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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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77.成金結月と大騒ぎ

 春の陽気が一段と深まったある日、スマホの着信音が響く。結月からの連絡だ。


【一緒に遊ぼう、美玲ちゃん! 明日、朝から集合しない?】


 今日はかなり突発的だ。それでも暇な俺は「いいよ、行く」と二つ返事。


【西園寺さんと翔くん、神崎くんも誘ってあるから!】

 結月はウキウキモードのようだ。


(フルメンバーか……何するんだろう)


 当日の午前に集合場所へ向かう。待ち合わせ先は駅前の広場で、すでに翔と西園寺と神崎が顔を合わせていた。俺が駆け寄ると、みんなが結月を探してキョロキョロしているところだ。


「今着いた……あれ、結月はまだ?」

「さっき連絡したら、もうすぐ着くって言ってたよ」

 なんとなく雑談しながら待つ。すると遠くからサングラスをかけた人物が歩いてきて、見覚えのある声で「ごめん、ちょっと待った?」と叫ぶ。


(あれ、結月……?)


 確かに声は結月だけど、黒いサングラスにブランドっぽいトップスとスカート、明らかにいつもと違う雰囲気。下手すると小金持ちのお嬢さんみたいだ。


「……結月!? その服……なんかお高そうじゃない?」

 俺は思わず目を見張る。

「うおっ、どうしたんだよ。なんか成金みたい……」

 翔も率直に言う。

「あら、そのブランドはそこそこだけど……着こなしが雑ね」

 西園寺は少しムッとして、上から目線で呟いている。


 結月はサングラスを外して、得意げに胸を張る。


「えへへ、ちょっと聞いてよ。あのね、この間山で拾った小判がいい値段で売れちゃって! それで換金とか色々あってバタバタしてたの!」

「はい? 本当に売ったの? 歴史的価値が……って言ってたじゃん」

 俺が呆れると、結月は笑みを浮かべてさらっと言う。


「いや、お金になったからいいかなって。苦労したけど、思ってたより高く買い取ってくれたんだ」


(この子ってお金絡みの行動が大胆すぎるよな……。人の写真を勝手に売ったり、危険バイトに手を出したり……)

内心思いつつ、俺は苦笑する。


「まぁ細かいことは気にしないで! 今日はみんなで遊ぼうよ。私が色々おごるからさ!」

「え、おごる? 大丈夫なの……?」

「平気平気、お金なら今持ってるから! なんでもやっちゃおう!」


 結月の口調は完全に成金モード。


(ああ……またヤバい事態になるんじゃないか……)


 一抹の不安を抱えながら、俺たちは成り行きで「じゃあ一日遊びまくる?」となってしまった。


――――


「私が車を手配したから! レンタカーじゃなくて代行運転サービス!」

 結月は次々とお金を使い、やたらと豪華な移動手段を選ぶ。おかげで俺たちはあっという間に郊外のテーマパークへ到着。入場料もぜんぶ結月がまとめて払ってしまい、ゲートをくぐる時点で「おお……」と驚愕。


 園内では絶叫系やファンタジー系のアトラクションに何度も乗る。これはこれで楽しいが、さすがにテンションが高い結月が「あれ乗ろう、これ乗ろう!」と高速回転するため、俺もヘロヘロになりつつ付き合う羽目に。


「私、もう足が棒だよ……」

「ちょっと休もう、もう勘弁……」

「ごめんごめん、みんな楽しいでしょ?」


 翔と神崎は「まあまあ……」と言いながら、結局乗り物全部制覇する勢い。西園寺は「いい加減休憩を!」ときつめに抗議しているが、結月の勢いには勝てない。


(でもいろいろアトラクション乗れて、普通に楽しい……ありがたいことはありがたいか……)


――――


「次、水族館も行きたい!」


 テーマパークを出たあと、結月が提案してくる。

「この近くに有名な水族館があるんだよ!」ということでタクシーを飛ばす。再び豪快に入場チケットをまとめて買う結月。


「私、イルカショーはもういいよ……沖まで連れてかれた思い出が……」俺がうめくと、「大丈夫大丈夫、今回は陸上だから!」と笑われる。確かにイルカショーのステージを見ても何も起こらず、普通に楽しんだ。


――――


「じゃあ博物館も見てこよ!」

 結月がノリノリで別の施設へ移動。


「え、博物館? 結月にそんな趣味あったっけ?」

 翔が苦笑しつつついていくと、結月は展示をちょっと見ただけですぐ飽きてしまい、「あー、もういいか」なんて適当。

「ええぇ……何しに来たの……?」

「いいの、パッと見ただけでも満足だから!」

 結月はずっとポジティブで楽しそうだ。結局小一時間でそこを出てしまう。


 さらにプラネタリウム施設へ行って夜空の映像を堪能。


「こういうのも悪くないね」

 神崎は落ち着いて楽しんでいる。

 翔と俺はもう疲労感が半端なく、座席でうとうと眠りかける。

「静かでいいけれど……なんかバタバタしすぎて頭が回らないわ」

 西園寺は愚痴っていた。


――――


「まだまだ! 最後はディナーを豪華にしよう!」


 夜も更けてきたころ、結月が提案し、まさかのクルーズ船を貸し切る暴挙に出る。「金ならある!」ということで、こぢんまりした観光船を占有して豪勢なディナーを味わうことに。


「こんなクルーズ船ディナー初めてだよ……ほんとに貸し切りにしちゃうなんて!」

「いや~、思ったよりお金あったからさ! ちょっと使ってみたくて。」

「すげぇと思うけど……本当に大丈夫なのか? 結月、税務署に捕まったりしない?」

「大丈夫だって! ほら、ここで一番安いプランを貸し切っただけだよ。」

「私たちだけが船にいて……なんか贅沢すぎるわ。風が気持ちいいけど、贅沢通り越してちょっと怖い……」

「まあまあ、西園寺さん、今日は楽しもうよ。ほら、シェフが料理持ってきてくれた。美玲ちゃん、はい、このアペタイザーのエビ美味しそうだよ!」

「いや、ありがとう……うわ、めっちゃおいしそう。海鮮だし……」

「神崎くん、どう? この魚介パスタもあるよ!」

「うん、いただくよ。……おお、これは美味しいね。」


「俺たち、ホントに大丈夫か? 明日から金銭感覚壊れないかな……」

「ほんと今回だけだって! 残りはちゃんと貯金するつもり!」

「結月は初めから金には弱いくせに、なんだかんだ言って貯めないだろ?」

「失礼な! もう危険バイトも写真売るのもやめたしね、今回は真っ当な収入……じゃない、拾い物だけど、正々堂々売ったんだから!」

「そういう問題かな……でもありがとう。ごちそうさま!」

「ふふ、みんなが喜んでくれたら嬉しいよ!」


「……夜景きれいだね……」

「ねー、美玲ちゃん、今度また行こうね? クルーズが気に入ったわ~」

「いや、こんな豪華なの何回もやらないでよ、恐縮だし……」

「結月、お前ちょっと金銭感覚どうなってんだ……」

「うるさいな、今日はお祭りなんだからいいでしょー?」


――――


 長い一日を過ごし、夜10時近く、クルーズから下船して皆解散ムードになる。


「いや~満喫したな。……でも疲れた……」

「なかなか面白かったよ」

「もう当分、贅沢はいいわ……」

 みんな、様々な意見を言う。


(あれ、そういえば小判って……)

 俺はふと思い出して、結月に小声で尋ねる。


「ねぇ、結月、あの小判……最初は私も一緒に見つけたよね? 山で犬が案内したとき……。ていうか、その取り分ってどうなってるの……?」


「……あ、あはは、ま、まあ今回の遊びに全部使ったじゃん? 実質わたしがおごったけど、それって美玲ちゃんやみんなのためでもあるからさ!」


「いや、ちょっと待って。それで終わり? 私もまさかこんなに豪遊できるとは思ってなかったけど……」


「えーっと……そうだ! 今回の費用はね、私がおごったし、プラスマイナスゼロってことで……」


 結月はあからさまに冷や汗かきながら話題を逸らそうとしている。俺は苦笑しつつ「さすがにそれではごまかされないんだけど……」と心の中で呟く。


 結月は「じゃあまたね!」と手を振ってタクシーへ飛び乗る。俺は仕方なく見送って、「まあ、いいか……もう使われてしまったならしょうがない」と半ば諦める。


 こうして結月の成金ムーブで始まった一日は、テーマパークや水族館、博物館、プラネタリウム、挙句の果てにはクルーズディナーまでという超豪遊コースで幕を下ろした。

 確かにめちゃ楽しかったが、今後結月がまた拾ったお金で無駄遣いしないか心配でもある。


「結月らしいといえばそうだけど……こんなことが度々あったら怖いよね……」


 そうぼやきつつ、ほんのり夢見気分で家へ帰るのだった。

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