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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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76.全自動DIY

「ふぁあ……ヒマだ……」


 春休みに突入したある日の朝、俺はベッドの上で大きなあくびをかみ殺しながら、スマホをいじっていた。いつもなら結月と遊ぶ約束をしているのだが


【ごめん、美玲ちゃん、最近忙しいからまた今度ね!】


と、結月から珍しいLINEが来てしまったのだ。


(結月が忙しいこともあるのか……そっか。じゃあどうしよう。暇つぶしに街でも行くか……でも行っても一人だしなぁ。)


 仕方なく家でだらだらすることに決定。コタツはもう仕舞ったし、ソファでゴロゴロが定番だ。母は仕事で留守だから、リビングで好きに過ごせる。


「よし、ネット動画でも見て暇潰ししよう……。せっかく春休みだしね、引きこもりもいいかもしれない……」


 そんなわけでパソコンを起動して動画サイトを漁り始める。特に目的はなく、有名アイドルのチャンネルでも見ようと思ったのがすべての始まりだった。


 いつもなら歌やダンスを披露しているアイドルが、なぜかDIY動画を投稿していて、「今日は椅子を作ってみました~!」というノリでやっていた。最初は興味がなかったが、再生してみると意外にハマる。


「へぇ……板を切って、ネジ留めて……なんか楽しそう……」

 アイドルが一生懸命インパクトドライバーを使い、塗装までして完成させる様子に、俺はなぜだか惹かれた。


「アイドルらしい演出があるけど、実際に物ができるっていいな……」


 いくつか関連動画を見まくり、気づけば深夜になっていた。それでも「DIYって実は楽しそう……」という思いが膨らむばかり。


(せっかくの春休み、やってみようか……)


 勢いに任せて、翌朝ホームセンターへ出かける。ミニのこぎり、木材、釘やネジ、塗料などをバラバラ買い物かごに放り込み、店員に「初心者ですか?」と怪訝な顔をされつつもレジを通る。

 家に帰って早速リビングを作業場に転用。


「今日は椅子を作ってみるぞ!」

 対象は単純な形の椅子。アイドル動画を真似して、模様を入れたりしてみたいと思う。


(さあ、材料もあるし、何とかやってみよう……!)


 だが俺のDIYへの情熱は、再びやって来る動物騒動に阻まれるということを、その時はまだ予想していなかった。


 いざカットする段階になり、のこぎりを握って「できるのかな……」とビクビクしながら木材に刃を当てる。最初に引き込むところからぎこちない。


「うーん、案外力が要るな……」

 慎重に始めたところで、視界に黒い影が動いた。「ん?」と振り向くと、そこには野良猫が微妙な板材を口に咥えて侵入してきているではないか。


「ちょ、待って、またこのパターン……」

 例のごとく、後続の猫や猿が「キャッキャッ」とか言いながら、インパクトドライバーっぽい道具や追加の木材を運び込み始める。

「なんでDIYにまで介入するんだ……。ちょ、自分で作るのがDIYだから!」


 しかし動物たちはまるで人の話を聞かず、「お前は眺めてろ」と言わんばかりに器用に木材を測って切断し、サンダーで磨き、ネジ止め作業までも始める。

「え、嘘でしょ……。これDIYって『Do It Yourself』の略なんだけど……自分でやらないと意味ないじゃん……」


 ほどなくして、動物たちがサクサクと組み立てて塗装まで終わらせた椅子は、思い描いていた以上にデザインに優れ、しっかりとした仕上がり。


「す、すご……これめっちゃいい感じ……」

 塗装もピカピカで、脚もガタつかず、座面に猫のシルエット模様まで彫ってある。初心者の俺が幾日かかけて作るレベルじゃない。動物たちの手(前脚?)際が恐ろしいほどプロ級だ。


「わわ……嬉しいけど、DIYの意義が……」

 やっぱり苦笑せずにはいられない


(自分でやりたかったのに……この完璧な椅子は自分の技術じゃないじゃん)


とモヤモヤが募る。猫が誇らしげに「ニャー」と鳴くから「ありがとう」と言いたい気持ちもあるが、やはり複雑だ。


 そこで終わればマシだった。だが動物たちは椅子の完成で終わらず、まだやることがあるという雰囲気。猫が玄関ドアをカリカリし、猿が電動工具を握りしめ、「ウキキ」と笑っている。


(ちょ、まさか……?)


 案の定、数分後には「ガガガガ!」と派手な音が鳴り響き、玄関のドアが自動ドアに改造されていた。センサーを取り付け、「シュイーン」と開閉する仕組みに。


「こんなのDIYって言うか、もはやプロの設備工事……いや『Do It Yourself』じゃないし、動物がやってるし……」


 気づけばリビングの照明は人感センサー付きに変えられ、動くだけでパッと点灯するギミックに。動かないと消灯。


(便利だけどさ……)


 さらにインテリアまで勝手に弄り始め、部屋の配置や家具の配置を変更。机に凝ったデザインの天板を付け足し、ベッドフレームにはおしゃれな彫刻が。こうなるともうDIYというよりリノベーションに近い。

 猫と猿たちが「ニャー、ウキー」と盛り上がりながら、10匹以上で分担して作業しているのをぼんやり眺める俺。あっという間に「最高にデザイナーっぽい部屋」が完成した。


「すごい……まるでカタログ写真みたい……」

 でも興奮よりも落胆が大きい。「……結局一切やってないじゃん……DIYは自分でやるのが醍醐味じゃないの?」と。


「これじゃあ全自動DIYだよ……。めちゃ豪華だけど、何も達成感がない……」


 動物たちは最後に軽くスプレー仕上げをして満足気。異様な完成度だし、ありがたいけど想定外すぎる。俺は真新しい自動ドアを眺めて困惑したまま笑うしかない。


 完成後、猫も猿も誇らしげに「ニャオ」「ウキー」と鳴き合い、次々窓やドアから出ていく。玄関の自動ドアが「シュイーン」と開閉するたびに動物たちが通っていくのはシュールすぎる。


「……お疲れ。もう来なくていいよ……」

 苦笑いで見送る俺。部屋には新しい木の香りと漂うペンキのにおいが残る。そしてコンセントやスイッチパネルまで綺麗に付け替えられているのには驚愕を隠せない。


 夕方、母が帰宅し、玄関ドアが自動に開いて「ちょ、何これ!?」と悲鳴が聞こえた。すぐにリビングへ飛び込んできて、部屋の激変ぶりに目を丸くする。


「え、え、何があったの……? すごい立派なお部屋になってるじゃない!? 誰がこんな工事を……」

「いや、あの、わたし……じゃないし……動物たちが……」

「美玲すごい張り切ったわね! DIYに才能あったのね!」

 勝手に母が勘違いして褒めてくる。


「……いやいや、そうじゃない……」と言いかけるが、母は止まらなかった。

「素敵! テレビ番組みたい! これなら友達呼んでも恥ずかしくないわね!」

 大興奮の母に俺は複雑な顔で苦笑し、「まぁ、ありがとう……」と曖昧に受け流す。


(何も言わないほうが楽だし……)


「こんな凝った自動ドアまで……DIYって言ってもここまでやる?」

「まぁ一人じゃ厳しかったから……色々助けてもらったんだよ……」


 内心、「DIYは自分でやるはずなのに、結局何もやってない……」という悔しさと無力感が渦巻く。ちょっとだけ寂しい。


 その夜、俺はふかふかの新しいベッドフレームで寝転びながら、天井を見上げた。ライトが人感センサーで点いて「カチ」と消える。


「なんかすごいハイテクになったなぁ、部屋……。でもDIYの醍醐味って失敗しながら作る楽しさだったはず……」

 翌日は学校もないし、暇だから本当は一人でまた別の小物を作ろうかと考える。


(でも、どうせまた動物が来るかもしれないし……)


「これじゃあ『Do It Yourself』じゃなくて『Do It For Me』だよ……」

 思わず呟いて苦笑する俺。母がリビングで「あぁ素敵!」と喜んでる声が聞こえるけど、俺の気持ちは微妙なままだ。


「……複雑だけど、まぁいっか……」

 そう呟いて目を閉じる。DIYは自分で。それが理想でも、動物に任せて楽だったのも事実……いろいろ割り切れない気持ちを抱えつつ、俺の春休みは続いていく。

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