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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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44.文化祭―準備

「……よし、なんとか裏方に回れた……」


 そんな安堵のつぶやきが口をついて出た。そう、俺は先日のクラス会議の中で、『お化け演劇焼きそば喫茶』なる摩訶不思議な出し物が決定してしまい、「まさか自分が目立つ役をやらされるんじゃ……」とヒヤヒヤしていた。だが幸い裏方担当を引き受ける形で落ち着いた。

 なにしろ、舞台で演劇をする人や、お化け役、焼きそばを作る人、喫茶の接客をする人など人員が足りなくなるかと思いきや、意外と「やりたい!」という物好きが多く、俺にまで役が回らなかったのだ。


「よかったね、美玲ちゃん。ちゃんと裏方回れて」

 隣の結月がニコリと笑う。彼女は一応、喫茶担当としてウェイトレス? みたいな役割をやることになったみたいで、こっそり「接客で動くから運動になるはず」と狙っているっぽい。


 ともかく、俺は準備全般の手配係として、必要な用具や道具を集める仕事を任される。たとえば舞台セットの板や支柱、喫茶のテーブルクロスや食器、焼きそば用の鉄板やガスコンロなど。これが結構大仕事だ。

「まぁ、地味だけど安全そうだし、いいよね……」

 俺はそう自分に言い聞かせていた。大事件はもうたくさんだし、普通に文化祭を楽しみたい。


――――


 そんなある日、クラスの『お化け演劇焼きそば喫茶』用の買い出しリストを手に、俺と翔と結月の3人で商店街に行くことになった。鉄板やフライ返し、使い捨て食器とかを揃えたら今週の準備はおおむね完了だ。


「私、演劇の衣装は後日まとめて買いにいくし、今日はキッチン道具メインだよね」

 結月がリストを眺めながら先導する。翔は面倒くさそうに「重いものは俺が持つぞ」と言いながらやる気は少なめ。

 俺は「裏方でスムーズに準備するのが俺の役目だ!」と内心、自分を鼓舞。


 ところが、道具を一通り買い揃えて店を出たところ、突然話しかけてくる謎の人物がいた。


「おお、そこのあんちゃん、焼きそばの鉄板を買ったのかい?」

 見ると、むっちりした体型に白いタオルを頭に巻いた頑固親父。胸元には「鉄板焼店『浪花のソウルフード』」のロゴが小さく入ったエプロンをしている。


「なんでこんな場所に……誰?」と俺が怪訝に思うと、親父は力強く拳を握って言い放つ。

「俺は『焼きそば焼いて50年』の頑固親父だ! 文化祭の焼きそばなんて聞いたら黙ってらんねぇよ。俺も応援するぜ!」


「え、いえ、別にいいですよ……」

 断ろうとしたが、もう一人の人物が横から割って入ってきた。まるで執事風の服装の男性、そして胸元に「Tea Instructor of Japan」みたいなバッジが光っている。


「そして私が『日本有数のティーインストラクター』と呼ばれる者です。どうやら喫茶をするらしいですね? ぜひお手伝いさせていただきたい」

 その男はにこやかに微笑む。

「え、ちょっと待って……どこから湧いて出たんだ……」と翔が小声でツッコミを入れる。

「まじ誰だよ……」と俺も内心思う。


 なのに、二人とも「さあ、行こうじゃないか。文化祭の応援、最高だろ?」と意気揚々。俺たちにまとわりついて離れない。


(また変なのが増えた……これも運命か……)


 バタバタしつつ学校まで戻ってきた俺たち。鉄板やガスコンロ等を調理室に運び込むと、すでに焼きそば班のメンバー数名が待機していた。


 そこへ例の頑固親父が勢いよく乱入。

「おい、おまえら、焼きそばはな、麺の声を聞くんだよ!」

 神妙な表情で語り始める親父に、焼きそば班の面々が「え、麺の声……?」と困惑顔。でも親父の熱血オーラが凄まじいせいか、全員が思わず耳を傾けてしまう。


「鉄板の上で湯気をあげながら麺がどういう声を出してるか……ソースはどんなタイミングを求めてるか……それを感じられなきゃ、一人前のソース焼きそば職人とは言えねぇ!」


 なにそれ!? って思うが、周りは「へぇー!」とか「すごい……奥深い……」と目をキラキラさせている。いつのまにか親父の話に感動しているじゃないか。

 「麺の声とか何だよ……」と俺は内心で突っ込みながらも、焼きそば班はまるで弟子のように頷いているから止められない。


「美玲ちゃん、あの人ほんとにプロの焼きそば職人なの?」

 結月が耳打ちしてくるが、「知らないよ……」と俺は小声で答えるしかない。

 しかし、焼きそば班は親父の言葉に完全に魅了され、「鉄板の温度管理からソースの配分まで……目指せ最高の焼きそば……!」と一気に熱血モードに突入してしまった。


 さらに、隣の教室では喫茶班が紅茶や珈琲のテストをしていたところ、今度はあのティーインストラクターが「失礼するよ」と優雅に入室。


「喫茶をするなら、私の講義を聞くがいい。どんな甘いスイーツにも、どんなガッツリ麺類にも合うような紅茶を淹れるんだよ」


 彼の流麗な語り口に、喫茶班の生徒たちも「すごい……」と感嘆の声。早速ティーサーバーを使いながら、温度や抽出時間について実践しだすではないか。

「へぇー、こんなに温度管理が大事だったんだ!」

「紅茶の味がこんなに変わるなんて……! 深い……」


 もうみんな、すっかり先生のように慕って講義を受けてる。これまた「え、なんでこんなプロがいるの……??」と俺は頭を抱えるけれど、教室には感動のムードが漂い、「文化祭までに完璧な紅茶を出すぞ!」というやる気に満ち溢れてしまう。

 結月も「すごーい、私も飲みたい!」と目を輝かせている。


 さらに廊下の向こうでは、お化け演劇班のメンバーがソファを囲んでディスカッション中。俺は荷物を届けに行く途中、ちょっと様子を覗いてみた。


「焼きそばと紅茶があれだけ本気なんだから、俺たちも負けてられないよ!」

「斬新なお化け演劇を目指すんだ。ホラーテイストにとどまらず、新たな芸術性を……」


 会話の断片からすでに熱気がむんむん漂っている。どうやらお化けを「単なるびっくり要素」で終わらせたくないらしく、『お化けの生前の悲しみを描く』とか『面を使う演劇』とか、いろいろ盛り上がっている。


「おばけといえば日本文化だろ! 般若の面や無機質な面をつけて表現しよう!」

「いいね! じゃあ着物を用意しなきゃ。音楽も和風にして……」

「ついでに日本史の先生に資料を聞いてさ、時代考証に凝ってみようよ」

「うん、新しい形を作り出すんだ!」


 みんなで「おー!」と拳を突き上げる。何か燃えてる。正直、それはもう能に近いんじゃ……と内心思うが、「俺が言っても仕方ないな……」とスルーすることにした。


――――


 こうして各班が異常な盛り上がりを見せ、プロ(?)まで加わって超本格的な準備が進むなか、俺は裏方として道具や備品をせっせとチェックし、段取りを整えている。

 だが、正直いろいろ見ていると「どうなってしまうの……?」とハラハラが止まらない。


 焼きそば班は頑固親父の熱血指導で、「麺の声を聴け!」なんてスピリチュアルレベルまで行ってるし、喫茶班はティーインストラクターに「至高の紅茶哲学」を伝授されて目をキラキラさせつつ満足げ。

 お化け演劇班は「和風ホラー演劇」というか「能っぽいなにか」に発展しそう。

 これが本当にひとつの出し物として融合するのか? まったく想像ができない。


「うーん、楽しそうなのはいいんだけど……文化祭ってこんなだったっけ……?」

 俺は台本やメニュー表をチェックしながら、苦笑するしかなかった。クラスメイトたちが生き生きしているのは嬉しいけれど、俺の胃がキリキリしてくるレベルだ。

 心の中では「いや、頑張ってる方向がなんか違わない?」とツッコミたいところだが、波に逆らえない状況。


 クラスメイトからは「美玲ちゃん、すごい人を連れてきてくれてありがとう!」とか「あの人のおかげで、焼きそばの何たるかがわかったぜ」とかお礼を言われるが、正直、俺のせい(?)にしないでほしい。

 そんなことを思いつつ、俺は裏方作業に徹するのだった。

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