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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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43.文化祭ークラスの出し物

「……さて、みんな、今年の文化祭の日程が正式に決まったぞ。準備期間は限られてるが、しっかり盛り上げてくれよ!」


 ホームルームの最後、担任の小早川先生がそう言った瞬間、クラスにざわめきが広がった。夏休み明けで少しぼんやりしていた連中も、一気に目を輝かせる。俺も文化祭は楽しみな行事だ。


「もうそんな季節か……」

 心の中でそう呟くが、この身体になってから、なんだかいつもバタバタしているから、季節感をあまり味わえないままここまで来てしまった気がする。


「美玲ちゃん、美玲ちゃん! 文化祭、楽しみだね!」

 向かいの席から結月が身を乗り出して声を掛けてくる。「私、今年は絶対に思い出に残るイベントにしたいんだよね!」と目をキラキラさせながら。


(あれだけスイーツもバイトも大騒ぎしたあとでも、まだ元気なのか……すごいな、結月)


 俺は苦笑しつつも、内心ではわくわくを感じていた。文化祭って、クラス全員で何かをやる一体感が醍醐味だし、今回はどんな出し物になるのだろう。思わず、心が弾む。


 しばらくして朝のHRが終わったあと、クラスの学級委員が黒板に「文化祭の出し物を決めましょう!」と書き出した。早速、皆のテンションが上がる。


「はいはい、文化祭といえば定番の喫茶店でしょ!」

「それか劇がやりたいな~。演劇部じゃなくても楽しそうだし!」

「屋台みたいに焼きそばとか、たこ焼きとか出店したらウケるんじゃない?」

「いや、こわ~いお化け屋敷もやりたいよ!」


 どんどん意見が飛び交う。喫茶店と劇と屋台とお化け……それぞれ声が大きい派閥ができつつあって、黒板に書かれた案も「クラス喫茶」「お化け屋敷」「演劇」「屋台焼きそば」など多数。


「うーん、この中からどうやって決めようか……。投票?」

 学級委員が困り顔で提案したところ、「喫茶が絶対!」「劇がいい!」など激しい意見対立が起こり始める。


「絶対喫茶店だって! シフォンケーキ出したいし!」

「はぁ? 幻想的な劇で盛り上がったほうがいいだろ!」

「いやいや、文化祭は屋台で盛り上げるのが王道だって! 焼きそばが一番ウケる!」

「何言ってるの、ホラーテイストでお化け屋敷が一番刺激的で客が呼べるし!」


 意見が四分五裂して「うちの意見が採用されるべき!」みたいな空気になってきた。

 クラスメイトたちが次第に声を荒らげ、軽い言い合い状態に。これ以上いくと、険悪なムードになりそうな雰囲気だ。


(うわぁ……そろそろ誰かが仲裁しないと、面倒なことになるな……)


 学級委員もオロオロするばかり。隣で結月は「どうしよ……」と困惑の表情。

 そこで、俺は意を決して教室の中央に立ち、大きく両手を上げてみんなに声をかけた。


「み、みんな、ちょっと落ち着いて。話をちゃんと聞こうよ!」

 みんなの視線を受けて焦ったが、気にせず続ける。


「私たちのクラスなんだし、みんなの意見をうまくまとめる道だってあるはず! 一人一人が言いたいことをきちんと整理してさ、それを生かす形にできない?」


 本来なら、ひとつの出し物に決めるのが普通だが、これだけ意見が割れてしまうと一つに絞るのが難しい。俺がその場しのぎのように「みんなの要望をなんとかまとめる」と言ってしまったのが運命の分かれ道だった。


「う、うん……美玲ちゃんがそう言うなら……」「まあ、仲良くやろうか……」

 みんなが軟化してくるのを感じた。ほっと一安心。ただ、なんか嫌な予感がする――


「じゃあ……まず、喫茶をやりたい派はメインでドリンクとかデザートを出す形にしようよね?」

「うんうん、私たちも味にこだわりたいし、メイド服とかも可愛い……」


「でも演劇派はどうするの?」

「ステージを設置して、30分ごとにお芝居をやればいいじゃん! 喫茶の客に見せるとか?」

「いいねー。衣装とか照明も準備しよう!」


「焼きそばを推したい人はどうする?」

「よし、じゃあ屋外スペースで焼きそばガンガン売ろう! でも客席と繋がってて……同時に喫茶もやるの?」

「それいいかも! 焼きそばを食べながら演劇観れるのすごい楽しい!」


「お化け屋敷派は……どうすれば……?」

「じゃあ演劇をホラーテイストにしちゃおう! 喫茶の雰囲気もお化け屋敷チックにして、暗めの装飾入れて、焼きそばも血糊みたいに赤ソース使うとか?」

「わぁ……カオスになりそうだけど……面白そう?」


 クラスメイトたちはノリノリだ。学級委員が慌てて黒板に書き出しているが、どんどん統合案が過激になってゆく。最終的に「お化け演劇焼きそば喫茶」というよく分からない言葉が誕生してしまった。


(おいおい……想像しただけで目が回るんだけど……みんな楽しそうだしな……)


「よし、決まりだな! 僕らは『お化け演劇焼きそば喫茶』をやるんだ!」

 誰かがそう高らかに叫んだ瞬間、クラス中から歓声が上がる。拍手や拍手が湧き上がるなか、俺は心でツッコミを抑えきれない。


 クラスメイト数人が、俺の肩を笑顔で叩きながら、「美玲ちゃんが仲裁してくれたおかげで皆まとまったよ! ありがとう!」と感謝してくれる。

 別の子が「頑張ろうね、美玲ちゃん! 私、焼きそばの材料手配するから一緒に行こう!」とワクワク顔で提案してくる。


「あ、あはは……私、こういうこと言いたかったんじゃないんだけどな……」

 ぼそっと口に出すが、クラスメイトはすでに準備モードに突入していて聞いちゃいない。「お化けの衣装はどこで買う?」「演劇用の台本どうする?」など大騒ぎ。


(そういうことじゃないんだよぉ……全部混ぜるんじゃなくて、なんかあくまで話し合いを……いや、こりゃもうどうにもならないか……)


 内心で額を押さえ、「どうしよう」と気まずさを噛みしめる。だけど、みんながこのバカみたいなアイデアでめっちゃ盛り上がってるのを見ると、それを止めるのも悪い気がしてしまう。


「……はぁ……ま、いっか。とりあえずやるしかないね……」

 結局、文化祭で『お化け演劇焼きそば喫茶』なる謎企画をやることに。あまりにも盛りだくさんすぎて準備が大変になりそうだけど、クラスの仲間の勢いは誰にも止められない。


(こんな無茶苦茶な出し物、果たして成功するんだろうか……? 何か、新しいトラブルの予感がするけど……)


 そう心の中で呟き、俺はみんなの笑顔を横目に深い溜め息をついたのだった。

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