天パー全裸と駆けっこ勝負!
【①素早しっこいぞ!】
長く伸びた白ワイン色の、のたくった髪先を揺らして、全裸の娘が、空を横切るように跳び跳ねた。
両耳代わりのアングレカム……六芒星形の花が風に吹かれ、いつもは胴体前方を隠す髪もバラけて、今なら警察に見つかったら言い訳きかない。
全裸の犯罪者は水のカードを手に取り、幼げな顔の前まで持ってくる。
その間も、その肢体は跳んだり、跳ねたり、宙を舞う。
「ワタシのカードは、理想を映し出す水面鏡。テイオサマッハ、あなたの優れた脚力を習得させてもらいます!」
「いえ……ボクの走りに、追いつきながら言われても~!」
その速度は、音速を遥かに超える。気品のある長いタテガミをなびかせて、ウマの王子は叫んだが、全裸は気にせずカードを向けた。
【②瞬間移動だ!】
サイコウッキーは、超能力を扱う猿だ。瞬間移動を繰り返して敵を翻弄し、鋭いツメで攻撃するぞ!
「おれ様の瞬間移動は、一瞬のうちに、長い距離を無視して、目的の地点に到達する!」
ズラリと並んだ無数の人影、その前へと現れて、ウッキーは得意気に笑った。
「は~っはっはっは! おれの前に何人いようが、関係ねー。瞬間移動は全てをドベにするウッキー」
「行列ぐらい、きちんと並びなさい!」
「ちぇっ。は~いウキ……」
ラーメン屋の前を、とぼとぼ歩いていくサイコウッキー。その小さな背中へ、ねじりハチマキをした全裸娘は、手に持ったお玉を差し向ける。
「違う……こっちだ」
改めて、差し出したカードの表面には、瞬間移動の渦エフェクトが刻まれた。
【③剥がれちゃう!?】
「は~ははは! 夜風が気持ちいいぜ~!」
「その速さ、真似させて~!」
夜空をブッ千切って、雷より速く爆飛行する、メテオコメット。ロケットの体を持つ彼は、隕石パーツの外殼を剥がすことで、さらに飛行のスピードを増す!
メテオコメットの隣を走りながら、全裸は口もとに手をやり、案じた。
「待てよ……これを再現したら、ワタシの柔肌が露わになるのでは」
「……あんたは元からハダカでしょ~が」
【④泳ぎなら負けないぜ!】
潜水艦をまとった鮫、ガブマリナーは、見た目どおり泳ぎが上手い。
「はははは! このまま抜き去ってやるぜ!」
ガブマリナーはパワフルに水面を切り裂き、高波を起こしてカーブを決める!
「ふはははっ。見よ、このパワー!」
「確かにスゴいけど……! パン食い競争では、高波は起こさない方がいいんじゃないかな~……」
「あれっ? おれのレーンのパンは?」
辺りを見回すガブマリのそばに、グジョグジョになったパンの残骸が漂ってくる。
スタッフ帽をかぶった全裸は、新しいパンと、カードを向けた。