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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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29.妖精ミレイたんの水着ファッションショー

 海の家バイト(というかライブ)で思わぬ報酬を得て、俺は結月と一緒に水着を買いに行くことにした。

 前世が男だったからこそ、水着選びってものに少し抵抗もある。だけど、新しい水着を着て夏を楽しみたい気持ちもあるわけでーー


「美玲ちゃん、あのバイト代……けっこう稼げたよね? せっかくだから、可愛い水着買いに行こうよ!」

 エネルギッシュな笑顔で提案するのは結月。

 俺は苦笑しつつも、「ま、まぁお金もできたし、またビーチにも行くかもしれないし……」と内心で色々整理しながら頷く。


(さすがに前世が男だった俺にはハードル高いけど、結月がついてくれれば何とかなる……)


「じゃあ、一緒に行こうか。駅前のショッピングモールとかで売ってるかな?」

「うん! そこに可愛い水着専門店があるんだよ。絶対似合うの見つかるよ!」


 結月のテンションは最初から最高潮。こうして俺たちはショッピングモールへ向かった。


ーー


 大きめのショッピングビルの中にある水着専門店。結月と一緒に入るだけでも少し緊張するけれど、まぁ普通の買い物……と思ったら、それが甘かった。


「いらっしゃいませー……」

 カウンターに立っていた店主が、俺の顔をじっと見た瞬間、声を失う。


「……ん? どうかしたんですか?」


 俺が怪訝そうに尋ねると、店主は「ちょ、ちょ、ちょっと待って! まさか……あなた、『海の家ライブ』で見た、あの『妖精』じゃないの!?」「うわあああ、本物だー!」と興奮し始める。


「え……えぇっ!? あ、あの……違――じゃなくて、同じ……かな……?」


 どうやらこの店主は海の家ライブの観客に混ざっていたらしい。

すぐに裏手から仲間スタッフまで呼び出し、「この子だよ! ミレイたん!」と大騒ぎ。


 事態がエスカレートするのはあっという間だった。

 店主は「ミレイたんがうちの店に来てくれるなんて光栄だ!」と跳ね回り、「もう何でも無料でいい! 水着も、サンダルも、アクセサリーも全部持っていっちゃって!」と叫ぶ。


「ま、待ってください……私は普通に買いに来たんですよ!? そんなタダで受け取れませんから!」

俺は必死に拒否するが、店主は「いやいや、むしろ買ってもらうなんて申し訳ない! この店ごと差し上げたいくらい……!」などと、わけの分からないことを言い始める。


 結月も思わず「店ごとって……どういうこと?」と目を丸くするが、店主のテンションは止まらない。後ろのスタッフたちも「わー、すごい有名人が来た」とか言い出して収拾がつかない。


(もうヤバい……また嫌な方向に盛り上がってる……)


「せっかくだから、ミレイたんの水着ファッションショーをしようじゃないか!」


 そう言って、店主は店先のスペースにカーテンを引いて簡易ステージを作り始める。


「いえいえいえ、無理無理無理! 私、水着着るだけでも恥ずかしいのに、ショーなんて……」

 だが、周囲の熱気に押され、俺はあれよあれよと控室へ連行される形に。


「がんばれ、美玲ちゃん……!」


 結月が手を振り見送ってくる。止めてくれなさそうだ。結月自身が絶対に楽しんでる……!


 そして、謎のスタッフが「はい、こちらが一着目~」とワゴンに積んだ水着を次々運んでくる。

 ビキニタイプ、ワンピースタイプ、フリル付き、競泳風……。俺としては目が回りそう。


 なんとか勇気を振り絞って一着目を試着し、カーテンを開けると――そこには店主や店員、さらには店内にいたお客さん数名が拍手で迎えてくる。


「おおー! かわいいかわいい!」

「さすが妖精ミレイたんだわ!」


 顔が真っ赤になるが、次から次へと「じゃあ次のも着てみよう!」という声に流され、俺は何着も着替える羽目に。


「……もう限界……」


 内心で泣きそうになりながら、それでも店員の熱意に押されて披露を続ける。

 結月は「わぁ、全部似合うね、美玲ちゃん!」とスマホカメラを構えて嬉しそう。やめてぇ!


 何度かの着替えラッシュを終え、ようやくカーテンが閉じる。店主は「いやー、眼福でした! ミレイたん、最高!」と頬を染めて感動している。

 俺はへとへとになりながら戻ると、結月が笑いをこらえきれない様子で待っていた。


「ご苦労さま~。まさか水着のファッションショーが始まるなんて……あはは!」

「笑い事じゃ……私、もう限界だよ……」


 その後、店主は「全品プレゼント!」とまで言い出し、結局「ただで受け取るのはさすがに……」と抵抗したものの、「だったらせめてこれだけでも!」と数着の水着とビーチグッズを押し付けられる形に。


ーーーー


 店を出て、ショッピングモールの通路を歩きながら、俺は深いため息をつく。

 バッグの中にはビキニやフリル付きワンピなど、複数の水着が詰め込まれている。結月は「これでいつでも海やプール行けるね!」とウキウキ顔。


「いや、これ、絶対に普通じゃあり得ない量だし……あの店主、大丈夫かなぁ」

「相当喜んでたよ。『妖精ミレイたんが来てくれた!』って騒いでたし……なんだかんだ賑わってたしね」


 結月はクスッと笑う。俺も呆れながら、もうどうにでもなれと開き直り始めている。

 しかし、本当にここまで大騒動になると、トラブルなのかラッキーなのかよく分からない気持ちになる。


「ま、結果オーライ……なのかな。無料で貰っちゃったけど、今度また何かあったらお金払いに行こう……」

 そう呟く俺に、結月は微笑みながら「そうだね、でも夏休みはまだ始まったばかりだし、いっぱい着倒そうよ!」と頼もしい発言をする。


(はぁ……普通に水着を買うだけのはずが、なんで俺はファッションショーを……)


そう心の中で叫びつつ、どこか諦めにも似たため息をつくのだった。

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