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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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50.修学旅行に行こう!

「はい、みんな、次の行事について大事なお知らせがあるぞ」

 朝のホームルームで、担任の小早川先生が声を張り上げた。クラスの空気が「ん?」と注目する中で、先生は「来月に修学旅行があります。行き先は京都です!」と宣言。

 それを聞いた瞬間、教室中が大歓声に包まれる。


「うわー、京都だって! マジか、楽しみ!」

「京都といえばお寺とか神社とか、抹茶スイーツとか!」

 そんなザワザワと弾む声に、俺も思わず笑みがこぼれる。修学旅行といえば学生時代のビッグイベント。ましてや京都なんて王道中の王道だし、どうせなら存分に楽しみたい。


 隣の席で結月が目を輝かせながら話しかけてきた。

「ねぇ美玲ちゃん、修学旅行だってよ、京都! やばい、私、行ったことないんだよね! めちゃくちゃ楽しみなんだけど!」

「私も1回しか行ったことないかも。でもワクワクするよね」

(いや、正直この身体になってからは初めて行く京都だから、ちょっと勝手が違うかもしれないけど……ともあれ、楽しいはず!)


 先生は「今回は生徒の自主性を高めるためにしおりを自分たちで作ってみてはどうか」というアイデアを打ち出した。ふつうは学校側が既製品のしおりを用意するものだが、どうやら先生が「自由に行動計画を立て、魅力ある旅程を作ってほしい」という狙いらしい。


 この瞬間、意外なほどクラスのテンションが上がる。

「いいじゃん! 自分たちで作ったほうが楽しいよ!」

「京都のどこに行くかも自由に決めていいの?」

 先生は「もちろん、注意事項は守ってね。あとは自由に!」と微笑んだが、その一言がクラスメイトたちの創作意欲に火をつけてしまうとは思いもしなかった。


「私、あの伏見稲荷大社とか行きたい! たくさん写真撮りたいし!」

「いやいや、清水寺の舞台からの景色でしょ! 絶対外せない!」

「金閣寺とか銀閣寺も入れなきゃ!」

「鴨川でまったりして抹茶パフェ食べたいー!」

 皆が好き勝手に「ここ行きたい! あそこも!」と声を上げ、気づけばあっという間にリストが膨れ上がる。


(ん? これ、大丈夫か……?)


 俺は若干不安になりながらも、せっかくの自由度が高いプランなら、ま、いいかと楽観視していた。まさかこんな大事になるとは思わなかったのだ。


 放課後、学級委員が音頭を取り、みんなで集まって「修学旅行しおり会議」を開く。目的は「みんなの希望を反映した旅程や注意事項、観光情報などをまとめる」こと。

 しかし開始早々、収拾がつかないほど意見が噴出した。


「鴨川沿いのおすすめ和菓子店の地図を載せたい!」

「京都駅周辺のラーメン激戦区も捨てがたいよね。ラーメンコーナー入れよう!」

「嵐山もいいでしょ? トロッコ列車の時刻表を載せたい!」

「祇園の花見小路にも行きたいし、舞妓体験の案内も載せなきゃ!」


 大盛り上がりで、「どうせなら世界遺産リストも全部網羅!」とか、「歴史背景の紹介ページも欲しい!」とか、もうなんでもあり。

 結月も「ねぇ、美玲ちゃん、抹茶スイーツの店特集ページ作ろうよ!」と嬉々として言っているし、まわりが「いいね!」と盛り上がる。


(これ……どれくらいの量になるんだ?)


 皆がノリノリで原稿を書き始める。「この神社の写真と解説」「この寺の歴史」「お土産リスト」「夜の自主研修計画マップ」「和菓子図鑑」……正直に言って、まるでガイドブックを超えた怪物が生まれそうだ。

 学級委員が「パソコンで編集して印刷するね!」と引き受けてくれたが、眠らぬ予感がする。


 そして次の日の朝、登校すると、学級委員としおり作成メンバーが完全に目を充血させた状態で教室に現れた。手には分厚い束の紙。「しおり」らしい。

 クラス全員が「おおー!」と歓声を上げながら興味津々に見ると、500ページを超えるインパクトな厚み。


「な、なんだこれ……」

 俺は思わず本音が漏れる。

(しおりって普通は10ページ前後じゃないの? 辞書かな……?)

 学級委員は「ごめん、みんなの要望を全部載せたらこんなことに……」と苦笑い。写真も大量にあるから紙がどんどん増えたんだとか。


 クラスメイトたちは「これ…持ち運ぶのムリじゃね?」などとつぶやきつつ、みんな気に入ってるっぽい。結月も「すごーい! なんか本格的!」と目を輝かせる。俺は心の中で「どう考えてもやりすぎだろ」とツッコミを入れるが、ノリがよくて止められない。


 そんなわけで、超大作しおりを手に「班決め」タイム。普通は修学旅行の班構成は事前に話し合ったり、仲良しグループごとに組むことが多いが、うちのクラスはなぜか「誰が美玲と同じ班になるかで揉める」という事態が発生した。


「待って、私、美玲ちゃんといっしょがいい!」

「うちもー!」

「俺だって美玲と旅行回りたいんだけど!」

 一斉に何人もが主張し合い、カオスに陥る。理由を聞くと「美玲ちゃんがいればなんか楽しそうだから!」というふわっとした答えなのだ。

 周囲で「はげおじさんに追い回される借り物競争」とか「サーカスに巻き込まれる」とか、そんな過去のエピソードが噂されていて、「美玲がいれば何か面白いトラブルが起きて最高に盛り上がる」みたいな変な期待を抱かれているらしい。

「できれば普通に修学旅行を楽しみたいんですけど……!」と内心で震えるが、もはや引き返せない雰囲気で、教室が「俺が一緒!」「私が!」と大乱闘状態。


 クラスがざわつく中、担任の小早川先生が最終的に割って入ってきて、「はいはい、もういい、じゃあ美玲は翔と結月と同じ班な!」と強制的に収める形になった。

 すると他の生徒が「えー! 先生それズルイ!」と反発し、先生も「もうこれ以上揉めるな!」と声を張り上げる。結果、俺だけ何故か先生に怒られる羽目に。


「美玲、君がいつも変なことするからこんな騒動になるんでしょ!」

「いや……私、全然望んでないんですけど……」

 納得いかない表情を浮かべつつも口ごもる俺。先生は眉間にしわを寄せて「まったく……」と呟きながら、ちゃっちゃと班分け表をホワイトボードに書き始める。

(何この理不尽……)


 結局、「翔&結月&美玲」の3人を核に、あと数名が加わる班構成となり、一応クラス内の紛争は沈静化した。クラスメイトたちの一部は「ちぇっ……」と悔しがっていた。


 放課後、廊下で結月と並んで歩く。彼女はニコニコ顔で「わー、美玲ちゃんと同じ班だ! 嬉しい!」と無邪気に喜んでいる。翔もいつもの気怠そうな顔で「まぁ悪くないな」と苦笑している。

 一方で、俺は苦い笑みを浮かべる。


「なんか……張り切るのはいいけど、正直、超大作しおり500ページとか、大乱闘で班決めとか……このノリで修学旅行大丈夫かな……」

 内心でつぶやきながら、思わず深いため息。

(どうせ京都でも何かしら事件が起きるんだろう……)


 結月は「修学旅行楽しみだね! いっぱい観光しよう!」と言いながら、しおりの分厚い束を抱えている。まるで辞書。

 翔が「これ持ち運ぶとか無理くね?」とツッコむが、結月は「せっかくだし、全部読んでから行きたい!」と意気込む。


「ほんと、普通に楽しめるのか……」

 そんな疑問が胸に渦巻く。俺としては刺激的なトラブルはもう御免だが、クラスメイトたちのハイテンションを見ると、一波乱二波乱ありそうな雰囲気がプンプン漂っているのだった。

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