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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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41.スポーツの秋 倉庫の仕分けバイト!

 スイートポテトを食べに行った翌日、結月怪しげなバイトの情報を持ってきた。

「ねえ美玲ちゃん、日給10万円ってバイトがあるんだけど、興味ない? 体をめっちゃ動かすらしいんだけど……」


「え、10万……? それ、絶対怪しいじゃん!」

 俺は内心で警報が鳴り響いた。だが、結月の声は必死だ。


「でも、運動の秋だし! しかも給料いいなら、一石二鳥じゃん!」


 結月が目を輝かせて言う。この間まで、俺も結月の奢りでスイーツをもりもり食べた手前、なんとなく断りづらい。一人にするのも危ないし、一緒に行ってあげるかと観念することにした。きっと二人一緒なら大丈夫……かもしれない。


 数日後、指定された場所に集合しろというメールが届き、俺と結月は電車を乗り継いで行ってみた。

『人気のない倉庫街に来てください。体力に自信があればOK!』という説明だけで詳細は不明。

 向かった先は、地図で見てもほぼ何もない埠頭の外れ。


「ちょっと、これ絶対怪しいよ。やめとこうよ……」

 心が揺れる俺に、結月は「大丈夫大丈夫。ここで帰ったら勿体ないでしょ?」と笑いながら背中を押す。


 やがて現地に着くと、大きな倉庫が建っている。入り口に頑丈な扉。ピンポンが見当たらないのでノックすると、内側から人が現れた。


「おお、君たちがアルバイトだね。じゃ、入って」


 スキンヘッドのおじさんが無愛想に扉を開ける。どう見ても普通の倉庫というより、殺風景なコンクリ壁で照明も薄暗い。俺は心臓がドキドキしてたが、結月はなぜかキラキラした目で中に入る。


 倉庫内部には、なぜか無数の袋に詰められた白い粉が山積みされていた。


「ひえっ……こ、これ何の粉ですか……?」

 俺が低い声で尋ねると、先ほどのスキンヘッドが「合法だよ。もちろん違法じゃない。大丈夫大丈夫」と曖昧に笑う。


「一応マスクしてれば安全。吸わないようにね。ほら、作業服着て」

 結月と二人、顔面を完全に覆う防塵マスクを渡される。周りを見ても、他に人はいないようだ。事前には「運動量が必要な力仕事」と言われていたが、実際は粉袋を仕分けるだけ? 


「これを指定の袋に小分けしろってこと?」

 結月が尋ねると、スキンヘッドは「そう、それだけ。重いし一日動き回ってもらうけどな。日給10万は割に合うだろ?」と笑っている。


 正直、俺は「いや、これって絶対ヤバい粉じゃないの?」と疑っている。だが結月は「まあ大丈夫だよ」と謎の自信。

(どう見てもただの小麦粉には見えないし……『一応合法』とか言われても不安だよ……)


 でも、とにかく来てしまった以上は仕方ない。運動になるのは確かだ。袋を抱えて移動したりするから相当体力を使う。


 数時間、俺と結月は無心で粉袋を動かし、体もだいぶ疲れてきた。倉庫の端で一息ついていると、突如、外から「ガンッ……ゴトッ……」という騒々しい音が聞こえた。


「なんだろう……? 誰かが上で作業してるの?」

 結月が耳をそばだてる。その直後、「グシャア!!」という轟音とともに、天井が一部崩落し、重い鉄球が落ちてきた。俺は思わず悲鳴を上げて転がるように回避。


「きゃあああ!! 何これ!? 鉄球??」

 結月も絶句。どうやらカラスが大量に倉庫の屋根付近に集まり、鉄球を何個も落としているらしい。


「なんでカラスがそんな重いもの持ってるんだよ!?」

 俺は思わず突っ込みを入れるも、状況は収まらない。上からドスンドスンと鉄球が次々に落ち、床をへこませ、粉袋を破裂させる。


「わわわ、粉が舞うよ……!」

 倉庫中が白い粉塵で充満し始め、視界が真っ白だ。しかもまだ屋根から鉄球が次々と降ってくる。危険すぎる。


「こりゃ、逃げるしかない……!」

 結月を引っ張り、俺は扉へ突進する。スキンヘッドのおじさんは「うわああ!」と叫びつつ、どこかへ消えていった。もうこの状況じゃ仕事どころじゃない。


 倉庫の広い空間を走り回り、なんとか外に出る。鉄球が落ちるたびにガシャガシャと火花が散り、嫌な予感がする。

「あ……あぶなっ……」と結月が叫んだ瞬間、バチバチという火花が舞い、白い粉塵がドンッと爆発を起こす。


「ぎゃああああ!!」

 衝撃波がすごい。倉庫の天井や壁が吹っ飛び、一瞬明るい光が閃いたかと思うと真っ白な煙に包まれた。俺は結月の腕を掴んでできるだけ倉庫から離れる。背後からボンボンと爆発音が続き、振り返ると倉庫全体が燃え盛っている。


「ま、まじ……!?」

 唖然と立ち尽くす俺と結月。カラスがカァカァ鳴きながら飛び去っていく。


「ひぃ……私たちのせいじゃ……ないよね……?」

 結月が青ざめた顔で尋ねる。俺も半ば震えながら首を振る。


「違うよね、鉄球落としたのカラスだし……爆発は偶然……多分……」


 とにかくこんな場所にいられない。スキンヘッドのおじさんもどうなったかわからないが、俺たちはパニックになりながらも、急いでその場を後にするしかなかった。


――――


 一方その頃、国内で薬物事案を追っている捜査官たちが本部で会議をしていた。

「従来の検査法じゃ検知できない、かつ成分的に取締が追いついていない新種の依存性薬物が上陸してる……」

 そんな情報を元に、供給元を探していた彼ら。捜査官の一人が神妙な面持ちで報告する。


「警部、例の白い粉を扱ってた倉庫が判明しました。どうやら輸入された違法ギリギリの薬物を仕分けしてた模様です。この埠頭の倉庫です。」

 部下が地図を指し示して説明する。捜査官――警部と呼ばれる男が頷きながら渋い顔をする。


「ようやく場所がわかったか……それで、押収できたのか? 関係者は?」

 警部が問いただすと、部下は怪訝そうに首を振る。


「いや……昨日、突然大量のカラスが屋根に鉄球を落とすという事件が起きて、そのまま爆発……倉庫は壊滅だそうです。関係者も全員いなくなったとか……」


「はぁ? 鉄球? カラス? 馬鹿なこと言うな……」

 警部は目を点にして、書類をめくる。どうやら現場は派手に崩壊し、粉塵爆発でほぼ飛んだらしい。捜査官たちはどう対処していいかわからず困惑している。


「またおかしな話だな……カラスに鉄球落とされまくって倉庫が爆発? どういうことだよ」

 警部は頭を抱え、呆れたようにため息をつく。


「いったいなぜこんな奇妙なことに……」

 とりあえず違法ギリギリ薬物の供給元が事実上壊滅したのは朗報だが、このエピソードはあまりに荒唐無稽だった。


――――


 こうして、俺と結月は「絶対もうこんなバイトしない……」と心に誓い、帰宅した。

 二人は「スポーツの秋」ならぬ「地獄の秋バイト」で、大爆発を起こして逃げ帰る羽目になったのだった。

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