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転生したら『迷惑系美少女』になっていたので、普通に生きることを目指します  作者: ぜんだ 夕里


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22.お祭り騒ぎ

 試練まみれの道中を乗り越え、やっと夏祭り会場に辿り着いた俺と、待ち合わせ相手の日野結月。

 夕刻の町は提灯が灯り始め、人混みのざわめきと屋台の美味しそうな匂いが入り混じって、まさに夏祭りそのものの風情が漂っている。


「わあ……こんなに賑やかなんだね。すごい人……」

 結月も目を輝かせて周囲を見回す。立ち並ぶ屋台を見渡してはワクワクが止まらないのだ。


「おっ、このたこ焼き屋、近所のあのおじさんじゃない!? 行ってみよ!」

 結月が先に見つけたのは、商店街でよく顔を合わせるおじさんがやっているらしい屋台。さっそく二人で並んでみると、おじさんはすぐに我々に気づいて笑みを浮かべる。


「おう、結月ちゃんじゃないか! 今夜は浴衣かい? ほう、そっちの娘さんもかわいいねぇ。ほら、サービスしとくよ。たくさん食べな!」


「え、い、いいんですか? ありがとうございます……!」


 なんと、たこ焼き一皿分まるごと無料でくれてしまった。ラッキー!と二人で大喜び。

 しかし、それが幸運の始まりというか、『サービス尽くし』の序章だったらしい。


「お姉ちゃんたち、かわいいね~」

「ほら、これもオマケ! 祭りに来てくれてありがとね!」


 あちこちの屋台の店主たちに声をかけられ、買おうとした物にプラスして唐揚げや焼きそばまで追加でくれたり、かき氷をボリュームアップしてくれたり……気づけば手には大量の食べ物や袋が。二人とも浴衣姿なのに持ちきれないほどの振る舞いを受けてしまう。


「ゆ、結月……さすがにもう食べられないんだけど……」

「わ、私も……お腹いっぱいだよ……」


 盛り上がっていたテンションも、目の前に山積みの食料と袋を抱えてクタクタ。人混みも多いし、このままでは動くのも大変だ。


「ちょ、ちょっと落ち着こう。人混みから少し外れたとこに、ベンチか階段みたいなとこないかな……」

 結月と相談し、メイン通りから外れた公園のはずれのようなスペースへ移動。そこはちょうど人気ひとけが少なく、腰を下ろせる段差がある。


「はぁ……助かった~……重かった……」

「うん……祭りなのに、これじゃあまるで買い出し部隊だよ……」


 手にした袋を並べると、たこ焼き、焼きそば、綿あめ、かき氷、チョコバナナ、謎の景品まで、もう凄い量。どう考えても二人で食べきれるはずがない。


 そこに偶然通りかかったのが、小学生の男女数人のグループ。祭りの途中で遊びまわっていたのか、「うわ、なんかいろいろある……!」と目を丸くしてこっちを見ている。


「い、いらない? 食べる?」

 恐る恐る声をかけると、子供たちは最初こそ遠慮していたものの、「本当にいいの?」と目を輝かせて寄ってきた。

 こうして段差に座り込んだまま、小学生たちと一緒に大宴会が始まる。


「このチョコバナナ甘いー! やばい!」

「唐揚げうま! お姉ちゃんたちすごいね、こんなの全部もらったの?」


 子供たちと我々でワイワイ賑やかに食べている姿は、傍から見るとちょっとしたピクニック状態だ。結月は嬉しそうに「お姉さんたち、食べきれないんだよ~」とおどけるように言う。


「ま、結果オーライだけど……これで荷物はだいぶ減るかな」

 お腹も少し楽になるし、小学生たちも喜んでくれる。一石二鳥……と、ホッとした瞬間だった。


 唐突に威勢のいい掛け声が近づいてきた。「わっしょい! わっしょい!」 と響く神輿の担ぎ手たちが通りかかり、どこかで参加者を探している雰囲気だ。

 そのリーダーらしき人が手招きしている。


「おい、そこの浴衣の娘さん! あんたが今日の巫女役か? こっちこっち!」


「え、えっ!? 違います! 私は……」


 言いかけた瞬間、周囲の担ぎ手たちにわっしょいと引きずる形で連れ去られてしまう。あまりに勢いがすごくて、身をよじってもピッタリ挟まれて逃げられない。


「ちょ、待って、何!? 巫女役? 違うってば、私じゃないのに……!」

「細かいこと言うな! お祭りだから盛り上がっていこうぜ!」


 完全に人違いだ。それでも聞く耳を持たない担ぎ手たちは、私の抗議を無視して神輿の中心部へ。さらに抱きかかえられる形で神輿の上に乗せられてしまった。


「え、やだ、こわっ……! ちょ、ちょっと! 下ろしてよ~!!」


 神輿は「わっしょい、わっしょい!」の掛け声とともに、街中を進むパレードルートに突入。狭い場所で上下に揺れる神輿はかなりのスリルで、悲鳴を上げずにいられない。


「ぎゃああぁ……やめてぇぇ……! 怖い! 落ちるぅ!!」


 もう完全にパニックだ。そもそも乗せられる理由がないのに、降りる隙も与えてもらえず神輿の上を必死で掴まるしかない。

 下を走って追いかける結月は「美玲ちゃん! ちょ、誰か止めてぇ!!」と周囲に呼びかけ、なんとか救出しようと必死だ。


「うそ、なんでこうなるの……! ただお祭りを楽しんでただけなのに……!」


 ゆらゆら上下に揺れる神輿の上で、私の悲鳴が夜空に響く。まさかの大騒動が起きてしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いやぁ、久々の祭りもいいもんだな……」


 佐々木翔は友人たちと連れ立って夏祭り会場を回っていた。屋台で買った焼きそばやジュースを楽しみながら、ちょっと気晴らしというわけだ。

 すると、遠くからものすごい声が聞こえてくる。「きゃああああ!」 とどこかで耳にしたような悲鳴だ。


「何の騒ぎだよ……?」


 視線を向けると、神輿の上で浴衣姿の女の子が絶叫をあげている。どう見ても藤堂美玲だ。

 慌てて地面を走る同級生らしき女子は、たぶん日野結月。二人がバタバタしてる様子を見て、翔は唖然とするしかない。


「……なんだあれ……いくら何でもハッスルしすぎだろ……」


 完全に肩透かしを食らったような気分だが、「やっぱあいつ、まともに祭り楽しむだけじゃ済まないよな」と、妙に納得してしまう自分がいる。

 別の友人が「おい、あれ……あの子、翔のクラスメイトじゃね?」と冷やかすが、翔は苦笑いしながら肩をすくめる。


「オレのクラスメイトだけど、ああいうハチャメチャなのはもう慣れっこなんだ。あんな騒ぎに巻き込まれたくねぇし……放っとくか」


 心の中で「がんばれよ、藤堂……」と小さく念じて、翔は一歩離れたところからその様子を見守る。何やら結月が必死に神輿の担ぎ手を止めようとしているのが見えたが、最終的にどうなるのか、今はまだ分からない。


(とにかくオレはオレで、祭りを楽しむか。あいつは多分……いつもの感じで不思議と何とかなるだろ)


 半ば呆れながら、翔は再び友人たちと夜店を回り始める。神輿の熱気と美玲の奇声は、夜の夏祭りのどこか盛り上がった雰囲気の BGM のように、遠くから響いていた。

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