いつもの朝
こちらとしては婚約破棄をご希望です!?のティア編となります。
「ティア、ウィル。起きなさい!朝ごはんの時間よ」
声が聞こえて、ティアは目をあけた。
えー まだねたい。
けど、ママにおこられちゃう。
ティアは狭いベッドの中で、身震いした。
季節は冬、薄い布団一枚じゃ身を縮めていても隙間から冷気が入ってきて逃げ場が無い。
ティアがまぁるくなって寒さに耐えていると、足が温かいものに触れた。
ウィルの足、あったかーい。
もっとくっつけちゃお。
弟のウィルはよく寝ている。まだまだ起きる気配は無い。ふわふわの髪とぷっくりしたほっぺたのウィルは見た目だけでも暖かそうだ。
ティアは足だけでなく、ウィルのほっぺにも両手をつけてみた。ここぞとばかりにウィルから暖をとる。
ひゃーすごいあったかい。
ウィル、さいこう!
「こら!早く起きなさい!スープが覚めるでしょう」
「はぁい。ウィル、起きるよ」
「うーん」
「おーきーて」
母の声に寝る事を諦めたティアはウィルのほっぺから手を離し、肩をたたいた。
まだまだ眠いウィルは何とか目を開けてブラウンの目でティアを見た。母とティアは金髪に青い目だが、ウィルは金髪にブラウンの目をしている。父ドイルに似たのだろう。
「おはよ……ケホッ」ウィルが起きたことを確認して、ティアはベッドから降りる。続いてやっと起きた眠そうなウィルの手を引いてキッチンへ向かった。
きょうのごはんはなにかなぁ?
やったぁ!ジャガイモのスープだ!
テーブルにのせられたジャガイモのスープとパンを見て、ティアは急いで椅子に座った。ウィルもティアの隣の椅子になんとかよじ登って座る。
「ティア、ウィルおはよう」
「パパ、おはよう!!」
「おはよぉ」
「ははっ!ティアは朝から元気だな」
「ティアはお転婆なのよ!もう!」
反対側に座っている父がティアとウィルを微笑んでみている。
母はテーブルの真ん中にデン!と置かれた鍋から木の容器一つ一つにスープを注ぎ、皆の前に置いていく。スープからは温かそうな湯気がたち、パンは少し固いけれどスープにつければほぐれて美味しい。
「いっただきまーす!」
「ローラ、今日の仕事は早く帰れそうだよ」
「あら、そうなの?」
「あぁ、やっと一区切りついたんだ。後は山から切り出した木を運ぶだけだ。明日からはまた別の現場に行く事になる」
「そう…わかったわ。気をつけてね」
ティアはパンを必死にスープに浸していたが、ステキなニュースが耳に飛び込んできて思わずパンをスープに落とした。
「やった!パパ、はやくかえってくるの?じゃあ、あそぼ?」
「ぼくも……」
「あぁ、帰ってきたらな。いいぞ」
やった!きょうはパパとあそべる。
きのぼりできるようになったからみてもらうんだ!
ティアはウキウキした。ウキウキしすぎて、顔はニコニコ、足もバタバタ。当然、そのウキウキはすぐに母に見破られた。
「ティア、木登りはだめよ。今日は午後から雨が降るし、ウィルもまだ風邪気味なんだから。大体!女の子は木登りなんてしなくていいの!」
「はーーーーーい!」
ママはいつもうるさいなぁ。
ぜっったい、きのぼりするからね!
「ママ、スープおかわり!」
「はいはい、あらっ ウィル全然食べてないじゃない」
ティア・アルドナにとってこれが6歳までのいつも通りの日常だった。