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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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55.修学旅行―2日目②

「ふぅ、やっと落ち着いた……」

 そう嘆く俺の声を背に、クラスの班メンバーたちは次の行き先を検討していた。金閣寺で放火未遂を阻止するという、とんでもないトラブルに巻き込まれたものの、何とか大事には至らず済んだ。

 昼前の時間帯を過ぎ、結月や翔も少し疲れ顔だが、まだまだ修学旅行の熱気に浮かれ気味。


「次は平安神宮に行こうよ! せっかくだし、あの大鳥居を拝みに行きたい!」

 結月が意欲満々で分厚いしおりを取り出す。あの辞典のようなしおりには「平安神宮」についても詳細な記述があるらしい。

「じゃあ、とりあえずバスで移動して平安神宮か。お昼ご飯は途中で食べようね!」と結月が仕切る。今回の班はわりとノリノリだし、俺も「いいね、行こう」と賛同。

 ところが、俺たちの運命はこの先とんでもなく迷走することになろうとは――


 バス停から電車に乗り継ぐルートを試みた俺たち。だが、市バスとJRが複雑に絡み合う京都の路線を前に、ちょっとしたミスが重なってしまう。

「この電車でいいんだよね?」とか「いや、どっち方向?」とか、班員たちがスマホを見ながらゴチャゴチャ言っているうちに、平安神宮とまったく関係ない方向の電車に乗ってしまうのだ。


 さらに追い打ちをかけるように、全員金閣寺の事件で疲労しきっていたので、車内でぐっすり寝てしまう。

「……Zzz……」

 結月までもがしおりを抱えたまま寝息を立てている。俺も翔も連日の動物騒動に体力を消耗していて、座席でダウンしてしまう。


――――


 何十分たったか分からないが、車内放送が耳に入り、「次は~敦賀、敦賀……」とアナウンスが聞こえる。

「え? 敦賀……?」

 俺が目を覚まし、隣の結月を揺さぶる。

「ねぇ、敦賀って……京都じゃなくない!?」

 驚いてスマホを見ると、どうやら敦賀は福井県にあるらしい。京都を完全に出てるじゃん……。なんという乗り間違い&寝過ごしのコンボだ。


「えぇーーー!? 私たち、平安神宮じゃなくて敦賀!?」

 結月が青ざめた顔で叫ぶ。翔も眠そうに目をこすり、「え、何が起こったの?」と呆然。ほかの班員も「まじかよ……」と脱力する。


 電車は止まり、ドアが開く。そこが終点らしく、車掌に「すみません、これどこ……?」と聞くと、「敦賀駅です」と淡々と答えられた。もうショックで言葉が出ない。


 ホームに降りると、周辺は想定していた京都市内の街並みと違い、閑散としている。敦賀駅周辺もそこそこ栄えているはずだが、観光地としてピンと来る場所ではないらしく、クラスメイトが「何もない」などと失礼なことをぼそり。

「せっかくしおりで予習したのに……ここは想定外だよ! 平安神宮のページをこんなに作り込んだのに……」

 結月はしおりの分厚い束を抱えて半泣き状態。


「まぁ……せっかく来ちゃったんだし、何かできることを探そう……」

俺が提案するも、「ここでどう楽しむ……?」と班員が首を捻る。

 そこで翔がぽつりと思いつく。

「敦賀といえば海の幸有名じゃね? カニとか……」

すると他の連中も急に活気づく。

「あ、そうか、北陸だし海鮮うまいんじゃない?」


「このまま何もせず帰るのも悔しいし、カニ食べようぜ!」と誰かが声を上げ、結月も「それ、いいかも……へへ、カニ!」と乗り気。

(もう何でもいいや……とりあえず昼ご飯でも兼ねてカニ食ってから戻るか……)


 さっそく駅前で情報収集すると、「このへんにカニ料理店が何軒かある」という情報をキャッチし、みんなで徒歩数分の店へ。そこは観光客向けなのか大きな看板が出ていて、地元の海鮮が売りらしい。


 店に入ると、女将さんが「あら、学生さん? 修学旅行?」と驚いている。「ま、まぁ……間違って来ちゃったんですけど、カニ食べたいです!」と正直に言うと「あらあら」と苦笑しつつ案内してくれた。


 メニューを開くと、ずらりと並ぶカニのコース。「カニしゃぶ」「カニ鍋」「カニ刺し」「焼きガニ」などなど。

「わぁ……どれも美味しそうだけど、財布が……」と誰かが心配する。

「もういい! 京都来るはずが福井なんだから、これくらい贅沢しよ!」

 結月は開き直ってる。


――――


「やばい、カニ鍋っておいしそう……あ、カニ味噌も……!」

「オレ、カニ刺し一回食べてみたかったんだよな……!」

「このコース頼むか! でも金足りる?」

「割り勘すれば何とかなるよ!」


「わー! すごい香り……!」

「うまーーー!」


「これさ、修学旅行って感じじゃないよね……ちょっと豪華すぎ?」

「まあ、いつも動物に邪魔されて苦労する美玲ちゃんへのご褒美かも?」

「いや……それはどうかな……でもおいしい! 最高!」


――――


 こうして一瞬にして鍋は空に。さらに焼きガニやカニ味噌も堪能。なんだかんだで満腹になり、みんな笑顔が弾ける。

 食べ終わったあと、結月は少し表情を曇らせる。「……それにしてもさ、私、平安神宮のページをばっちり読み込んだのに……こんなところに来ちゃったなんて……」

 分厚いしおりをペラペラめくりながら、「平安神宮の歴史とか、大鳥居の写真とか、全部書いたのに……」と悔しがっている。

「まあ、次の機会があるかもだし……今日のカニは最高だったじゃん。貴重な体験じゃない?」

と、フォローする。

「うん……美味しかったけど……やっぱり悔しい!」

結月が唇を尖らせて、まわりは苦笑するのだった。


 そうこうしているうちに時計を見たらいい時間になっていた。

「やばい、もう戻らないと……」

 自由行動が終わる前に宿泊施設のある京都市内へ戻る必要があるが、ここは福井県敦賀……。

「え、京都までどれくらいかかる? 下手したら集合時間に遅れる……」

 みんな焦って駅に戻り、急いで京都方面へ向かう電車に乗る。今度は寝落ちしないよう必死に目をこすって耐える。そのかいあって無事に京都駅へ帰還、そこからまた宿舎方面へバスを乗り継ぎ……結局、到着はほんの数分前でギリギリ。

 宿舎のロビーに着くと、ちょうど先生が「さて、点呼するぞー。」と声を張り上げる。俺たちも名乗りを上げ、合流するのだった。


「どうだった? 伏見稲荷とか平安神宮回れたか?」

 担任がにこやかに聞いてくる。

「えっと、平安神宮は行けなくて……代わりに敦賀に行っちゃったんですよ……」

俺たちは申し訳なさそうに報告する。

「はぁ!? 敦賀!? なんでそんな北陸行ってんの!?」

 と目を丸くし、それから大爆笑を始める。


「おまえら……マジかよ……いや、確かに京都から乗り間違えると行けるけど、修学旅行で敦賀って……!」と腹を抱えて笑い転げる始末。

 周囲のクラスメイトも「なにやってんだ……」「モンスター級に方向音痴?」と呆れつつも笑顔。


 結月は恥ずかしそうに「せっかくしおりを読み込んだのに……」と肩を落とす。翔が「カニはうまかったけどな」と付け加えると、先生も余計に吹き出す。「どんだけ自由行動なんだ、おまえら……」とあきれ顔。


(笑ってくれるならいいか……)


 俺も気まずい半面、なんだかホッとする。先生が「無事に帰ってきたならオールオッケーだ。お前ららしくていいじゃん」と締めくくり、爆笑のうちに解散。

 2日目の自由行動はこうして幕を下ろしたのだ。

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