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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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60.大掃除と終業式

 冬休み目前のHRで、担任の小早川先生が声を張り上げる。


「みんな、今週は教室の大掃除を徹底的にやるぞ!」


クラス全体が「うへぇ」という感じでため息をつく。もちろん俺もその一人だ。


 しかし、学期末に大掃除をやるのは恒例行事。教室中の机やロッカー、床や窓、黒板の隅々まで綺麗にしよう、というわけだ。みんなで分担表が書き出され、「ガラス拭き」「床磨き」「机移動」などがずらり。俺も自然に参加するつもり……だったのだが、このクラスでの扱いを忘れていた。


「えっと、美玲ちゃんは……掃除、しないでいいんじゃない?」

 不意にクラスメイトの一人がそんなことを言い出し、周囲が「あ、確かに」「美玲ちゃんがやると何か起きそう……」とヒソヒソ。


「ちょ、ちょっと待ってよ! なんで私だけ参加できないの!」

 思わず声を上げる。すると結月までもすまなそうに言う。

「ご、ごめんね? でもさ、これまで動物騒ぎとか色々あったから、みんな心配してるの……」


「いやいや、掃除くらい普通にできるよ!」

 強く主張する俺。でもクラスメイトたちが口々に「ちょっと怖いかも……」「万が一大事故に繋がったら困るし……」とオドオド。

 結局、先生までもが同調し始める。

「まぁ……藤堂は隅で休んでていいぞ」

 俺はちょっと納得しつつも、憤慨するしかなかった。


(まったく、言いたいことはわかるけど、なんて失礼な……!)


 クラスは大掃除ムード全開。男子が重い机やロッカーを動かし、女子が雑巾で床を拭いたり窓を磨いたりと大忙し。

「どいてー!」「バケツ持ってくる!」と元気よく走り回る姿があちこちに見える。

 俺はというと、「本当にやることないの?」と何度も確認したが、周りの「美玲ちゃんは大丈夫だから見てて」「寝てていいよ!」という冷たい(?)対応に阻まれた。


「うう……本当に私だけ仲間外れみたい……」

「ごめんね、ほんと……でもみんな不安がってるんだ……」

 結月も心苦しそうだ。


 仕方なく教室の隅で腕組みしながらみんなの掃除を眺める形に。


 でも時間が経つと、ただ見守るのもつまらなくなる。

「せめて自分の机くらいは拭きたいし、勉強道具を整理したい……」

 我慢できずに立ち上がる。


(これくらい大丈夫でしょ……机の脚が折れるわけもないし)


 ポツリと呟きながら布巾を手に取り、そっと自席の机を拭き始める。周囲のクラスメイトも最初は「美玲ちゃんが動いてる……」とビクビクしているが、机ひとつくらい大丈夫だろうと無言で見守っている感じ。


「ふぅ……ちょっと汚れてたね……」

 少し達成感を覚える俺。ほらね、何も起こらないじゃん。みんな神経質すぎ……と思った矢先――


 不意に「ミシミシッ」という嫌な音が聞こえ、俺が使っている鉄脚の机が「バキッ」と折れていくではないか。


「ちょ、嘘でしょ!? これ鉄製なのに!?」


 驚く暇もなく、ガタンという音と共に俺の机が隣の机に倒れかかる。

 それがきっかけで「ドドドドド……」と隣の机が次々連鎖反応を起こし、クラスの机が一直線にドミノ倒しに! 「わあああああああ!?」と複数のクラスメイトが叫ぶが止めようもない。

 最終的に教室後方まで並んでいた机がすべて「ガシャーン!ガタン!」と雪崩のようにひっくり返る形になり、床に転がる机天国。


「な、なんで……」

 

 俺は唖然と固まるしかない。


 その衝撃と悲鳴でパニックになったのか、バケツを持って床を拭いていたクラスメイトの女の子が「え、ええっ!?」と驚きのあまりバケツを手放してしまう。すると水が床にバシャァとこぼれ、床一面がビシャビシャ。

 さらに、それを踏んでツルッと滑った男の子が「うわ、あぶなっ!」と手に持った箒を勢いよく振り回し、なんと天井にガツンと当ててしまう。「ガン!」という衝撃が走り、天井の一部に設置されていたスプリンクラーが作動スイッチを誤って捉える形に。


「ひゃあああ!?」

「わ、水が降ってくる!?」

「スプリンクラーだぁ!」


 天井から大量の水がシャワーのように噴き出し、一瞬にして教室はプチ洪水状態。机は倒れまくってるし、濡れた床でさらに滑る生徒も続出し、大混乱そのもの。まるで俺たちが水遊びをしてるかのような大惨事だ。


「ちょ、どうすんのこの有様……!」

「机が全部倒れてるって初めて見た……」

「……こ、これも美玲ちゃんが机を拭いたせいか……?」

 クラスメイトの一人がポロリと発言する。すると周囲の視線が一斉に俺に向くじゃないか。


「いやいや、そんな理不尽な!」


 クラスメイトは「あの机の脚が折れたのが原因だし……」「きっと美玲ちゃんが拭いたから……」と囁き合う。

「ごめん、美玲ちゃん……でも、見事なドミノ倒しだったね」

 結月もなぜか申し訳なさそうに言う。俺はもう反論しきれず、頭を下げるしかなかった。


「ご……ごめん……」


 結果的に全て破壊的にやらかした形になってしまった事実は変わらない。


「気にすんな、脚が折れるなんて誰も思わんって!」

 翔が肩をたたいて慰めてくれる。


 そこに担任の小早川先生がやってきて、仰天する。

「な、なんだこの水浸しは!? 大掃除するはずがカオスじゃないか!」


 結局、先生も呆れ顔でため息つきつつ頭を抱える。

「もう残り時間ないからここまで! 明日には業者呼ぶしかないか……」

 大掃除するつもりが二次災害で余計散らかったという最悪の結末だ。


(まじでごめん……なんでこんな災難体質なんだろう……やっぱり呪われてるのかな?……御祓いが必要かな?)

 俺は心中で繰り返し詫びながら、水浸しの教室を後にするしかなかった。


(それにしても……なんだかトラブル自体もパワーアップしてない?)


――――


 大掃除失敗のまま、翌日行われた終業式。体育館では失踪常習の校長が珍しく登壇して延々話した後、クラスに戻って学級活動を少し。

 昨日の惨事を引きずって、教室はまだ床が半乾きで机は一部歪んだまま。

「業者がなんとか直してくれる」と先生は言っていたが、もう俺たちは冬休み突入。


「はぁ、色々あったけど冬休みだねー。美玲ちゃん、翔とか西園寺さんたちとも遊ぼうよ!」

結月が元気に声をかけてくる。

「いいじゃん。なんかクリスマス会とか面白かったし。今度は正月? それともスキー?」

翔も乗り気だ。俺は苦笑いで同意する。


(また何か巻き込まれそうだけど……まぁいいや、楽しそうだし)


 クラスメイトに「じゃあ皆さん良いお年を!」と挨拶する。俺は心の中で「来年こそは普通に……普通に過ごせるといいな……」と神頼みをするのだった。

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