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16話目 疑惑 いつから立場が逆転したんだぁぁぁ

おばちゃんの金づること、第17師団教育大隊大隊長殿は返礼をすると、にこやかな顔をして俺たちの方を向いた。


おいっ、ちょっと待て。

この笑顔は何度か見たことがあるぞ。

そうだ、初めてこの系統の笑顔を見たのは確か、中学の時に受けた肉壁ちゃん適正検査の後に尋ねた来た本業が厳つい自由業で副業が肉壁の穴へ勧誘する強面の方が見せたものと同じじゃないか。

おばちゃんやばいって、本業が厳つい自由業の強面のお方を金づるに仕立てるなんて、絶対無理。

金一封は借金だとか言われて、十一の利子を付けられ、払えないと教会本山の門前町の裏通りの更にいかがわしい休憩所で女給さんを、しかもユニフォームは紐のみでOKということをやらされるに違いないよ。

ここは大人しく、目立たないように言うことをハイハイ聞いていた方が良いぞ。

金づるにするなんてとんでもない。


"ふっ、大きな儲けにはリスクは付きもの、多少の危険は覚悟しないと。"


だからあの手の笑顔を見せてくる奴の持っているリスクは半端ないんだって。


"う~ン、リュウ君がそういうのなら、しばらくは目立たずに様子を見ようか。"


肉壁の穴に帰るまでそうした方が良いって。


"とりあえずはエン君がどうなるかを見てればいいのね。

真っ先に目を付けられそうだもの。

突然目の前から消えて、そのまま鉱山へ・・・・・。"


おばちゃんはそう言うと目を細めて未だにザビエル君の頭部を維持しているエンの方を見ていた。


「魔法術士育成学校、聖戦士育成学校の3年生の皆さん、こんにちは。」


例の笑顔を張り付けたままの大隊長がいきなり挨拶を始めてしまった。


「今日から10日間の実戦訓練を共にします第17師団教育大隊のものです。

後に紹介しますが、門の向こうに待機しているのが今回皆さんの実戦訓練のお手伝いをさせていただく教育大隊第3中隊です。

見た目は強面の厳つい者たちですが心根は本当にやさしい者ばかりですので、わからない事や辛いことがあったらどうか気軽に声を掛けていただければと思います。」


うぁぁぁぁ、その笑顔とこの優しい言葉に騙されて俺たちは肉壁の穴に放り込まれたんだよな。


"そっ、奴の本業はエゲルの歓楽街の裏通りにあるいかがわしい宿泊所街の顔役で裏の本業がそこの女衒の元締めなのよ、絶対。"


おばちゃん、それじゃぁ、こいつらは大隊長や教育隊のふりをしてここに潜り込んで、世間知らずな肉壁ちゃんと魔法術士候補生を言葉巧みに丸め込み、女子生徒はいかがわしい宿泊所に売り飛ばし、雄共は鉱山で強制労働させるってことなのか。


"さっきの言葉も如何にもって感じよね。

ちなみに潜り込んでというか、アルバイトで大隊長や教育隊をやっているのよ。

さすがに、女衒の集団が軍の基地に潜り込むなんて無理よ。"


アルバイトなんだ、あの大隊長は。

本業がいかがわしい宿泊街の強面の厳つい顔役で、裏の本業が女衒の元締め、アルバイトで軍の教育隊の大隊長かぁ。

じゃぁ、さっきの如何にもフレンドリーそうな言葉はアルバイト向けで、本業と裏の本業の立場に置き換えると、こんなもんになるのか。


>> 門の向こうに待機しているのが、てめぇらの品定めをするエゲルのいかがわし宿泊所街所属の女衒の精鋭部隊だぁ。

見た目通り強面の自由業を生業としているからな、どんな悪どい事にも何の躊躇もなく手を染められるぜ。

今更逃げらんねぇからな。

この証文(意訳: 一枚目が基地への入構記録、すかしの2枚目が借用書)があるかぎり、地の果てまで追いかけて行くからな。<<


「それではここで立ち話もなんですから、私たちの後を付いて来て下さい。

本日のミーティング場所にご案内します。」


最後に飛び切りの笑顔を向けてからアルバイトの大隊長は自ら率いてきた精鋭部隊の方に踵を返した。


その笑顔に吸い込まれるように、もう逃げるすべのない俺たちは荷物を持ってベースキャンプの門をくぐり、迎えに来た中隊規模の部隊と合流した。

その部隊の軍人たちもなぜか笑顔だ。


"このカモネギの集団を百戦錬磨の女衒精鋭部隊が品定めして、今年は上玉が揃っていると思ったら笑いが止まらないっていう雰囲気だよ。

どうしよう、私の初めてはリュウ君にもらってもらうって決めていたのに、リュウ君以外は私の肌に触らせないと決めていたのに。

エゲルの繁華街の裏のあやしい休憩所で散らされるのね。

そしてリュウ君は人類領の果ての鉱山に連行され、わずか一週間で死神さんのお迎えが。

私はそれを知らずにかび臭い怪しい休憩所の詰め所でひたすらリュウ君が助けてくれるのを待つの。

もう、二度とリュウ君に会えない、そこから出られることもないことを知らずに。"


おばちゃん、一人で何を悲劇のヒロインに浸ってんの。

それにもう既に俺が逝っちゃったことになってるんですけど。


"例の鉱山に行ったら一週間しか持たないって、義足の教官が言ってたような気がするけど。"


俺たちは中隊ごとに整列し、その周りを女衒精鋭部隊が取り囲んだ。

そして、基地の中を強制移動させられ、ある建物の方に誘導されているようだ。


おばちゃん、これからどこに連れて行かれるんだろ、俺たち。


"まずは全部脱がされて、身体検査じゃないの。

体つきや健康状態でランクを付けられるのよ。

私なんて確実に最高ランクで取引されて、その高額な金額をそのまま私の借金とされちゃうの。

きっと一生、そのあやしい休憩所に身を捧げて働いても働いても借金は返しきれないんだわ。"


いつの間におばちゃんが最高ランクってことになったんだ。


"おだまり、ポチ。"


そして、女衒の顔役とその精鋭部隊に連行されてきた場所は、門からかなり離れた一角にある建物だった。


"リュウ君、見て。

あの鉄格子は絶対に一度入ったものを逃がさないって感じよね。"


この建物って、まさか、女衒の元締めといかがわしい休憩所のオーナーや鉱山経営者の闇取引の場なのか。


"まさにそう言った感じよね。"


そして、先頭を歩いていた女衒の顔役がそのあやしい建物の玄関前で振り返った。


「ここでこれからの実戦訓練の説明と昼食、午後からは中隊ごとにミーティングをやってもらいます。

まずは荷物を持ったまま入って、右奥の会議室に進んでくださいね。」


ますます、笑顔が濃くなった。

もう、笑顔じゃなくて、笑いが止まらないって感じですね。

そうですか、もうすぐ大金が転がり込むんですか。

この建物の中で女衒の元締めの監修で闇オークションか闇取引が行われるんですね。

あっ、女衒にとって邪魔な雄共は二束三文、十把一絡げで鉱山経営者に引き渡しですか。


"リュウ君、可愛そう。

外から見れば二束三文の価値なのね。

でも。私だけはちゃんと君の価値をわかっているからね♡"


なにを暢気な、おばちゃんもこっち側じゃないの。


"何を言ってるのリュウ君。

君の将来の愛するパートナー♡が鐚銭の価値しかなくても良いの。

ポチ、ようく聞きないさい。

私は一生、いかがわしい休憩所で身を粉にして働いても返せないほどの金額が付いて、そのまま私の借金となるのよ。

あぁ、美しいって罪ねぇ。"


えっと、鐚銭ほどの価値でも、一生返せない借金の価値でも、このままこの建物の中に入ったら永遠に離れ離れ。

もう二度とパートナーにはなれませんよね。


「がぁぁぁぁぁぁぁっ。リュウ君、この中に入っちゃダメぇぇぇぇ。」


玄関前でおばちゃんが雄叫びをあげた。


ここまでの成果

魔力回復: 30-2%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 21時間56分

(いつの間にか私たちが金づるになってる・・・・・。(おばちゃんターン))

(いつからこうなったぁぁぁ。)


突然の立場逆転で、スキルが大幅down。

ボーナスなんてマイナスに行っちゃったよ。


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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よろしくお願い致します。


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