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決闘……?


「ちょ、ちょっと、レネちゃん! 失礼だよ! クロードくんは優しいし強いんだから!」

「……ふんっ」


 隣にいたフィオナさんがレネシスを嗜めている。レネシスは腕を組み、口を尖らせそっぽを向いている。


「初めまして、クロードです」

「……レネシス」

「レネちゃんっ!」


 俺が歩み寄り自己紹介しても、俺の方に見向きもしない。そんなレネシスを見てフィオナさんがワタワタしてしまっている。


「ご、ごめんねクロードくん! この子、ちょっと変わってて……」

「変わってるってなによっ! ちょっと優しくされたくらいでデレデレしてるフィオナがおかしいのよ!」

「まぁまぁ……」


 2人が言い合いを始めたのでなかなか口を挟めない。シンシアも黙って俺たちの様子を見つめている。


「クロードだっけ? ……そんなに強いならアタシと勝負しなさいよ」

「……勝負?」

「そう。男なのに強いんでしょ? ならいいじゃない」


 うーん……。俺は別にいいんだけど。

 チラリとシンシアの方を見ると、レネシスを複雑な表情で見つめていた。こわっ……。


「姉さん……?」

「……クロードがしたいようにしてもいいですからね」

「お姉さんもこう言ってるし、いいわよね?」

「……分かった」


 予想していなかった展開に戸惑いつつも、少しワクワクしてる俺もいた。あんなにやりこんだ【リバサガ】の主人公と直接戦えるなんてな……!


 ◇◇◇


 俺とレネシスは孤児院の外の空き地で向かいあう。


「一本勝負ね。武器はこの木剣でいい?」

「ああ。文句は言いっこなしだからな」

「それはアタシのセリフよ! 負けても言い訳しないでよね!」


 へレーナさんさんとフィオナさんは俺たちのことを心配そうに見つめている。特にへレーナさんは今にも倒れそうなくらい青ざめた顔をしている。……大丈夫かな。


「それでは、準備はいいですか?」

「ええ」「うん」


 シンシアが俺たちの間に立ち、確認する。レネシスは相変わらず俺のほうを敵意のこもった瞳で睨みつけている。


「それでは、始め!」


 その掛け声を合図に、レネシスが剣を構え俺の方へ駆け出す。


 その構えはなかなか様になっているが――。


「――はぁッ!」


 真っ直ぐ突っ込んできたレネシス。

 上段から俺の頭に向かって剣が鋭く振り下ろされる。


 ――俺は【魔眼】を使い、レネシスの剣を見切る。


「――ふっ」


 何の工夫もないレネシスの剣を俺は冷静に受け止める。シンシアに比べたら止まって見えるな。


 さらに瞳に魔力を込め、レネシスの情報を()()


 【名前】レネシス・ミルハート

 【種族】人間 女

 【年齢】15

 【職業】勇者見習い

 【レベル】1

 【魔力】180

 【固有スキル】???

 【性癖】???


 ――なるほど。まだストーリーは始まってないもんな。初期ステータスは確かにこのくらいだった。


 俺は自分のステータスを確認することはできないが、リッチを倒したことでレベル5くらいにはなっているはず。


「……くっ! なかなかやるわね!」


 力比べでは勝てないと思ったのか、レネシスは一旦距離をとる。剣を構え直し、俺を睨む。


「少しは見直してくれた?」

「……まだまだッ!」


 もう一度、俺の方へ駆け出すレネシス。

 直線的な攻撃では届かないと感じたのか、足捌きでフェイントをかけながら身体を沈み込ませ、鋭い突きを繰り出す。


「よっと」

「――ちょっと! なんで避けるのよ!」

「なんでって言われても」


 俺にあっさりと突きを躱されたことに驚いているレネシスは地団駄を踏んでいる。そりゃ避けるでしょ。


「それじゃ、俺もそろそろ……!」


 足に魔力を込め、【魔眼】も使いながら【一ノ型・風凪】を撃つ準備をする。


 魔力を使い始めた俺に気付いたレネシスは警戒を強め、剣を構え直している。


「――ふッ!」


 足に込めた魔力を一気に解放し距離を詰める。レネシスはその速度に目を見開きながら防御体勢をとるが――。


 俺はその動きを【魔眼】で見切りながら、その防御の隙間を通すように剣を薙ぐ。


「――【一ノ型・風凪(改)】!」

「……ッ!」


 甘い防御の隙を突いた俺の剣戟は、レネシスの木剣をキレイに吹き飛ばす。


 ――リッチを倒した時より、よりシンシアのイメージに近づけた気がする。その確かな手応えに俺は小さくガッツポーズ。……よし!


「……なんでッ! なんで勝てないのよ!」


 レネシスは俺に剣を弾き飛ばされたショックで涙目になってしまった。ちょっとやりすぎたかな……。


「お兄ちゃんすごい!」「かっこいいー!」「レネお姉ちゃんも強いのに!」


 俺たちの模擬戦を見ていた子どもたちがワイワイと騒いでいる。みんな俺のことを憧れの瞳で見ていてすこし恥ずかしい。


「クロード、すごいです!」

「あ、ありがとう姉さん」


 シンシアが近づいてきていつものように俺を抱きしめようとするが――。


「クロード!?」


 それをスッと避ける。流石にこんな公衆の面前で抱きつかれるのは恥ずかしすぎるからな……。


「大丈夫? これで少しは認めてくれた?」

「……分かったわよ。確かにアンタは強い。……けど! いつか絶対超えてやるんだから!」

「はいはい。まぁ俺ももっと強くなるけどね」

「うるさいわよ! じゃあそれを超えるくらい頑張るだけだし!」


 やいやいと言い合う俺たち。流れで戦うことになったけど、結果的にいい感じになってよかった。


 ――そんな俺たちを隠れて見つめる一つの()()に、俺は気づくことはなかった……。


 

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