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15話目 疑惑 あらたな金づるの登場か

全身が靄で包まれ、何も見えなくなった。

おばちゃんに襟首を掴まれた感覚も、野郎どもと不本意ながら密着している感覚も一瞬なくなった。


接触している感触は直ぐに戻ったが、白い靄は直ぐには晴れない。


白い靄もやがて少しづつ薄くなり、視界も戻ってきた。


同じ石造りの大きな部屋であるが、教会本山の転移魔法陣の施設とは違い、壁に幾何学模様を極彩色で彩ったタペストリーなどの装飾品がいくつかかけてある。

また、空の魔法溜を入れておく棚も、教会本山は何の飾りもないただの木の板だったが、ここにある棚は木彫りの装飾が施され、良く磨き上げられているためか、それが鈍く光っていた。


エゲルの教会に転移してきたことが分かった。


「さぁ、次が転移してくるから急いで外に出るわよ。」


大事そうに新品の腐ったノートを持った腐女帝様が、これもまた豪華な装飾が施された木のドアの方に歩いて行く。


俺は、襟首から移動したおばちゃんの手で腕を引っ張られた。


「リュウ君、私たちも外に出ようか。」


"むさい男たちにもまれてかわいそうに。

エリカちゃんから転移魔方陣での立つ場所の指示が出ていなかったら、私と密着して転移できたのにね♡。"


窓から漏れ出た日の光におばちゃんのにこにこした顔が照らされていた。


んっ、おばちゃん、なんかいいことあったのか。

そんな嬉しそうにして。


"リュウ君と密着して転移するところを想像したら、思わず顔がほころんじゃった。

まぁ、今はリュウ君と手を繋げるだけでうれしいかな。"


良かった、転移前はエレン教官からアンパンをもらったことで何か超機嫌が悪かったけど、転移して機嫌が直ったのか。

不機嫌な心は教会本山に取り残してきたのかな。

まぁ、おばちゃんの機嫌が良いことに越したことがないからな。


それに俺にとっては思いがけずエレン教官からアンパンをゲット・・・・・・・、あれっ、咥えていたはずのアンパンはどこいったぁぁぁぁぁぁ。

俺の心とお腹の友のアンパンがぁぁぁぁ。


"転移直前に私が魔法陣の外に放り投げておいたわよ。

余計な物は持ち込んではいけませんって、実戦訓練の分厚いしおりに書いてあったでしょ。"


実戦訓練のしおり?

んっなのあったか。

それに俺の心とお腹の友を余計な物扱いにするって酷いんじゃないのか。


"リュウ君の女神である私の下賜したアンパンはリュウ君の心とお腹のご親友だけど、乳牛が渡したブツは余計な物、汚物、持ち込む必然性が全くないやつよね。"


えっと、いつの間にかおばちゃんが俺の女神に復活したのかと・・・・。


"ずっとリュウ君の女神でしょ。

私と一緒になってからずっと幸せだったでしょ。

お腹に聞いてごらんよ。"


「ぐうぅ。」


うぁぁ、いつの間にか俺の胃袋様がおばちゃんに飼い慣らされているのかぁ。


"わかったようね。

ポチは飼い主以外から餌をもらっちゃダメ。

わかった? "


これって、俺とおばちゃんの関係が、女神 VS 信徒なのか、飼い主 VS ポチのいずれかを選べってこと?

おばちゃんは神か人、俺は人かポチ。

何か設定に物凄いギャップを感じるんですけど。


"ポチはそういう難しいことを考えてなくても良いの。

お腹すくわよ。"


いやぁ、アンパンを取り上げられたうえに、さらにお腹が空くのは勘弁だな。


"じゃぁ、リュウ君はポチで、私が飼い主で良いわよね。

ポチは他所んちで餌をもらっちゃだめよ。

良いわね。

その代わりに、後で私が購買でアンパン買ってあげるからね。"


ワン、ワン (意訳: アンパンに罪はない。もらえればどっちでもいい。)


最後の転移組を待つ間、転移魔法陣の部屋の外でおばちゃんと熱いアンパン談義に興じていのだが。

やがて、後ろの転移魔法陣の部屋の大きな両開きのドアが再びゆっくりと開いた。


「リュウく~ん。大事なアンパンが転移魔法陣外に落ちてたわよ。

ダメじゃない、心とお腹の親友を邪険にしちゃ。」


ドアからプルンプルン教官が先ほどのアンパンの袋を振り振りさせながら出てきた。


"もう、乳牛は話を元に戻して、ややこしくしないで。"


大隊全員の転移が終了したので、急いで教会を後にした。

まだ、幾人も教会本山からエゲルに転移してくるはずなので、出来るだけその人たちの転移の邪魔にならないようにするためだ。


ちなみに例のアンパンはおばちゃんに取り上げられてしまった。

購買でアンパンが買えなかったら返してもらえるそうだ

購買でアンパンが買えたら俺の心とお腹の親友はどうなっちゃうんだ。


"エン君に与えるからいいのよ。

エレン教官からの差し入れよって手渡したら、何かを想像して前かがみになってガバッと奪い取るはずだから。"


何かって、あれかぁ。

丁度、2個だし、大きさ的にもなぁ。

まぁ、アンパンで前かがみになれるなんて、流石、弩スケベのエンだ。


エゲルの教会と第6軍団のベースキャンプは近接しており、歩いて15分ほどでベースキャンプの門にたどり着いた。

俺たちは軍の転移時間枠で転移してきたので、教会からエゲルの町に荷物を運ぶ馬車に何度か追い越された。

元々転移魔法陣自体が軍関係の人や物を運ぶために設置された経緯もあり、民間利用より軍関係の利用が優先されている。

軍の基地ではなく教会に転移魔法陣を設置されているのは、軍の基地にそれを設置すると民間利用がし難くなるために教会に設置されたという経緯あるらしい。

まぁ、そういう経緯で軍が転移魔法陣を利用しやすするために、軍の基地と教会は近接して建てられていることが多いそうだ。


ベースキャンプの門の前に設置されている受付、門の外にあるため簡易要塞、トーチカのような厳つい建物にエレン教官は近づいて行って、中の人と何か話し合っている。


門の中には広大な敷地が広がっており、肉壁の穴のような石造りの厳つい建物が整然と並んでいた。

建物の間を幾人もの軍の関係者が忙しく駆けまわっている。

流石、この地域を管轄する第6軍団の本部だ。


行軍訓練を行っているのだろうか、中隊規模の部隊が整然と並んで行進しているのも見える。

その中隊レベルの部隊の一つが門の方に近づいて来た。

これから町の外に訓練に行くのだろうか。

その様子をぼ~っと眺めているとその中隊は門のすぐ内側に停止した。


んっ、俺たちが邪魔なのかな。


そう思って見ていると、その中の一人が門の外に歩いて来て、エレン教官の前で立ち、胸に拳を当てて敬礼をしていた。

エレン教官も同様に返礼していた。


誰だ、基地から出て来てブルンブルン教官に挨拶しているおじさんは。

ブルンブルン教の信徒か。

じゃ、エンの仲間だな。

弩スケベなおじさんってことだな。


エレン教官と挨拶しているおじさんを弩スケベ認定していると、エレン教官は俺たちの方を見て声を挙げた。


「整列。」


エレン教官のその凛とした声にびっくりしたが、教官の命令口調に俺たちは考える間もなく体が反応して小隊ごとに整列した。

お淑やかな大男さんの背中にくっついていたオムツと座敷童も直ぐに地面に降りて、所定の場所に整列していた。

まぁ、前から見たら全く見えない二人ではあるが。


「本日からの実戦訓練でお世話になる第17師団教育大隊大隊長殿に敬礼。」


その声に反応して、俺たちはいっせいに拳を胸に当てて敬礼のポーズを示した。


"こいつにうんと言わせれば金一封がGETということね。"


おばちゃん、大隊長ですら金づるとしてしか見えていないのか。


ここまでの成果

魔力回復: 36+9%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 15時間49分

(おぉぉぉっ、こいつが新しい金づるね。(おばちゃんターン))

(お金を持ってるようには見えないんだけど。)

(確かに、その貧相な容姿かららするとこいつは金は持ってないわよね。

でも、こいつが金一封に値する戦果なのかを判断するのよね。(おばちゃんターン))

(じゃぁ、心証を良くしておかないとまずいよな。)

(それよりも、あの薄そうな頭にこれ(意訳: ばっちゃの形見)を当てれば、何でも言うことを聞くんじゃないの。(おばちゃん談))

(おばちゃんがだんだん悪魔の手先に見えてきたんだけど。ボソ)

(ポチ、なにか言った。(おばちゃんターン))


悪魔の手先に飼われている俺って。

これからどうなる。一生、裏街道、裏駄菓子屋の道を歩むのか。

ガクブルで、スキルdown。

おばちゃんの守銭奴タゲがおれからおじさんに移って、ボーナスUP


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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