雪の中の二人
あるビル街の一角。
細い路地のこの場所に人の気配はない。
パラパラと落ちる雪が地面を浸食し薄く白い絨毯を作り始める。
季節は冬。
冷たい風が体を刺し、体中にダメージを与えてくる。
俺は、体中を確認する。
体中の切り傷に、赤い鮮血が滴り落ちている。
手元に収まる銃に俺の血がぬめりと付着している。
暗がりに向けた銃口の前には、一人の人影が片足を地に伏している。
暗がりが少し薄れる。どうやら目が慣れてきたようだ。
その場には、少女の姿があった。
そう、『見慣れた姿』の少女だ。
少女の姿も俺と同じように傷だらけで、流れた血が地面に敷かれた雪を赤色に染めている。
「ホワイトクリスマスだね……」
「あぁ……、そうだな」
俺は、空を見上げる。今日は約束していた。
目前にいる少女と。
この日を一緒に祝おうと。
「駄目、だったね。私たち今も神様に嫌われているみたい」
「……神様なんていないよ」
俺は、投げ捨てるように少女に言う。
「ふふ、そうだったね。そう、神様なんていないね」
「……」
『ガチャ』
俺は、銃のハンマーを手前に倒す。
ハンマーを倒すのに合わせてシリンダーも一緒に動作する。
『ウオーーン』
パトカーのサイレンの音が二人に近づく音がする。
どうやら、時間もなさそうだ。
「……して」
少女は項垂れながら、か細い声を放つ。
「……いいのか」
俺は、少女に問いかける。
「うん……。覚悟はできてる」
「そうか……」
俺は、トリガーに手をかける。
「ありがとう……これでようやく……」
そう言うと、少女は鼻歌を奏で始める。
どうやら定番のクリスマスのテーマソングのようだ。
少し音程がずれている。
「ありがとう……」
「……」
『バンッ』
俺は引き金を引き、その場には大音量の銃声が響き渡る。