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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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74.修了式と、お花見をどうしても早くやりたい勢力

「はぁ……ついに2年生が終わるか……」


 修了式の日、俺は体育館で式を受けながら、心中でしみじみしていた。周りのクラスメイトたちは先生の話を聞いてるのか聞いてないのか、でも一応背筋を伸ばしながら長い話に耐えている模様。

 壇上では校長が「来年度こそは……」みたいな調子で話しているが、俺の脳裏には波乱だらけの2年生の日々が走馬灯のように浮かんでくる。


(そういえば、運動会でハゲおじさんたちに追いかけられたっけ……海に行けばイルカに沖へ連れてかれたし……。修学旅行では寝過ごして敦賀に行っちゃったし……冬場にはチェーンソー持った赤い服の男(結月父)をタコ殴りにした……?)


 思い出してみると、ろくでもない事件ばっかじゃないか……? そう考えると、何をやっているんだろう俺は、と苦笑したくなる。


(ほんと、まともに楽しんだ行事なんてあったかな。全部何かしらトラブルが起きてた気がする……。3年生になったらちゃんと落ち着いて過ごせるんだろうか……)


 進路の問題とか受験が近づくし、来年は来年で忙しくなる。まだ実感が湧かないが、不安はそれなりにある。


「終わりか……2年生。なんだかんだで長かったような短かったような……」

 そんな思いにふけっていると、式が終わり、校長や教頭の話も終了し、教室に戻ることに。


 修了式が終わり、クラスは帰りのHRをして解散。なんと今日は午前中で終わりというテンションの高さが教室に充満している。すると結月が勢いよく近づいてきて、満面の笑みで言う。


「美玲ちゃん、せっかくだし、お花見やろうよ!」


「え……お花見? まだ3月の中旬だよ、桜咲いてないじゃん」


 クラスメイトも何人かが「お花見って早すぎない?」と微妙な顔。


「桜が咲いてなくてもいいの! 私は花見を今すぐしたいんだもん!」

 結月はぶれない笑顔で主張する。


(なんだそれ……)


「あと数週間待てば本格的な桜シーズンだよ? なんで今強行するの……?」

「だって……春休みの宿題とかで忙しくなるかもだし……今すぐやりたいんだもん!」

 俺がつっこんでも、わけわからない理屈で譲らない。

 結局、言い出したら聞かない結月と一緒に、翔や西園寺、さらに神崎も呼んで「お花見」なる行為をすることになってしまう。


「翔くん? 今からお花見しようよ!」「神崎くんも来ない?」と即座に呼び出し。心優しい友人たちは「はぁ? 花見?」と驚きつつも一応付き合ってくれるらしい。


「まだ桜が咲いてない時期に何をするの……意味わからない」

 西園寺は呟いていたが、結月は「いいの! 風流だから!」と力説し、最終的にはみんな「まあ、暇だし行くか……」となってしまった。


(なんなんだこの強引さは……でも面白いかもね。季節外れの花見ってのもアリ?)


 内心半分呆れながら、俺はレジャーシートとコンビニで買ったお菓子などを入れて、公園へ向かう。


(どうせ桜はまだ蕾すら開いてないと思うんだけど……)


 近所の公園の一角には毎年花見シーズンになると人でごった返す桜の木がある。俺たちはそこに向かい、ブルーシートを敷いて5人が円になって座る。

 当然、まだ桜の花など微塵も咲いていない。一応、少し蕾が膨らんできてるけど、まるで開花の気配はない。


「だから言ったでしょう……この寒さで咲くわけないわ」

 西園寺は呆れ顔。

「まぁ俺は花より団子派だし、いいけど」

 翔はコンビニで買った焼き鳥を齧っている。

「面白いな、季節外れの花見なんて初めてだ」

 神崎も苦笑しつつ缶ジュースを飲む。


「ああ、枝の形が綺麗だね! この蕾もあとちょっとで咲くのかな? 風流だな~」

 結月はのんきに言っている。


(風流か……?)


 視線を移すと、桜の隣に椿の木があって、唯一咲いている花だった。赤い椿の花がポトッ、ポトッと地面に落ちている。


「おお、椿が綺麗! 花が落ちてるのって風流~」

 結月は訳も分からず感激している。


「椿の花って丸ごとポトッと落ちるから不吉とかいう迷信なかったっけ?」

「え、そうだっけ? やだ~」

 俺のツッコミ。結月は謎のテンションだ。

 

「まぁ……どちらにせよ桜じゃないから花見ではないわね」

 西園寺はさらに冷めた声。


 まったく、いきなり「花見しよう!」なんて言うから、結局こんなことに……。俺はツッコミ疲れてシートにゴロンと寝転ぶ。


「はぁ……なんなんだろう、この空気……ほんとに椿しか咲いてないのに花見って……シュールだね」

 神崎と翔は「まぁ、こういうのも面白いよ」と笑うが、何だか心底楽しんでいる結月は謎だ。


 しばらくダラダラしていたら、近所の人々が散歩やジョギングの途中でこっちを見て声をかけてくる。


「え? 花見? 桜まだだよ?」

「そうなんです~、ちょっと早めに……」

「へー面白いじゃん。じゃ、俺も参加していい?」

「おい、ちょっと家から炭持ってくるわ!」「俺の家にはポータブルコンロがある!」……

 

 毎度と言うかなんというか、なぜ我々が何かをしているといろんな人が絡んでくるのだろうか?次々に人が道具を持ち寄り始め、たちまちプチお花見大会が出来上がる。


「また、なんでこんなことに……」

 俺は唖然。シートが足りず「じゃあウチの古いシート敷くわ!」とか言ってくるおじさんまでいて、もう人がどんどん集まってミニ祭り状態だ。


「すごいな、あっという間に祭りだよ……」

 翔が爆笑している。西園寺は相変わらず引き気味だが、居場所がなくなるほど大勢がワイワイ集まってきた。


「こういうノリは嫌いじゃないけど、毎度ちょっと驚くな……」

 神崎は苦笑しつつ、住人たちと談笑している。結月は大喜びだ。ジュース缶を掲げている。


「はい、じゃあ乾杯!」


 さらに黒猫などの動物も、気づけば数十匹公園に集結している。誰かが「おお、猫かわいい! 餌やるよ!」とか言い出し、動物たちが食べ物を拾って嬉しそうにしている。

 もはや「桜を愛でる会」ではなく、「椿を愛でる会」でもなく、「謎のどんちゃん騒ぎ」という感が強い。周囲に座っている大人も子供も楽しそうに談笑していて、俺は思わず肩を震わせて笑うしかない。


「くく……何この季節外れの花見……」

 昼間から大盛り上がりで、桜がないのに皆が酒盛りや焼きそばを作り始めるという、意味不明な光景になっている。俺はあまりのシュールさにおかしくなってきて、吹き出しそう。


(なんなんだ、結局いつもこうなるんだよな……何か行事をやるとこうなる……)


 結月は大喜びで「わーい、花見だ!」とか言ってるけど、花は椿しかないし、正直花見という名のアウトドアパーティーだ。


 見回すと、ブルーシートが何枚も連結し、即席のキャンプテーブルが並び、住人が焼き鳥やソーセージを焼く煙が上がり、地元動物までもがくつろいでいる。ある意味「花見」に近いのかもしれないが、季節感もなんもない。

 俺は思わず腹を抱えて笑い出してしまった。ここ一年の騒動を思い返すと、常にこんなバカげた方向に盛り上がってしまう俺たちの日常……本当に「平和なイベント」では済まないんだな。


「ぷは……なんだこれ、ほんと、花見でも何でもないね……けど楽しいや……」


「楽しさというよりカオスだわ……」

 西園寺が苦い顔をするが、内心ちょっと笑ってるっぽい。

「ま、これもありだろ」

 神崎は呑気に肉を食べている。

「俺はまあ肉好きだからいいけどさ」

 翔も眉をひそめつつも嬉しそう。


「早くやってよかったね!」

 結月が自己肯定をするのを聞いて、俺はさらに笑ってしまう。


(たしかに、結果オーライかもしれないな……)


 焼き鳥をかじりながら、ふと心の中で呟く。


(3年生になったら受験や進路で落ち着くと思ったけど、絶対こんな調子で騒ぎが続きそうだ……)


 一方で、「まぁこういうのも悪くないよな……いつも事件や動物が絡むけど、最終的には笑いが生まれてるし……」と、少しだけ前向きな思いがわいてくる。


「はは……もう少しだけ、このままでもいいのかも」


 そう言い聞かせながら、結月たちと一緒に、椿しか咲いていない公園での季節外れのお花見会を楽しむ。

 3年生でもまた騒がしい一年になりそうだ。ちょっとした期待と不安が入り混じった胸の鼓動を感じる。


(これが青春なのかもしれない……)


 そう思いつつ、俺は笑いをこらえきれず空を見上げた。もちろん、まだ桜はなかったけれど、そのうち満開になるだろう。「その時は、結月はもう一度花見をやりたがるだろうか……?」などと考えるのだった。

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