【リクエスト番外編⑥】ディアに萌え転がるセシリア
※ピクニック後のお話です。
【ベイル視点】
楽しいピクニックは、あっという間に終わってしまった。
川に入ったセシリアを見た時は、思わず「小石で足を切ったら、どうするんだ!?」と、怒ってしまったが、セシリアに悲しそうな顔で「ごめんなさい」と言われれば、すぐに許してしまった。
(まったく、俺はセシリアに甘すぎる)
クラウディアとアーノルドと別れると、ベイルはついため息をついてしまった。隣を歩いているセシリアが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「ベイル、まだ怒ってる?」
こういう時に限って、敬語を使わないセシリアはズルい。不安そうな顔をされると、抱きしめてすぐに愛を囁きたくなる。
(いや、危ないことをした時は、しっかり叱らなければ!)
「怒ってはいないが、もう危ないことはしないでくれ」
「はい……」
しょんぼりとしてしまったセシリアに、グッと胸を締め付けられた。
(う、ぐっ、可愛い)
セシリアの部屋の前に辿り着いた。
(少し、モフりたい)
セシリアと一緒にベイルも部屋の中に入ろうとすると、セシリアがくるりと振り返った。
「本当にごめんなさい。でも、とっても楽しかったわ。また行きましょうね」
「ああ」
花開くような笑みを浮かべたセシリアは「では、また明日」と言ってあっさりと扉を閉めた。
「…………」
ベイルは、少し迷った後に、扉の取っ手に手をかけた。
(いや、セシリアが疲れているのは分かっている。だが、少しだけ、少しだけ、こう……抱きしめたい)
そっと扉を開くと、セシリアは部屋の中でクルクルと回っていた。
「はぁ、楽しかったわ」
ニコニコと微笑みながら、ソファにコテンと倒れ込む。
「まさか、クラウディア様に、お姉様と呼ばれるなんて……」
セシリアはクッションをぎゅうと抱きしめた。
「ディア、ディア……」
クラウディアの愛称を繰り返すと、「フフッ」と頬を赤く染めて、ソファの上でコロコロと転がっていた。
(な、んだ!? か、かわ、可愛っ、可愛い!!!!!)
あまりの愛らしさに、ベイルの意識は飛んだ。そうしているうちに、セシリアとバチッと視線があった。そのとたんに、大きく目を開いたセシリアは真っ赤な顔でフルフルと震え出す。
「べ、ベイル……覗き見なんて、ひどいわ」
「セシリア、その、違うんだ!」
「もう、知りません!」
怒って涙目になったセシリアに、勢いよく扉を閉められ鍵をかけられてしまったが、見たこともないようなセシリアの愛らしい姿が見られて、ベイルの心は満たされるのだった。
【リクエスト番外編⑥】おわり