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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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83.進路

「ねえ、美玲ちゃん、そういえば進路どうするの?」

「……進路?」


 隣の席の結月が声をかけて来る。そろそろ進路希望などを提出する時期であった。


(そういえば3年生だもん。もう受験とか進学・就職とか考えなきゃいけない時期なのか)


 これまでトラブルばっかり追いかけてて、すっかり忘れていたが、本来なら今頃は『大学に行くか、専門学校か、就職か』を真剣に考える時期だ。


「そっか……あんまり決めてなかったな……」

 結月が微笑んで「だろうと思った」と言う。


(なんだかんだで周りのほうが俺のことよく知ってる気がする……)


 結月と二人でこそこそ話すつもりが、近くの席のクラスメイトが興味を示し、「進路? 美玲ちゃん、まだ決めてなかったの?」と首を突っ込んできた。

「あ、いや、まだ……漠然としか……」

「そりゃあさ、美玲ちゃんっていろいろスゴい経験あるし、将来どうするんだろうって皆気になってたんだよ!」


「だってさ、前にチョコレート作って大評判になったじゃん。あのパティシエが学校まで来たって話、今でも有名だよ。だからパティシエになればいいんじゃないの?」

「えーでも、美玲ちゃんって曲芸かサーカスが似合いそう! 文化祭のときサーカスしてなかったっけ? 空中ブランコや火の輪くぐりしてたって噂聞いたよ!」

「サーカス団って……本当にあるの? 美玲ちゃんステージ映えしそうだけど……」

「それかアイドルは? 海辺で1万人ライブやったとかの伝説があるしさ、絶対人気出るでしょ」


「そんなの……あれは流れでやらされただけだし……ガチでやる気はないって……」

 でもクラスメイトはニヤニヤが止まらない。


「あと動物絡みなら、獣医とか? だって馬とかイルカとか動物にやたら慕われてたし、自然に群がってくる特技あるでしょ?魔女とか呼ばれてたじゃん」

「いや、慕われてるんじゃなくて勝手に集まるだけで……」


 もはや突っ込みが追いつかない。クラスメイトは楽しそうに「絶対なんかすごい仕事につくよ、美玲ちゃんは!」と盛り上がっている。


(普通でいいんだよ……)


 しばらくクラスメイトの想像ゲームに振り回されて、頭が痛くなった頃、誰かが「当人はどう思ってんの?」と本題に戻してくれた。


「そ、そうだ。美玲ちゃん本人の意見が大事だよね!」

「そうそう、実際どうすんの? 就職? 進学? どんな仕事?」


 視線が一斉に俺に向く。意を決して立ち上がり、胸を張って言う。


「私は、普通のOLを目指すんだ!」


 俺の言葉に一瞬静寂が訪れた。次の瞬間「えーーー!!?」という大ブーイングが起きる。クラス全員が「いや、それだけはあり得ないって!」などと口々に否定するではないか。


「ちょっと待って、なんで!? OLって普通に就職するパターンだよね!」

「美玲ちゃんは普通に生きられるタイプじゃないでしょ!」

「こんなに騒動まみれだし、普通のOL生活が送れると思う?」

「いや絶対無理だよ。客先回ったら動物とかに絡まれるだろ……」


 周囲が「ねー」「確かに」「すぐ客先が炎上しそう」と勝手に話を盛り上げる。


(なんだこの失礼なイメージは!)


「そんな……普通のOLだって人並みにできるかもしれないじゃん……」

「いや、ゼッタイ厳しいでしょ。」

「むしろ猟師とか冒険家とかが似合うんじゃない?」

「いや、海賊王とか目指したほうがいいよ!」


(海賊王って何……?)


「まあ、美玲ちゃんはきっと我々の予想もしない進路に進むのかもね。いつも奇想天外な事件に巻き込まれるじゃん」

 結月は笑いながら言う。その言葉に皆が「ああ、確かに!」と頷いてゲラゲラ笑う。


「なにそれ、縁起でもない……私は普通に就職したいの!」

「でも普通に就職して普通のOLになるのが一番難しいよ。美玲ちゃんの場合……」


 結月が悪戯っぽく言う。クラスメイトも「だよねぇ……」「動物に囲まれた職場になるんじゃ?」などと勝手に噂してる。


 俺はふてくされ気味に「普通がいいもん……」と呟いて、そこで予鈴が鳴った。ホームルームが終わり、1時間目の授業が始まるらしい。


――――


 放課後。クラスの賑わいも落ち着いた頃、俺は窓際の席に座ってぼんやり考えていた。


 思い返せば、この1年間で動物絡みや奇妙な事件が絶えず、「普通」とはかけ離れた日常を送ってきた自覚はある。それを踏まえた上で「普通にOLをやるなんて無理だろ」と周りが言うのも一理ある。


「でも、普通に働くってそんなにハードル高いかな……前世では普通にサラリーマンだったけど……うーん……」


「あれこれ悩んだところで、やっぱり大学に行って、そのまま普通に就職する流れが一番自然なんじゃないか……」と頭を整理する。


 最終的に、俺はそっと拳を握りしめ、決意する。


(よし、まずは大学進学を目指そう。偏差値そこそこでもいいから普通の学科に行って、普通に4年間過ごす! そのあと普通に就職して、オフィスで働くんだ……!)


「……まずは受験勉強しなきゃ。やばい、騒動で時間を取られてる場合じゃないかも……」


 もうラスト一年だし、俺も本気で普通への道を切り開きたい。


(何か事件があっても、勉強時間を確保しないと……!)


 そう決心し、鞄を持ち上げて席を立つ。


(3年生のうちに猛勉強して、大学へ行くぞ。 変なハプニングがあっても乗り越える……多分……)


 下校時、玄関でたまたま結月に出会う。先程の決意を、結月にも聞いてもらうのだ。


「普通のOLになるには、やっぱり大学は行っとかないと、と思うんだよね……ほら、就職の幅も広がるし!」

「そうだね!せっかくだし、一緒に受験勉強頑張ろうよ!」


 結月は笑顔で「がんばれがんばれ」と手を振って応援してくれる。少し嬉しい。けれど、彼女は続けてこう言う。


「でも……美玲ちゃんの人生、普通に行くって一番難しい気がするんだよな~。何か絶対起こるからさ……」

「いや、そんな……縁起でもない!」

「ごめんごめん。でも、いつも予想外のことが起きるじゃん?」

「……まぁ、確かに否定はできない……」


 結月はクスクス笑い、「応援してるから! どんな将来になるかわかんないけど、頑張ろうね!」と励ましてくれる。俺は苦笑いしつつ「ありがとう……普通の大学生活送るんだ……」と意気込む。


 その後、帰り道でクラスの何人かに出くわして軽く会話すると、「え、美玲ちゃん、大学行くの? 山に動物園作るんじゃなくて?」とか「美玲ちゃんならハムスターと一緒にサーカスするのでは?」などと茶化される。


「普通のOL! 会社員になるんだよ!」

「マジで~? 絶対なんか動物に囲まれる職場になるかもね!」

 みたいに、もはや定番の発展。


(まぁ、皆楽しそうだしいいけどさ……)


 結局、俺が「普通のOL」になるために大学に行くという目標が固まったものの、クラスメイトや結月は「いや、絶対無理だろ」「どうせ変な方向に行くんだろ」と半ばネタ扱い。


「……絶対に、普通に働いて、定時に帰って、普通に生きるんだ……」


 普通のOLを目指すというゴールは遠いかもしれない。でも1歩ずつ進めば……。俺にも、いつか静かで平和な人生が訪れる……はず。

 普通を目指すんだ……!

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