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守り人と金色の狐  作者: 高千穂ゆずる
禁足地の謎
20/22

禁足地の謎(3)ー4

 店に残る形になった作左とアキ、チカの3人はすることもなく、ときどき店庭に出向いては奥を気にしていた。

「あんなちびっ子に任せて平気か? 奥で母ちゃんに食われてんじゃねぇか?」

「落ち着きなよ、作左。砂輝さんがそんなことするわけないだろ。とりあえず俺ら狐狸ん堂に任せろって」

 スタイリングチェアにふんぞり返るように座ったアキは、椅子を回転させながら言った。

「ところでよ、なんだ、その狐狸ん堂っつーのはよ」

「えっとね~、僕たち4人で妖怪さんとかアヤカシさんとかの困りごとを解決しようっていう集まりなんだよ~」

 サロンと玄関横の上がり框に座っていたチカが、狐狸ん堂について簡単に説明した。4人ということは利都もメンバーの頭数に入っているようだ。

「ふぅん。実績は?」

「じっせきってなに~?」

「今までどれだけの困りごとを解決したのかってことだよ。その数を聞いてんだよ」

 アキとチカが顔を見合わせて、数を数えるように頭が小さく何回か前後に動いた。

「3? 4? くらい、かな」

「もっとあるよ~。結成したばっかりの頃に、水たまりでおぼれてた虫さんを助けたし~、お買い物のお手伝いだってしたじゃな~い」

 チカはさらに小さな小さな親切までもカウントしていたようで、あれもこれもと上げているうちに20くらいにはなったが、作左は両手で顔を覆ってしまうと、

「まともなヤツがひとつもねぇ」

 長いため息とともに呟いた。

「それは仕方ねえし。だって俺らと沙奈が出会ったときは守り人の交代で儀式やらなんやらでバタバタしてたし、沙奈が柿谷の本家にいた日にちだって短かったからな。これからだよ、これから」

「誠心誠意、お手伝いいたします~」

 親子喧嘩の直後で緊迫感をひしひしと感じている作左には、アキとチカの様子はなんとも長閑に見えた。

「母ちゃんがひとりで切り盛りしてきたこの店を潰したくねえし、母ちゃんの腕はもっとたくさんのひとに認めてもらいてぇんだわ」

 現状のまま、細々と知り合いを相手に商売をしていればいいという砂輝の気持ちがわからなくもなかった。しかし、実際作左が街へ出て修業した中で感じたのは、砂輝の技術の確かさだった。

 常連客だから丁寧に施術しているのではない。作左は鏡越しに見た、仕上がりの出来の良さに大喜びする客をみつめる、砂輝の誇らしげな表情が大好きなのだ。

 それは修業の場として世話になったSQUASHのオーナーRYOKUにも通じるものがあった。

「ここが無くなったら狸族うちのみんなも悲しむもの~。あ、戻って来たよ」

 一族の女衆が常連客らしいチカが残念そうに言っていると、奥から戻って来た3人の姿をみつけて上がり框からぴょんと立ち上がった。作左とアキはチカの視線を追うように、店庭へと向けられた。

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