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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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62.初詣へ行こう!

 年越しそば事件からお正月の朝。家でこたつに入っていた俺に、スマホから結月の通知が来る。


「あけおめ~! 初詣行こうよ! お昼ごろ、近所の神社で!」


 簡潔なメッセージだけど、絵文字がキラキラしていて彼女のテンションが伝わってくる。


(結月は相変わらず元気だな……!)


 俺も今年こそは「普通に暮らす」を目標にしたい。初詣なら神頼みがちょうどいいかもしれない。


「OK、行くよ! 今年こそは普通に、なんてね……」

 そう返事を打ち込み、コートを羽織って外に出る。冬の空気が頬を刺して冷たいけれど、どこか清々しさもある。


(今年こそ……頼むよ、神様……)


 昼前、神社の鳥居前で結月と合流。彼女は髪を下ろした可愛いコート姿でにっこり微笑んでくる。


「あけましておめでとう、美玲ちゃん!」

「おめでとう、今年もよろしく……!」


 神社の境内はそこそこ人が多く、参道には出店がちらほら。おみくじを買う人や、甘酒を飲む人などで活気づいている。


「わぁ、いいねー、初詣って感じがする!」

 結月が目を輝かせて周りを見回す。

 二人で列に並んで二礼二拍手一礼の作法をこなす。心の中でそっと呟く。


「……どうか今年は普通に楽しく過ごせますように……動物騒動とか、変な事件とか、あんまり起きませんように……」


 そうしっかり願掛けしたあとで、結月のほうを見ると、彼女はまぶしい笑顔で笑うのだ。


「今年もみんなでいっぱい遊ぼうね!」

彼女の笑顔に俺もつられて頬を緩める。

「うん、ありがとう……」


 参拝を終えて境内をぶらぶらしていると、唐突に白装束っぽい着物を着た宮司らしき人が近づいてくる。初老の男性で、神妙な目をしてこっちを見ている。

「あの……?」

 結月が戸惑うと、宮司は低い声で言う。

「あなたたち……特にそちらの少女」

 そう、俺を指差して言う。

「かなり数奇な運命を背負っているようだ。強い厄が取り憑いているかもしれない……」


 一瞬、俺は背筋が凍る。結月も「え!? な、何それ……?」と動揺。宮司さんは真剣な面持ちで忠告してくる。


「もしよければ御祓いを受けていきなさい。このままだと大変なことになるかもしれない」


「ま、まじ……?」

 結月も不安そうに僕の腕を掴む。俺も「確かにトラブルが絶えないが……本当に厄なの?」と思いながら結月に提案する。


「せっかくだし、御祓いくらい受けとく?」

「じゃ、お願いします……」

二人で社務所の奥へ連れて行かれることに。


 社務所の奥は薄暗い部屋になっていて、神具やお札などが並んでいる。


「ここで簡単な御祓いをしましょう」


宮司が言い、清めの鈴や御幣を準備し始める。

「ドキドキする……」

結月が小声でささやき、俺も手汗が出ている。


「では始めます……」


 鈴がチリン……と鳴り、祝詞のようなものが唱えられる。その神秘的な音声に、結月も俺も固唾を飲んで耳を澄ます。確かに不思議な空気を感じる……

 だが、途中で突然宮司が片膝をガクッとついて倒れそうになる。


「え、ええっ!」

 驚く結月。

「ま、まさか私の悪霊的な何かが発動したの!?」

と恐怖に駆られるが、宮司は苦しそうに「ああ……」と言いながら、


「き、昨日の二日酔いで……うっぷ……吐きそう……」


「はぁ!?」

 俺たちは顔を見合わせる。

「二日酔い……悪霊とかじゃなくて?」

 結月も呆然としている。


 宮司は一応立ち直って「だ、大丈夫……続けます……」とヨロヨロ立ち上がる。せっかく神秘的だった空気が台無しというか……。

「何だよもう……!」

結月は肩を落とし、俺も心配になる。

「この人、逆に大丈夫なの……?」


 再び祝詞を読み始めた宮司だが、今度は喉を押さえてゴホゴホと咳き込み、ぽたっと赤い液体が垂れる。

「ぎゃあ! は、吐血!? やっぱり悪霊がいるの!」

 結月が絶叫しそうになるが、宮司は苦しそうに首を振る。


「ち、ちがう……酒を飲みすぎて喉を傷めて……血が出ただけで……」

「また酒かよ!!」

 ツッコミを入れる俺と結月。神聖な御祓いムードとは真逆の、何かだらしないおじさんが二日酔いで調子を崩している図が展開されている。


(この人、ホントに大丈夫なのかな……)


 宮司は必死に「御祓いを……」と頑張ろうとするが、もう声がガラガラで祝詞が全然はっきりしない。「とりあえず休んでくださいよ……」

「い、いえ……あなたたちには強い厄が……」

 宮司は意地を張って動こうとする。

 結果、宮司は「もう……無理……」とグッタリ床に倒れ込み、完全に意識が飛びかけてしまう。結月が慌てて背中をさすり、俺は周囲を見回し「すみません! 誰か!」と声を張り上げる。神社の関係者が駆けつけ、宮司を別室に運び、結局御祓いはうやむやのまま終わってしまう。


「なんなのこれ……悪霊関係ないじゃん、単なる酒飲み過ぎでアウトじゃないですか……」


 結月が疲れた顔でため息。

「せっかく御祓い受けようとしたのにね……帰ろうか」

確かに、これじゃ効果も期待できないし、むしろこっちが体調を心配しちゃうよ。

 こうして、厳かな神社での御祓い体験は、二日酔いの宮司が倒れたことで終了。俺と結月は「何だったの、今の……」とどんよりした気分で神社を後にする。


「あ、よかったらおみくじどうぞ」

社務所を出た後、巫女さんに声をかけられる。

「あ、せっかくだし引いとこっか」

「そうだね、御祓いは失敗したし、おみくじぐらいなら……」


 二人で並んで筒を振り、出てきた番号のおみくじを受け取る。結月が先に開封して大喜び。

「やった、大吉だ!今年も絶対いい年になるよね!」

 キラキラした笑顔で言っている。

 しかし俺の方を確認したら……


「え、大凶……!?ウソ……そんな……」

 情けない声が漏れる。ていうか、大凶のおみくじって正月に入れてあるのか?

 大凶のおみくじには「何事も困難。動物との縁多し、邪魔されがちなり」みたいな不可思議な文言まで書いてあって、背筋が凍る。


(動物多し……やっぱりか……)


「ええー、美玲ちゃん可哀想……え? 動物との縁多し? あ、あはは……リアルだね……」

 苦笑しながら背中をさすってくれる。でも、俺はもう脱力感が半端ない。


「今年も普通に暮らしたいと思ったのに……やっぱ無理かな……大凶って……。御祓いも失敗したし……」

 肩を落として落ち込む俺。

「だ、大丈夫だよ。凶を引いても結局は努力次第で変わるって……」

 結月は必死に慰めるが、実際に動物トラブルが多いだけに、説得力が薄い感じ。


 結局、正月早々大凶を引いてしまい、先が思いやられる……と心の中でつぶやく俺。

「まぁ、悪いことばっかりじゃないし、あんまり気にしない方がいいよ!」

 結月が笑いながら励ましてくれるが、このまま普通に過ごせるかどうか、はなはだ疑問だ。


「……今年もたくさんのトラブルに巻き込まれるかもしれないけど、なんとか乗り切るしかないかな……」


 弱々しく笑う俺。こうして、「普通に生きたい」という小さな願いは望みが薄そうな状態で、新しい一年が幕を開けるのだった。

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