結婚式
開いた扉の向こう、真っ先に目に入ったのはディアナを待つユージンの姿だ。
祭壇まで続く赤いウェディングアイルは両側の窓から射し込む光でキラキラと輝いている。
さらには正面のステンドグラスから光の柱が放射線状に降り注ぎ、黒のモーニングコートを身にまとったユージンの周りにはスポットライトが当たったかのようだった。
(まるで天使の梯子みたいね)
そう思いながら、アランにエスコートされるままディアナは進む。
ディアナの純白のウェディングドレスは後ろにトレーンが長く伸びている。
腕全体をレースのロングスリーブで覆っているため肌の露出は少なかった。
常日頃幼く思われがちなディアナではあるが、今日この時は厳かな雰囲気も相まっていつもよりも大人びた印象だ。
祭壇に向かって右側にウィクトル帝国の関係者が、左側の最前列にフォルトゥーナの王族が、そしてその後ろにはそれ以外の国の招待客が座っている。
フォルトゥーナの家族が目に入らなかったわけではない。
しかしディアナはまっすぐ前を向いたまま彼らの方へ視線を向けようとは思わなかった。
「ディアナ、幸せにな」
ユージンにディアナを託す直前にアランが言う。
「ありがとう」
そう囁き返して、ディアナはユージンの左腕に右手を添えた。
そっと見上げた先には光を弾くように輝く金色の髪。
そしてユージンの瞳が愛しげにディアナを見つめる。
少しの気恥ずかしさを感じながらディアナもベール越しに視線を合わせ、その後二人一緒に前を向いた。
「ユージン・ウィクトル。あなたはディアナ・フォルトゥーナを妻とし、病める時も 健やかなる時も、富める時も 貧しき時も、愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「誓います」
神父の問いかけにユージンがはっきりとした声で答える。
「ディアナ・フォルトゥーナ。あなたはユージン・ウィクトルを夫とし、病める時も 健やかなる時も、富める時も 貧しき時も、愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「はい、誓います」
誓いを交わし、そしてお互いが向き合った。
金糸をあしらったショート丈のフェイスアップベールが、ユージンの大きな手によってベールアップされる。
レースを隔てずに見つめる先の瞳がエメラルドに輝いていた。
その色を脳裏に焼きつけながらディアナは目をつむる。
触れた唇は優しかった。
ディアナを驚かせないように、そっと。
高鳴る鼓動が聞こえるのではないかと思いながらディアナが目を開ければ、珍しくもユージンがほんのりと微笑んでいるのが見える。
「ただいまの宣誓をもちまして、婚姻式の結びといたします」
そして神父の締めの言葉が聞こえた。
ディアナとユージンはすでに婚姻届を提出済みなこともあり、結婚式自体はここまでとなる。
この後は少しの休憩時間を挟んだ後に結婚披露の宴だ。
ウィクトル帝国の皇帝と皇后としての初めての外交でもある。
二人の長い一日は、まだ続くといえた。
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