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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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31.西園寺の招待状

 なんだかんだあって、気づけば夏休みも真っ盛り。アイドル紛いの海の家バイトやイルカに連れ去られる事件など、盛大に振り回されてきたが、最近は少しのんびりしていた。

 そんなある日のこと、西園寺麗華から一通の連絡が入る――「避暑地の別荘へ来ない?」という招待状だ。


「私の別荘に興味ない? せっかくの夏休みだし、暇を持て余してるなら……来る? まぁ、嫌なら別にいいけど」

 文面からは西園寺らしい高飛車な雰囲気が漂うが、この前あたりから少し打ち解けてきたし、悪い話じゃないかもしれない。

 さっそくこの情報を結月と翔に伝えると、


「えぇっ!? 西園寺さんの別荘!? ぜったい楽しいじゃん! 行こうよ、美玲ちゃん!」

結月は目を輝かせて、何の迷いもなく飛びついてきた。

やはり彼女はこういう非日常にとことんテンションが上がるタイプ。俺も、正直少し興味がある。


「んじゃ、オレも行くわ。せっかくなら別荘とか見てみてぇし」

翔が横からひょいっと口を挟む。賑やかなメンバーでわいわい過ごすのも悪くない。


ーーーー


というわけで、後日。結月、翔、そして俺の3人で電車に揺られて避暑地へ向かうことになった。

西園寺家が所有する別荘は、山の麓にあり空気が涼しくて快適らしい。電車を降りて30分ほど歩くと、緑が生い茂る美しい森の中に洒落たゲートが見えてきた。


「はぁ……けっこう歩いたね……」

「うん、でももうすぐ着くってさ。あ、あれじゃない? 門の先に大きな建物が見えるよ」

翔がペットボトルの水を飲みながら、先を指差す。軽いハイキング気分で、爽やかな汗をかいている。


ゲートを抜けると、そこには西園寺麗華と、その両親らしき人が待っていた。

母親は上品な雰囲気で「いらっしゃいませ。ようこそ」とにこやかに頭を下げる。父親も落ち着いた口調で挨拶。「麗華がお友達を連れてくるなんて珍しいな」と目を細めて微笑んでいる。


「どうも、今日は招待ありがとうございます。今日からしばらく、お邪魔します」

そう言って苦笑いする俺に、西園寺が鼻を鳴らすように微笑む。


「別にいいわよ。両親はすぐ出かけるから、あとは私たちだけで過ごすことになるけど……ま、適当に楽しんでちょうだい」


 建物は豪華なログハウス風の外観で、玄関を入ると広いリビングがドーンと広がる。床や壁は木のぬくもりがあって、天井も高い。

 西園寺は得意げに「このリビングには暖炉があって……」「こっちのサンルームからの景色が最高なのよ」などと説明して回るが、俺と結月、そして翔はすでに探検モード。


「わ、すごーい! 部屋がめっちゃ広いね。あ、あそこにグランドピアノまである!」

「こっちのテラス、バーベキューできそうだぞ!」


 3人はきゃっきゃと騒ぎながら勝手に走り回り、家具をチェックしたり庭に出たりして大はしゃぎ。その様子に西園寺は苦々しく眉を寄せ、


「ちょっと、話を聞きなさいよ……私はこの設備の素晴らしさを説明してるのに!」


「ご、ごめん……だってすごいんだもん」

「悪い悪い、ついテンション上がって……」


 西園寺は「まったく……」と溜め息をつきながらも、どこか得意そうな表情を浮かべている。やはり友達に別荘を見せるというのは嬉しいのだろう。

 我々も、広々としたリビングと充実した設備を前に、テンションは上がるばかり。

 そんな中、夕方になって「そろそろ夕食をどうするか?」という話題になった。


「ねえ、美玲ちゃん、せっかくだし別荘のキッチンもお借りして夕食作らない? お腹空いたし、BBQもいいけど、今日は屋内でゆっくり食べたい気分なんだけど」

 結月がパタパタと庭から戻り、にこやかに提案する。


「確かにここは設備も凄そうだし、料理しても楽しそうだね。……だけど誰がメインで作る?」

俺は内心「前世の男の料理スキルなんて微妙だし……」と少々不安。翔も「オレは食べる専門で」と早々に逃げ腰だ。


「じゃあ、私が夕食を作ってあげてもいいわよ」

 いつもなら口を挟んで来なさそうな西園寺が、ふと口を開いた。そこには妙な気合いが見える。


「え、西園寺さんが料理するの? 大丈夫?」

 結月は目を丸くしながら訊ねる。が、西園寺はスッと髪をかき上げながら得意気に笑う。


「失礼ね。私、こう見えてかなり料理の腕には自信があるのよ。大したことないかもしれないけど……あなたたちがマネできるとは思わないでね?」


(な、なんだその言い方……でも、なんか気合い入ってるみたい)


 リビングの隣にあるキッチン。フラットなカウンターとオーブン、たくさんの調理器具が揃っていて、調理するには申し分ない環境だ。

 そこで、西園寺はエプロンを身に着けると同時に、「よし、いくわよ」と気合いを入れる。


「ま、まさか……本当にやる気満々だね、西園寺さん……」

俺は少し引き気味に声をかけるが、彼女はちっとも意に介さない。


「せっかく私の別荘に来たんだから、最高のディナーを楽しませてあげるわ。食材は冷蔵庫に色々買ってあるし、地元の農家さんから買ってきたのもあるから」


 食材を手にする彼女の姿は堂に入ったもの。さながら「料理の鉄人 西園寺」を自称できるほど手際よく準備を始める。

 翔や結月も「お、おぉ……想像と違う感じだな」と感嘆の声を漏らす。


 野菜の皮むき、下ごしらえ、下味の段階から既に無駄が一切ない。

 鶏肉をオーブンで調理しながら、横ではフライパンをふるい、さらにボウルでサラダのドレッシングを仕上げていく――同時進行が凄まじいスピードだ。


「すげぇ……。オレなんか一品作るのでもてんやわんやだってのに」

翔がキッチンの入口で感心するのを見て、結月もうんうんと頷く。


「ね、ね、何か手伝えることあるかな? 洗い物くらいはするよ!」

「そうね……そっちにある野菜を適当にざっと洗って、お皿だけ出しておいてくれればいいわ。あ、あとこれオーブンに入れるタイミングになったらタイマーセットして」


 さらりと指示してくれる西園寺。どうやら完全に指揮をとっている形だ。俺と結月は「了解!」と素直に従う。


 やがて部屋中に美味しそうな匂いが立ち込めてきた。

 タイマーが鳴ったら翔がオーブンの扉を開け、「うおお、チキンがめっちゃ美味そう!」とテンション爆上げ。結月は皿を並べながら「わー、すごいご馳走!」と大喜び。


「ふふん、どう? まだ仕上げ前だけど、香りだけでわかるでしょ?この香草焼きには、実は秘密が合って……」

西園寺は手を腰に当ててドヤ顔。しかし、翔や結月は勝手に嗅ぎまわって盛り上がっていて、彼女の解説にまともに耳を傾けていない。


「わ、サラダもいい感じ。グリル野菜もあるじゃん!」

「魚の香草焼きとか最高じゃね?」


 完全に食欲のままテンション上がる二人。そして俺も「すごい……こんな豪華なディナーになるなんて……」と感動してしまい、あまり西園寺のどや顔視線に気づいていない。


「ちょっと、私の話、ちゃんと聞きなさいよ!」

 西園寺の声が突き刺さる。先ほどからいろいろ説明してくれているのに、皆気もそぞろで無視状態。ちょっと不憫だな……と思いつつ、再び彼女を褒めてフォローする。


 遂に料理の全品が完成。テーブルにはオーブンチキン、香草焼きの魚、グリル野菜、サラダ、さらにスープまで。完全にレストランのコース料理だ。


「すごい……これ、本当に私たちだけで食べていいの? レストラン顔負けだよ……」

 結月が目を輝かせる。翔も「まじでプロ級だろ、これ」と感動を隠せない。


「ふふ……私をなめないでよね。こういうこともできるのが西園寺麗華なんだから」


 尊大な口調だが、嬉しそうな色がにじんでいる。俺はその姿にほんの少し心が温かくなる。

 テーブルを囲んで、四人で「いただきます!」と合唱してからの試食。どれも驚くほど美味しく、あっという間に皆が箸を進める。

 「うまっ!」「野菜の味が濃い……!」など絶賛の声が飛び交う中、作り手である西園寺はやや得意げ。ただ、皆が夢中で食べ過ぎて、「これどうやって作ったの?」とか詳しい質問をあまりしない。


「……私が工夫したポイントは、実は焼き加減で……一度見ただけでは……」

 小声でぼやく西園寺だが、気づけば結月が「やばい! これ止まらない!」、翔が「スープ最高、あと三杯いけるわ」と感激しきり。俺もサラダをもりもり食べながら「いや、もう本当美味しい……」と感嘆していた。


「……まあいいわ。おいしいならそれで。ふんっ」


 そう言って不満そうにしながらも、微笑ましい空気を微かに楽しんでいるようで、彼女の横顔には満足げな陰が宿る。

 西園寺の意外な一面が分かった一場面だった。


 急遽決定した避暑地でのバカンス。この先、どんな滞在になるのか。普通にリラックスして過ごせるといいのだが……。いつも通り何か波乱が起きるのか、今は誰にもわからないのであった。

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