臨時公爵会<1>
ディアナがフィリアとのお茶会を開催するのと時を前後して、帝都に戻ってきた三公爵に対してユージンが臨時公爵会の通達を出した。
「領地の問題がある中急ぎ戻って来てくれたこと、感謝する」
通常の公爵会であれば王宮の中の会議室で行われることが多い。
何らかの理由で会議室を使わなかったとしても応接室を使うなど、王宮内の公的な場所で行われるのが普通だ。
しかし今回の臨時公爵会はユージンの執務室で開催された。
集まったのは北のコラード公、西のベルダー公、南のラルグス公の三公爵と宰相、そしてユージンとカーライルの六人。
イーサンの執務室もユージンの執務室も、執務を行う上で必要な人員は出入りするため公的な場所と言えなくもないが、どちらかというと私的な空間に近い面がある。
「急な招集、さらにはユージン殿下の執務室とは……穏やかではないものを感じますが、いったい何がありました?」
会議の口火を切ったのはコラードだった。
「公爵たちには何の説明も無しに戻ってきてもらったこと、申し訳なく思う。が、ことは急を要したのでな」
「ユージン殿下がそう言うということは相当深刻なことが起こっていると推察するが、いかがだろうか」
今度はベルダーが確認の言葉を発する。
「本題に入る前に、まずは各公爵領の現状を報告してもらいたい」
今回の公爵会は呪具の件はもちろんのこと、魅了の香りのことまで議題に上げる予定だ。
特に呪具に関しては公爵領での問題に直結することでもあるため、現状を把握することは必須といえた。
「コラード領での銀狼の発生はピーク時を超える数が確認されています。そもそも銀狼の発生ピークはもう少し雪深くなってから。今は通常であれば銀狼に備える時期。にもかかわらずこの発生数は普通ではありません」
「被害状況はどうだ?」
コラードの報告に対してユージンが端的に確認する。
「もちろん被害がないとは言えませんが……。今はまだ何とか踏ん張っている状況です」
「そうか。わかった。ベルダー領はどうだ?」
公爵たちは会議に合わせて報告書も提出している。
時間が無い中でも抜かりなく準備してくるのはさすがだった。
「ベルダー領でのクラーケン出現件数はピーク時と同様かそれを超えるレベルです。何よりも問題なのは今までは現れなかった海域までクラーケンが出没していることですね」
「貿易船への影響はどうだ?」
「もちろん影響が無いとは言えません。とはいえクラーケンの異常発生が早めにわかったため、通常よりも貿易船の往来を減らしていますので被害は抑えられています。ただしその分貿易量が減っているため帝国内への影響はこれから出てくるのではないかと」
ということは、クラーケンへの対策が遅れれば遅れるほど国内への流通品は減り、国民の生活を圧迫していくことになるだろう。
「了解した。ではラルグス領は?」
「ラルグス領には銀狼やクラーケンのようなわかりやすい天敵はいませんが、農作物の生産は天候や自然災害にかなり左右されます。このところは害虫の発生が例年の数倍の量で起こっていますので異常発生と言えるかと。あとは今の時期なら通常であれば天候に恵まれるはずですが、天気が不安定になる日が多く作物の成長に影響しています」
手元に用意した報告書の数値を見ながらラルグスが答えた。
「なるほど……」
三公爵からの報告を聞き、ユージンは自分の中での考えをまとめる。
「コラード公からもベルダー公からも早馬で報告をもらったが、今回の異変の原因は呪具によるものだ」
「ああ……ラルグス領でも怪しげな、見たこともない呪具が見つかっています」
「そうか。呪具の件、報告を受けてからこちらでも調べてみたのだが……」
ユージンに室内の全員の視線が集まる。
「出所が隣国のユエラン国であることがわかった」
その言葉に、誰ともなしに息を呑む音が聞こえた。
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