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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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54.修学旅行―2日目①

「ふぁぁ……もう朝か……」

 修学旅行の1日目を終えて、宿で迎えた朝。俺は布団の上で伸びをしながら目をこすり、部屋から出ると結月が「おはよう!」と満面の笑みで迎えてきた。いつもより元気そうだ。


「今日はどこ回る?朝ご飯食べながら話そうよ!」


 食堂で席に着くと、結月が机の上にドスッと分厚いしおりを置いて言う。

「今日は自由時間がけっこうあるし、できるだけ多くの場所を回りたいよね!」

翔が苦笑しながら指摘する。

「にしても、そのしおり、ほんとに持ち歩くんだ?」


 結月はしおりをめくりながら「伏見稲荷、二条城、金閣寺!」と興奮ぎみに語る。

「めっちゃ詰め込むね……でもまぁ、旅行だし行けるだけ行ってみようか」

 俺もその計画に賛同し、翔も「うん、面白そうじゃん。行こう行こう!」


 そうして朝食をさっさと平らげた俺たちは、班行動のメンバーに声をかけ、ガイドブック顔負けのしおりを手に京都巡りの2日目へ繰り出すことになる。


――――


 まずはバスや電車を乗り継ぎ、伏見稲荷大社へ。鳥居がずらりと連なる風景が有名で、外国人観光客にも大人気だ。

 境内に足を踏み入れると、まるで別世界のような神聖な空気に包まれる。参道には赤い千本鳥居がずっと伸びていて、観光客も多い。

 結月がさっそく「しおりの伏見稲荷ページ」を広げて解説を始める。


「伏見稲荷大社は、711年に創建されたともいわれ、五穀豊穣や商売繁盛の神様として広く信仰されてるの。あの狐は稲荷大神の使いって言われてて、ここには石の狐像がいっぱいあるんだよ!」

「千本鳥居っていう赤い鳥居が連続していて、とても幻想的。外国人観光客にも大人気なんだ! あと稲荷山全体が神域で、山頂まで行くとかなり体力使うけど景色もいいんだよね!」


 結月がその分厚いしおりを片手に、まるで講師のようにスラスラ解説。

(いや、よくそんな重い本持って歩けるな……)


 周りもちゃんと聞いていて「へぇー!」と感嘆。

 「さすが結月。やるじゃん!」と誰かが拍手するほどだ。


 そのまま千本鳥居をくぐる参拝コースに進んでいくと、「うわー本当に赤い鳥居がずっと続いてる!」と驚く声。俺も初めてしっかり見るし、なんだかワクワクする。

 しかし突然、数匹の狐らしき生き物が俺の周りをクルクルと回り始めた!


「え、えぇ……今度は狐?」

 思わず小さく呟く俺。狐たちは人慣れしているのか、まったく警戒心を持たずに俺の足元を円を描くように歩き回る。「キュン?」と控えめに鳴くのが可愛いけど、正直なぜ俺に……?


 周りの観光客が「おお、狐だ! 野生?」「伏見稲荷だから狐が出るのか……神の使いか!?」と写真をバシャバシャ撮りまくる。

 出入口までこの狐たちがグルグル回って同行してきて、参拝を終えるまで一緒に歩く形になる。

(今回の旅行は何かと動物に縁があるな……)


「美玲ちゃん、すごいね……もしかして神の使いに好かれてるんじゃ?」

 結月が楽しそうに写真を撮るが、俺は苦笑しながら「いや、勘弁してほしい……」と答えるのだった。


――――


 次なるスポットは二条城。歴史の教科書でもおなじみの場所であり、徳川家康が築城した名城で、二の丸御殿や唐門など見どころが多い。

 ここでも結月が分厚いしおりを参考に解説。

「ここは江戸時代の将軍が京都を訪問する際の拠点で、徳川幕府の政治シンボルだったんだって……」


「二条城といえば、大政奉還が行われた場所でも有名なんだよね!」

 結月が声を弾ませると、翔が「あれだろ、徳川慶喜が政治を朝廷に返上したやつ!」とのってくる。


 すると二人は急に「じゃあ大政奉還ごっこしようぜ!」と盛り上がり、「幕府を返上する!」「何を申すか!」みたいにポーズを取り合ってはしゃぎ出す。バカ丸出しだ。周りの観光客もクスクスと笑っている。

「周りの観光客に見られてるから……」と思いつつ、まぁ修学旅行だし楽しそうだしいいか、と俺は苦笑して見守る。


 「なんか修学旅行っぽい」と心が温かくなる。こういう素朴なバカ騒ぎこそ、青春の醍醐味だろう。


――――


 最後に訪れたのは金閣寺。これまた日本を代表する観光名所の一つ。眩しく輝くその外観が特徴だ。

 徒歩&バスで移動し、到着した金閣寺の正面で結月はしおりを開き解説。


「はい、金閣寺は正式名称を鹿苑寺と言って、足利義満の別荘を寺に改めたものなんだよ。外壁が金箔で覆われてて、国内外にとって有名だね!」

 「へぇー、こうやって改めて説明されると、なおさら眩しいね」と俺は感心する。ほんとに文字どおり金ピカ。


 翔も思わず「金閣寺って、昔、小説の題材で燃やされた事件があったんだよな……」などと歴史を思い出す。昭和期の放火事件だ。


 ところが、庭園を回りつつ金閣の輝きを見上げていると、視界の隅で不審者らしき人影が何かに火をつけようとしているのが見えるじゃないか。

「あれ……なんか、火のついた棒みたいなものを……金閣に向かってかざしてない?」

 結月が小声で指差す。そこには、怪しげな服装の男がライターで棒をあぶり、金閣寺の壁(手が届く範囲)に近づけようとしている。


「おいおい、本当に燃やす気かよ!?」

 翔が驚愕の声を上げる。周りの観光客はまだ気づいていない様子。俺たちの班メンバーも「やばい、止めなきゃ!」と急いで駆け寄る。


 なんとか男の腕を掴んで「何やってるんですか!?」と問いただすと、男は狂気染みた目で「金閣を……真の美に昇華するには焼くしかない……!」と意味不明なことを言っている。

 「そんな勝手なことするな!」と班メンバー数人が力ずくで火を消し、ライターや棒を取り上げる。幸い、金閣に火がつく前に阻止できたので大事には至らない。


 観光客が騒ぎ出し、寺のスタッフらも駆け寄ってくる。俺たちも慌てて「この人、放火しようとしてました!」と報告する。スタッフがすぐに通報し、結果、その男は警備員に連れ去られる形となった。

「はぁ……危なかった……」と胸をなでおろす俺。結月と翔も青ざめた顔で「まさか本当に燃やそうとする奴がいるなんて……」と唖然。


(いつも物騒な事件に巻き込まれるけど、今回は割と大きめじゃないか……? でも何とか止められてよかった……)


 金閣寺のスタッフにも感謝され、クラスメイトは「さすが俺たちの班!」みたいに盛り上がっているけれど、疲労感が拭えないイベントであった。

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