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【コミカライズ記念SS】出会ったときの印象を今になって伝え合う

 その日、ペイフォード公爵家では、恒例のお茶会が開かれていた。


 お茶会といっても参加者は二人きりで、一人は次期公爵のベイル。そして、もう一人はその妻セシリアだった。


 二人は、使用人達を下がらせて、ソファで肩を並べてくつろいでいる。


 ベイルの手が、セシリアのブラウンの髪を優しく撫でた。セシリアは、髪色と同じくブラウンの瞳でまっすぐベイルを見つめている。


「そういえば、あなたと初めて会ったのもお茶会だったわね」

「そうだな。あのときは、お互いにまだ婚約者候補だった」


 優しく細められた青い瞳は、どこか暖かい。ベイルの銀色の髪も、初めて見たときは、誰も踏み入れることのできない雪原のようだと感じたのに、今は光を浴びてキラキラと輝いている。


「ベイルは、だいぶ変わったわね」


 その言葉に、ベイルは悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「怖くなくなったか?」

「あ、あれは……」


 セシリアが悪気なく「出会ったころは、ベイルが怖かった」というような話をしたら、よほどショックを受けたのかベイルの顔からみるみると血の気が引いてしまった。


(あのときから、その話題には触れないようにしているのに)


 セシリアの気持ちも知らないで、ベイルは「今さらだが、俺のどこが怖かったんだ? 具体的に教えてほしい」などと言ってくる。


(また傷つけてしまわないかしら?)


 ベイルは、口元に小さな笑みを浮かべながらセシリアの言葉を静かに待っている。


「今の話ではないわよ? えっと、出会ったころのベイルは、なんというか威圧感がすごかったの」

「威圧感……」


「目つきも鋭かったし、ニコリともしなかったでしょう?」

「そうだったかな?」

「そうよ。私じゃなかったら、きっと逃げ出していたわ」


 ひどいことを言われているのに、ベイルはなぜか嬉しそうだ。


「そういえば、ベイルは初対面の私をどう思ったの?」


 そのとたんに、「よくぞ聞いてくれました」と言わんばかりにベイルは力説を始める。


「あのときの俺は恋愛に興味がなさすぎてよく分かっていなかったが、今思い返せば俺は初対面でセシリアに惚れていた! 話していて楽しかったし、一緒にいるのが心地よかった」

「本当に? そうは見えなかったけど」


 疑いの眼差しを向けるセシリアに、ベイルは真剣な表情を返す。


「本当だ。今までセシリア以外に一度たりとも、そんな気持ちになったことはないからな」


 そこまで言い切られてしまうと、セシリアも信じるしかない。


 しかも、「俺のほうが先にセシリアの魅力に気がついていたんだ」と誇らしそうな顔までしている。


「じゃあ、そういうことにしておくわ」


 ベイルが両手を広げたので、セシリアは体を傾けて、その腕の中に収まった。すぐ近くからベイルの低く聞き心地のいい声が聞こえてくる。


「もし、セシリアが俺から逃げていたとしても、追いかけていただろう」

「じゃあ、どちらにしろ私たちは結婚していたのね。だって、ベイルから逃げ切れる気がしないもの。それに、一緒にいたらベイルが優しい人だってすぐに分かるから」


 セシリアを抱きしめるベイルの腕に力が入る。


「はぁ、俺は幸せ者だ」


 セシリアは、クスッと笑った。


(でも、出会ったころのベイルに追いかけられていたら……本当に怖かったでしょうね)


 恐怖で泣いてしまっていたかもしれない。

 そんな気持ちにそっと蓋をして、セシリアは「私もよ」と囁くのだった。



 おわり




【宣伝】

本日、コミックシーモア様でコミカライズの連載がスタートしました。


白良木羅々先生によるコミカライズ

『地味令嬢が氷の騎士様に溺愛される方法 〜私の推しはあなたの妹です〜』


明るく笑える美麗マンガですよ♪

どうぞよろしくお願いいたします!

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