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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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52.修学旅行―到着・清水寺

「……やっと着いたー!」

 新幹線がホームに止まり、クラス全員がワイワイと通路へ出始める。俺と結月、そして翔の班も荷物を抱えながら席を立ち、乗り口へ移動。朝に起きた『黒猫無賃乗車事件』のこともなんとか隠しつつ、何事もなく京都に到着できたはず、と思いきや。


「え、ちょ、ちょっと待って!」

 俺が慌てて声を上げたのは、まさにホームへ降りた直後。持っていた紙袋からあの黒猫が「にゃー」と飛び出してしまったのだ。

 隣には結月が「あっ……」と口を押さえて青ざめている。


 無賃乗車疑惑が確定する前に阻止したかったのに、猫は俺たちが止める暇もなくホームの柱のあたりへダッシュ。そしてそこには、数匹の黒猫が待ち構えていたらしく、にゃーにゃーとコミュニケーションした後、何やら集団でスタスタ歩いてどこかへ消えていく。


「え……今の何!?」

 クラスメイトの前で大きな声を上げるわけにもいかず、結月と顔を見合わせる。黒猫の群れはあっという間に広いホームの奥へ行き、車線には降りずに駅施設の裏っぽい所へ姿を消した。


 しかし、この光景をバッチリ目撃した人がいた。――担任・小早川先生だ。

「おい、藤堂……今の黒猫は何だ? お前がまた何かやらかしたのか?」

 ギロリと睨まれ、俺は焦る。どう言えばいいんだ。


「え、えーと……猫も無賃乗車で観光ですかね……」

 自分でもわけわからない返事をしてしまう。「…観光?」と先生は呆れ顔で眉をひそめるが、怒りというより混乱気味。


 周囲の生徒が「また美玲ちゃんが猫を呼んだ……?」「さすがに駅に猫はマズいでしょ」などと囁いている。


(理不尽すぎない? 猫が勝手に潜り込んだだけだってば…… 駅弁も食べられるし……)


 反論したいが、口に出せず下を向く。

 先生は「ま、まぁいい……」とため息まじりに視線を逸らた。見て見ぬふりをするようだ。

「さっさと改札出て集合場所に行くよ!」

 どうやらこれで追及はうやむやになったようだ。


 ホームを奥へ進むと、今度は妙な連中が視界に入る。着ぐるみを着た10人ほどのグループが、「ウェルカム京都!」みたいな看板を持って手を振っているではないか。


「わあ、すごい! かわいいマスコット~!」

 クラスメイトの女子たちが大興奮。結月も「京都のゆるキャラとかかな? さすが京都、ホスピタリティあるね!」と無邪気に笑う。

(なんか嫌な予感がするけど……)

 俺は一歩引き気味。そもそも公式っぽいマスコットなら、もう少しクオリティが統一されているはず。だが、あの着ぐるみはバラバラで統一感がなく、中には妙にリアルな虎や怪しい狐の着ぐるみも混ざっている。


 しかし周囲は気にせず「写真撮ろう!」と盛り上がり、俺たちも流れで一緒に記念撮影を行う。着ぐるみ一団も手を振ってポーズしてくれる。

 「わぁ、なんか親切じゃん!」と誰かが声を上げ、みんなニコニコ。俺と結月と翔も仕方なく笑顔で写ることに。


 「ありがとうね~!」などと手を振って別れ際、着ぐるみたちは無言のままお辞儀していた。何となくコミュニケーションが噛み合わない……これは本当に公式マスコットだろうか……?


 写真撮影を終え、クラスが集合して改札へ向かうと、駅員の怒号が聞こえる。

「駅のホームで着ぐるみ姿の不審者が数人いるぞ! 早く保安官呼んで!」


 みんなが「え、あれ公式じゃなかったの!?」とザワザワ。結月も「え……違ったんだ……」と青ざめる顔。

 担任が慌てて「点呼! 点呼!」と声をかけ、全員を集めて確認。「誰も着ぐるみ連中に連れ去られてはいないな……?」などと妙なチェックを始める。


 先生が俺に目を向けて「藤堂、またおまえが変な連中を呼んだのか?」みたいな表情。

(何なの、この疑い…… さすがに何もしてないよ!)


 改札を抜け、駅前広場に出ると貸し切りバスが待っていて、クラス全員で乗り込む。担任が再度点呼して「よし、全員揃った!」と宣言すると、バスが出発。

 約30分ほどバスに揺られ、旅館に到着。ここが2泊する宿泊施設になる。昔ながらの和風旅館を貸し切っているらしく、畳の香りが落ち着く。

 クラスメイトたちは「うわー、広い!」「部屋割りどうなるんだっけ?」とワイワイ。


「はぁ……やっと荷物降ろせる……」

 俺は大きなリュックやら紙袋やらを部屋の隅に置き、ふぅと息をつく。やっと腰を下ろせると思ったら、結月がニコリと微笑んで声をかける。


「美玲ちゃん、一緒に売店見てみようよ! ちょっと時間あるし!」

「え、うん、そうだね……」

 俺も断る理由はない。とはいえ、あの黒猫の呪いとか着ぐるみ集団とか思い返すと、まだまだ油断できない気もする。この後は京都を観光する予定だけど、この調子じゃ何が起こるやら……。


(もう、駅に着いただけでこの騒ぎだもんな……先が思いやられるよ……)


――――


 修学旅行1日目の夕方、俺たちの班は他クラスの仲間と合流しながら清水寺へ向かった。京都駅近くで宿泊先に荷物を置いた後、軽く休憩してからバスで移動する形だ。

 結月や翔は地図を片手に「ここが清水の舞台だよね! 高い場所にあるんだ!」とワクワク顔。俺も、何度か写真で見たことはあるけれど、実際に足を運ぶのは前世の記憶含めても初めてなので楽しみ。


「美玲ちゃん! あの舞台からの景色って絶景らしいよ!」

 結月は隣でキラキラしながらこちらに話しかける。班のメンバーは俺・結月・翔のほか、数名のクラスメイトがいて、雑談しつつバスに揺られる。

「うん……楽しみだよね……!」


 やがてバスが清水寺の最寄りバス停に着き、観光客で賑わう通りをみんなで歩く。土産物屋やお菓子の試食、抹茶のソフトクリームなど誘惑が多い。だが、まずは本殿のほうへ進むのが王道として、興奮に浸りつつ坂道を上った。


「わぁ……!」

 結月やクラスメイトたちは思わず歓声を上げる。清水寺の境内を進むと、観光客も多く、夕方のやや赤みがかった光に包まれた古い木造建築が独特の風情を醸し出している。

 翔も「あれが舞台か……確かに高いな……」と興味津々。俺も改めて見ると、「なるほど、こんな高所に舞台を張り出してるんだ」と感心する。


「せっかくだし、ここで写真撮ろうよ!」

 クラスメイトの一人が提案し、さっそく記念撮影を開始。舞台の上は人が多いので、なるべく端のほうでポーズを取る。背景には京都の街が見える。俺は心の中で思う。

(ああ、こういうのが修学旅行って感じだよね……。さっきの駅猫とか、もう忘れよう……)


 ところが、そのタイミングで「にゃー……」という聞き慣れた声が聞こえた。振り向くと、黒い猫が1匹、舞台の端の欄干にちょこんと座っているのが目に入る。

「え、猫? こんな高い場所に?」

クラスメイトが驚く。しかし、さらに恐ろしいのはそいつだけではない。「にゃー」「にゃぁー」「にゃにゃ」と連鎖する声が響き、あちこちから数十匹の黒猫が舞台に姿を現すではないか。


「おいおいおい……!」

 翔が唖然と立ち尽くす。結月も驚いて「また黒猫……!」と小声で呟く。

(もうやめて……何でここにも来るんだ……!)


 観光客も「わぁ、珍しい!」「こんなに猫が……清水寺なのに?」などと騒ぎ始める。そして猫たちは何を思ったか、舞台の欄干から次々にぴょこっと外へ飛び降りていくのだ。


「ちょっ、待って……猫が飛び降り……清水の舞台から!?」

 周囲がざわめき、カメラやスマホを取り出す観光客が続出。多くの人が「清水の舞台から猫が飛ぶって……」と興奮して写真を撮りまくっている。

 俺は「あ、危ない!下どうなってるの……?」とヒヤヒヤするが、猫たちは器用に下の木々や岩を避けながら姿を消していく。まるで念入りに測ったような落下ルートで、怪我なんてしないかのようだ。


(なんなんだ、この光景……京都観光してる猫たち……?)


 そっと見ると、1匹の猫が途中で振り返り、「にゃー?」という顔で俺のほうを見てくる。まるで「お前も飛べよ」と誘うかのようだ。

「や、やめてよ……私は飛ばないから!」

 内心でツッコミを入れつつ手を振ると、その猫は「にゃっ」と一声残して、下へと消えていった。なんか妙にアクティブな猫だな……。


 観光客は口々に「猫が観光してるんだね」とか「おもしろい写真撮れた!」と喜んでいるし、クラスメイトたちも「こ、これSNSにあげよう……」とか言って盛り上がる。

 俺はなんとも言えない顔で、「早速観光を楽しんでいるようですね、猫さんたち……」と呟くしかなかった。

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