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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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80.新入生からのラブレター?

 4月初旬。朝の通学路をのんびり歩き、通い慣れた校門をくぐると、校門を抜けたところで見たことのない男子生徒がこちらに駆け寄ってきた。


(ん? 見覚えのない顔……新入生?)


「……あのっ、すみません!」

 妙に犬っぽい顔つきというか、ちょっと短髪でワンコっぽく見える男子が、息を切らしながら俺の前で立ち止まった。制服はピカピカで、胸ポケットに付いてる校章も綺麗だから、新入生と確信。


「私に用?」

「は、はい。……えっと……」


 犬系男子は目をうるうるさせ、封筒らしきものを差し出す。


「一目見たときから……胸の高鳴りを抑えられなかった……これ、受け取ってください!」


(え、何……? まさかラブレター?)


 思わずきょとんとしていると、男子は顔を赤くして「ほんと、失礼します! で、では……!」と一瞬で走り去ってしまった。呆然と立ち尽くす俺。


(なんだったんだ……突然のラブレター??)


「きゃあ、美玲ちゃん、さすがモテるね!」

 すぐ横から、居合わせた結月の声がする。


(ああ、結月……)


 振り返ると、結月がニヤニヤしてこちらを見ていた。


「ちょっと、何もさすがじゃないから……。あの子は誰か知らないし、ちょっと複雑だよ……」

「まあまあ、でも事実モテてるじゃん。美玲ちゃんは美少女だしね!」


(確かに見た目だけは美少女。いつもトラブルまみれで忘れがちだけど……)


 結月がひやかし続けるので、「とりあえず落ち着いて……」と苦笑したままホームルームへ向かうことにした。


 教室で席についてホームルームが始まるまで少し時間がある。結月が俺の机を覗き込みながら、笑顔で急かしてくる。


「ねえねえ、手紙の内容が気になる! 今すぐ開けよう!」

「いや、さすがにここで読むのは落ち着かないし……家に帰ってから読むよ。相手に悪いし」

「ちぇー、ケチ!」


 結月が唇を尖らせるが、内容を勝手に見られるのは向こうにも失礼だし、俺だって落ち着いてから読みたい。


(なんか乙女みたいで恥ずかしいな……)


「でも、ほんとにラブレターだったらどうする? 付き合うの?」

「……いやいや、OKするわけないでしょ……。恋愛とか考えてないから」

 結月は楽しそうに「うふふ」と笑って、俺をチラチラ見るのだった。


 午前の授業が終わり、昼休みに食堂へ行こうと廊下を歩いていたら、今度は猿っぽい顔の男子が「すみません、先輩!」と声をかけてくる。髪がやや尖っていて、小さな目と出っ歯が少し猿ぽく見える。


(また新入生……?)


「え、はい、何?」

「あなたを見るだけで、心が落ち着かなくなるんです……これ、受け取ってください!」


 またしても封筒を差し出される。


(また!?)


 思わず心の中で叫ぶ。

「あははー、美玲ちゃん、モテモテー!」

 結月が隣でニヤニヤしている。

「なんでこんなに……食堂へ行きたいだけなんだけど……」

「すみません! 失礼します……!」


 猿顔の新入生はすぐに逃げ去るように走っていく。

「やった、また手紙ゲットじゃん! 中身どうなってるんだろう。 ラブレターっぽいよね?」

 結月が嬉しそうに言うが、俺は苦笑いする。


「朝の犬顔の子と言い、この子と言い……うーん、何だろうこれ……」

「さすが美玲ちゃん! もはや変な動物系男子が集まる呪いでもあるんじゃない?」

 結月にからかわれる。


(そういう呪いはいらない!……それにしても、今度は猿顔か。今朝のは犬顔、友達なのかな……? いや分かんないけど……)


 食堂に到着して、俺たちは定食をオーダーして空席に腰掛ける。

「ねえねえ、今度の手紙は早く開こうよ! デザート食べながら読みたい!」

 結月はわくわく顔だ。しかし、俺はまた断る。


「私だって気になるけど、さすがに堂々と他人の視線がある中で読むのもあれだし、気が散るし……。家でゆっくり読むよ」

「えー、二通も溜まってるじゃん! どっちも好き好きラブコールだったらどうするの?」

「知らないよ……。後で読むから、とりあえず昼飯食べさせてよ……」


 結月は唇を尖らせて「けちー」と言うが、無理に開けようとしてはこない。


 放課後。校門を出た瞬間、またしても新入生らしき男子がこっちへ駆け寄ってくる。今度は黒目が小さいくて、ぎょろっとした目をしており、頬が赤い。パッと見、なんとなく雉を連想させる雰囲気……。


「えっと……あ、あなたを見かけるとドキドキが止まらなくて……これ、よかったら受け取ってください……」

 そう言って封筒を差し出してくるではないか。


(三通目か……)


「わあ、また来た! 美玲ちゃんすごいね!」

 結月ははしゃぐ。


「さすがにこんな連続で手紙もらうなんて、普通ありえなくない?」

「やっぱ美玲ちゃんが美少女だからだよー」

 結月は笑って背中をバシバシ叩く。


「いやあ、なんか動物顔の男の子たちからやたら声かかる……ちょっと怖い……」


「確かに犬系、猿系、雉系……なんか3連続って珍しいよね……」

 結月は首をかしげる。


「まあいいや。家で読んでみよう……3通も溜まったよ」

「いいなあ、みんなからラブレターがいっぱい……」

「ありがたくないよ……こんな事態が起きるなんて……」

 そんな会話をしつつ、帰宅の道を歩く。


 夜、夕飯を終え、机に3通の封筒を並べた。


「さて……ラブレターにしては同じサイズの封筒。手書きっぽいけど、どんな内容……?」

 少し緊張して一通目を開封する。


『あなたならあの人に立ち向かえると思いました……実は1年生の番長、鬼塚君が暴れており、わたしたちはどうにもならない状況です。ぜひ協力してほしい……』


「は? 1年生の番長って……鬼塚君? 誰?」


 不審に思いながら二通目も確認。

『……鬼塚君は恐ろしく凶暴だ。あなたなら勝てそう……お願いします!』


「なんだこれ……恋文じゃないんじゃん……」


 三通目も全く同じ展開。

『1年生の番長・鬼塚が恐ろしい。あなたを見て一目惚れというか、勝手に頼りになりそうと思った。それで一緒に懲らしめてほしい……』


「なんだそりゃ。人をなんだと思ってるの……?」

「犬顔・猿顔・雉顔……あれ、完全に某おとぎ話の三匹の家来みたいな流れじゃん……あっ、つまり桃太郎か!!」

 思わず深夜の部屋で叫んでしまう。


(道理で3連続動物系男子からの手紙……元ネタはそこか……!)


「神か何かは知らないけど、何者かに桃太郎扱いされている……!?」


 呆れつつも背筋が寒くなる。


(なんでいつもこういうトラブル呼び込むんだよ、勘弁して……)


 翌朝、俺は自室で溜め息をつきながら、書かれた3通の内容を再度チェック。


「桃太郎じゃないんだよ!!」


 思わず声を張り上げてツッコミを入れるが、部屋には俺しかいない。


「でも何にせよ、番長の鬼塚君とか知らんし……無理だよそんなの……」

 苦笑いしながらバッグに手紙を放り込み、結月には内緒にしとこうと決める。


(どうせ知ったら面白がって桃太郎ネタでからかわれるだけだ)


 こうして、犬・猿・雉ならぬ動物顔の新入生たちからのラブレター(?)の結末は判明したが、また新たなトラブルの予感が残るのだった。

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