶやきながら、俺はクラスメイトと一緒に競技の練習へ向かうのだった。

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