追及
「今日のお茶会は親睦のためとお伝えしましたが……それ以外にも目的がありますの」
椅子に腰かけカップを手に取るとディアナは優雅にお茶を嗜む。
その様子にこのままここから逃れることは難しいと思ったのか、フィリアは改めて椅子に腰を下ろした。
「何が狙いなのかしら?」
「そんなに急がなくてもよろしいのでは? まずはお茶をどうぞ」
焦らされていると感じているのか若干イライラしているのがわかるフィリアに対して、ディアナはあえてのんびりと答える。
すぐそばに控えていたリリが冷めた紅茶を新しいものに入れ替えた。
上品かつフルーティな香りが辺りに漂う。
「フィリア様はオルランド領のアグロス男爵家のご出身だとか」
話のきっかけにとでも言うようにディアナが話し始めた内容に、フィリアの眉根がピクリと反応した。
「私の出身がどこの家かがディアナ様に関係ありまして?」
「それはもちろん。そもそもがフィリア様の家の家格が低いがために皇后になれないのでしょう? そしてそのせいで私はフォルトゥーナから帝国へ嫁ぐことになった。それでも無関係だとおっしゃいますか?」
ディアナの問いにフィリアが気分を害したとでもいうような表情をする。
「そんなこと私は知りませんわ。陛下は私を皇后にしてくださると言っていますし、ディアナ様はその内お役御免になるのでは?」
「私は皇后にならないならそれはそれで構いませんのよ」
「なんですって?」
ディアナの返答にフィリアが信じられないとでもいうような顔をする。
「でもきっと、オルランド公はそれを望んではいないのではかしら?」
(そう。彼ほどの立場であれば他国から皇后を迎えることに対して反対することもできたはず。しかしそうはしなかった)
「どういう意味よ?」
「言葉のままですわ。オルランド公は私を皇后に立て、フィリア様は寵姫のまま陛下のそばにはべらせれば良いと思っているのでは?」
そしてディアナには対外的な皇后の仕事をさせ、フィリアを使って陛下を意のままに操る。
それがオルランドの狙いなのではないかと思えた。
ディアナが見つめる先でフィリアの顔が曇る。
視線がウロウロと彷徨っているあたり、彼女がオルランドと交わした約束とは違うのだろう。
「どういうこと? 私が皇后になるんじゃないの?」
ディアナが目の前にいることを失念しているのか、フィリアがブツブツと呟いている。
「オルランド公と何か約束でもしたのかしら?」
「……っ!」
ディアナの問いかけにフィリアの意識がこちらに向いた。
「いっ……いいえ。別に何も約束なんてしていないわ。変な言いがかりをつけないでちょうだい」
「そう」
一言だけ答えて、ディアナはまた一口紅茶を飲んだ。
そして喉を湿らせてから本題に入る。
「フィリア・プセマ」
ディアナの呼びかけに、フィリアは目を見開いた。
「プセマ家はユエラン国の男爵家ですって?」
フィリアのどんな反応も見逃さないために。
ディアナはフィリアをじっと見つめたままその名前を口にした。
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