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09 セシリアは家族の誤解を解きたい

 ペイフォード家でのお茶会から戻ったセシリアを、母やメイド達は満面の笑みで迎え入れた。


「もう、この子ったら! ベイルさんのこと、婚約者候補だなんて言っておきながら、二人があんなにラブラブだなんて!」


「セシリアお嬢様が、今朝『銀色の髪飾りをつけたい』と言っていたのは、ベイル様の髪のお色だったからなのですね!」


 まるで自分のことのように喜んでくれる人達を見て、セシリアはあせった。


(ものすごく誤解を与えてしまっているわ)


 ベイルにお姫様抱っこをされているセシリアを見たあとなら、そう誤解しても仕方がない気がした。


「あの、お母様、そうではなく実は……」


 母は少女のように瞳を輝かせて「ベイルさんの瞳は緑色なの? だから緑色のワンピースを着たの?」と聞いてくる。


「いえ、ベイル様の瞳は青で……」


「あら、じゃあ青いワンピースとドレスを買わないとね」


「いえ、そうではなく……」


「それとも、ベイルさんが、あなたに自分の色のものをプレゼントしてくれたりして!」


 母とメイド達は「きゃー」と盛り上がっている。


「あの、お母様。ベイル様とはお友達になっただけで……その」


 セシリアの話は誰も聞いてくれない。困っていると、幼い弟がトテトテと歩いて来て、セシリアの膝にぴっとりとくっついた。


「おねぇさま、きょう、いっしょにねても、いいですか?」


 セシリアが弟の髪をなでると、弟はくすぐったそうにニコリと笑う。


「そうね、一緒に寝ましょうか」


 年の離れた弟をセシリアが抱きかかえると、弟の口から甘い香りがした。


「お菓子を食べていたの? 歯磨きをしないとね。 夕食は食べられる? 寝る前にお風呂にも入りましょうね」


 セシリアの腕の中で弟が「はーい」と元気に手をあげた。



*



 数日後、ランチェスタ侯爵家にセシリア宛の荷物が届いた。


 綺麗にラッピングされた大きな箱を受け取ったメイドが「セシリアお嬢様宛です」と教えてくれる。ちょうど母とお茶を飲んでいたセシリアは荷物を受け取り差出人を見た。


(ベイル様からだわ。大きな箱だけど何かしら?)


 不思議に思っていると、母が「開けてみなさいよ」と、期待に顔を輝かせている。言われるがままに箱を開けると、中には若葉を思い出させる優しい色合いのドレスが入っていた。


「わぁ……」


 手に取りドレスを広げると、シフォン生地でできたドレスがふわりと広がる。ドレスの胸元から腰ラインに小さく白い花々が飾り付けられていた。


(可愛い……素敵だわ)


 それは物語の中に出てくる妖精のようなデザインのドレスだった。セシリアがうっとり見とれていると、横から母が「あら、青色じゃないのね。可愛すぎるし、貴女には似合わなさそう」と現実を突きつけた。


「そうですね……」


 言われてみれば、このドレスは憧れのクラウディアをイメージしたようなドレスだった。


(ベイル様は、クラウディア様に似合いそうなドレスを贈ってくれたのかしら?)


 確かにこのドレスを部屋に飾っておけば、いつでも憧れのクラウディアの側にいられるような気になれる。


(これは、そういう楽しみかたをするためのものなのね。なるほど、さすがベイル様。私よりクラウディア様のファン歴が長いだけあるわ)


 母が「あら、まだ何か入っているわよ」と言うので、見て見ると箱の底には本が数冊入っていた。


(あ、もしかして、先日のお茶会でクラウディア様が好きだと言っていた本?)


 ベイルの心遣いがとても嬉しい。


 母に「何かお返ししなくちゃね。ベイルさんは何が好きなの?」と聞かれたので、セシリアは「ベイル様のご趣味はきちんと把握しておりますわ」とニッコリと微笑んだ。


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