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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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82.スポーツテスト(再)

「今週スポーツテストを実施するぞ。去年と同じ要領だ。頑張れ!」


 そのひと言で、クラスメイトがどよめき始める。


(ああ、もうそんな時期か……)


 俺も微妙な気分になる。なぜなら昨年度のスポーツテストで、ハンドボール投げや反復横跳びなどでとんでもないハプニングを起こした記憶があり、測定不能だったのだ。


(なぜかカラスに持っていかれたり、ストップウォッチが爆発したり……)


「またあれをやるのか……今度こそまともに記録取りたいなぁ……」

 俺は苦い表情でつぶやく。周りのクラスメイトも薄ら覚えているらしく、「去年、美玲ちゃんのボールが飛んでいった事件あったね……」とクスクスしている。


 そういえば、去年のスポーツテストでは西園寺が張り切って勝負を挑んできた。放課後、廊下ですれ違った西園寺を捕まえて、聞いてみる。


「今年も勝負するの?」

 もしかしたら彼女もリベンジに燃えているかもしれないと思ったのだ。しかし、返ってきた反応はそっけないものだった。


「勝負なんてしませんわ。去年はあなたのことを誤解していて、張り合おうと思ったけど……いざ一緒にやると大惨事になる予感しかしませんもの。だから、近づかないで!」


「ひどい! 一緒にテストすると大変な目に遭うって……私のせいじゃないし……」と心で叫ぶが、西園寺は「失礼しますわ」と踵を返して去ってしまった。


(全力拒否か……)


 俺はその後姿を見送りながら、少なからずショックを受ける。


(まあ、あれだけの騒ぎを目撃すればトラウマにもなるよな……)


 翌朝、クラスでスポーツテスト前のホームルームを受けていると、クラスメイト数名が集まってきて、妙に真剣な顔でこう言う。


「美玲ちゃん、今年こそスポーツテストをちゃんと測定してあげたいんだよ。だって去年……」

「うん、ハンドボール投げも反復横跳びも、全然測れなかったじゃん?あれはさすがに気の毒だし、恥ずかしいよね?」

「だから、我々が協力して、確実に測れるようにサポートしよう! 『美玲ちゃんにスポーツテストをちゃんと測定してもらう会』を結成したんだよ!」


「は? そんないいって……そこまで大げさにしなくても……」

「いやいや、美玲ちゃん、昨年のことを思い出してみて? ストップウォッチが爆発したり、馬鹿げたことが起こりすぎたんだよ!」


 みんなの顔は真剣そのもの。

「ここまでしてくれるのか……ありがたいが恥ずかしい……」と思いながらも、断る余地がない感じ。


「わ、分かった……ありがとう……」

 するとクラスメイトが「よーし、本気で測定できるように準備するぞ!」と気合いを入れる。


 その日の午後、グラウンドでスポーツテストが始まる。クラス順番で測定に入るが、俺の番になると周りに数十人が集まってきて、厳重体制を敷いてくれる。


「周囲に動物が紛れ込まないように、見張りをするよ!」

「道具が壊れてないか検査しておいたから、大丈夫!」

「何か不可解なことが起きても、すぐ予備を出せるようスタンバイ済みだ!」


「ありがとう……でもそこまでやる?」

 思わず顔が赤くなる。あまりにも人が多く囲んでいるから、他クラスの生徒が「何が始まるの? 大会?」と勘違いしてるし。


「まずはハンドボール投げからだな。昨年はカラスが持っていったけど、今年は動物が入れないように門を封鎖してる! これで安心!」

 クラスメイトの男子が胸を張る。「マジご苦労さま……」と思いつつ、俺はスタートラインに立つ。周りから「頑張れ、測定できるぞ!」という黄色い声援が飛ぶ。恥ずかしいよ……


「よし……今年こそ普通に……」

 息を整え、ボールを振りかぶる。グッと踏み出して投げた瞬間……。


「……あれ?」

 ボールが空中でバンッと爆発し、四散。

「……うそ……」

 口をあんぐり開ける俺。クラスメイトも絶句。


「な、なんで!? ハンドボールが爆発っておかしくね?」

「ま、まだだ……この日のためにボールを100個用意しておいたんだ!」と男子がカゴを持って駆け寄る。


 2球目を投げる。すると今度は中空で真っ二つに裂け、「わああ!?」と周りが悲鳴。3球目は消えて見失い、4球目は火花を散らして地面に着弾。


「なんでこんなにトラブル……!? 物理法則どうなってるの……」

 俺が半泣き状態になるも、クラスメイトは粘り強い。「いける、まだボールはある!」と励ましてくれる。


 5球目、6球目、7球目……すべてが破損や突発的な異変。正直泣きそう。何が起こってんだよ……

 だが、10球目で、ようやくボールが普通に空中を飛び、地面に着地して転がった。

「やった……!」

「速攻でメジャー測れ!」と生徒たちが一斉に駆け寄る。破損しないうちに記録を取りたいのか、全力で走って計測。


「14メートルだ!」

「おお……成功だ……」と歓声が上がり、「やったね美玲ちゃん!」というエールがわっと沸く。女子数人が感涙しながら俺に抱きつき、「記録出たよ……よかった……」とか言う。


(いや、そこまで喜ばれるとこっちが恥ずかしい……)


 同様に、反復横跳びもストップウォッチが去年爆発した記憶があるので、クラスメイトが100個も用意している。


「よし、まず1個目……スタート!」

 俺が横跳びを始めると、バチン!という音でストップウォッチが破裂。「うそ!?」と体育係が叫ぶ。

 だが隣にいる別の男子がすぐさま「まだだ、この日のためにたくさん用意したから!」と予備を2個め起動。しかし2秒ほどで煙が出て焼け焦げ、3個め4個めと出番が続き、一つ一つが謎の壊れ方をしていく。


(なんだこの呪い……)


 結局、20回以上のトライを繰り返し、ようやく測定可能な状態が巡ってきた。もうヘロヘロだ……

 他の種目、50m走や上体起こしも似たようなトラブルが続いたが、クラスの団結力によって多数の予備器具・予備計測員が投入され、最終的には全部の競技の数値を出せた。偉業といえるかもしれない。


 最後に体育の先生がトラックのゴール付近まで来て、涙ぐみながら肩を叩く。

「美玲……良かったなぁ……!」

 周囲の拍手が盛り上がり、それを聞いた他クラスの生徒までもが「すごい、測れたんだ……!」と拍手。


(何この感動ムード……)


 後日、体育の先生が作った一覧表によると、俺の各種目の記録はだいたい3年女子の平均程度らしい。ハンドボール投げが14m、50m走も普通の時間、握力も普通、反復横跳びもまあ標準スコア……。

 みんなに「おめでとう!」と笑顔で称えられ、「本当に良かったね、ちゃんと測定できて!」などと祝福される。


「去年とは大違いだよ! 動物も来なかったし、ボールが不思議に破壊されても、ちゃんと予備があったし!」

「もう普通の子に戻れたかも!」と言われたりして、俺は「いや、普通じゃない……十分異常事態は起きた……」と呆れ。だけど、記録が取れてすこし満足感もある。


 こうして3年生のスポーツテストは、クラス総出のサポートによってなんとか全測定が完了した。


(ありがとう、クラスのみんな……でもマジ恥ずかしかった……)


 記録はどれも平均的だし、別に恥じることはない。西園寺は「意外とちゃんと測れたのね……」と素っ気なくコメントしていたらしい。


「はぁ……今年も何かと大騒ぎだった……」


 ひとまずスポーツテストは終わり。感謝と恥ずかしさを半々に、明日を迎える俺だった。

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