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13話目 疑惑 まさか趣味が変ったの

第6軍のベースキャンプがあるエゲルの教会への転移を待つ控室では、教官たちを除けば60人弱の10代後半の若者が狭い控室に集っているにもかかわらず、辛気臭い重い空気が支配していた。

まぁ、とある一部分の奴らは異常なほど熱気を帯びていたが。


若者のほとんどは本当に最前線での戦いに赴くという現実を突きつけられたという思いにふけって。

魔牛乳帝様を含む火力バカ共チームは思ったよりも早く敵に突っ込めるという興奮に酔いしれ。

お淑やかな大男さんと座敷童帝はいつものように皆を見守るように静かに佇んでいる。

弩S腐女帝様はニヤニヤしながら男子生徒の様子を観察し、時々例のノートに何かメモっている。

エンは・・・・・、まあ、もういいだろう。


おばちゃんは一人で全く別の皮算用をして、目をコイン色に輝かせてデヘテヘしている。

これから戦場じゃなくて僻地にぼったくり行商にでも行くつもりか。

そして、そんなおばちゃんの様子をびくびくして眺めている俺。

なんか将来の俺にとってとんでもない災いが後々圧し掛かってきそうな予感に震えていた。


その時、カオスな控室のドアが軽いノックの後に開かれた。


「皆さん、15分後に転移魔法陣が使用できますので準備をお願いします。」


転移魔法陣の施設の職員と思われる若い女性が転移の準備ができた、その時間が来たことを告げに来た。

その声で沈んだ物思いから解放されたようにエレン教官が声を挙げた。


「さっ、時間よ。

今回の実戦訓練の詳細については第6軍団のベースキャンプで説明があるはずよ。

まずは転移して、その説明を聞きましょう。

エゲル行きの転移魔法陣が設置してある部屋に行きますから、荷物を持って、廊下に2列に中隊毎、さらにチーム毎に並んで頂戴。

遅れると他に転移する方にご迷惑が掛かります。

軍人の端くれとして規律ある行動をお願いします。」


そう言うとエレン教官は自分の荷物を持って部屋を出て行った。


多くの者はまだ沈んだ思いを引き摺っているのかのろのろと立ち上がって、荷物を持ち上げていた。

火力バカ共チームだけは"良し"と一言、気合を入れ直すときびきびと荷物を持って出て行った。

あっ、火力バカ2号のリードがドアノブに引っかかって、「ぐえっ」といつものお約束の音が廊下に響いていた。


"さぁ、稼ぎに行くぞう。"


おばちゃんは装備品を一式背負って手にばっちゃの形見を手にすると、空いている手で俺の手を引っ張って廊下に誘った。


やっぱり一人だけ行商にでもいくつもりなのか。


"行商に行くならこんな物騒なものを表に出さないわよ。"


おばちゃんは手に持ったばっちゃの形見を俺の方に掲げてから鞘ごとそれを軽く振った。

一応は戦いに行くことは忘れていないようだ。


"第17師団の最前線にはお金が落ちているのよ。

それもざっくざくと。

誰かに拾われる前にリュウ君がしっかり回収してね。"


俺が拾うのかよ。

その前に魔族軍を倒さないと。

それに今回は姿を捉えることが困難な相手なんだろ。

まともに戦えるかもわかんないよ。


俺とおばちゃんは廊下に出て、座敷童帝と凶暴幼女を背中に生やして静かに佇んでいるお淑やかな大男さんの後ろに並んだ。

凶暴幼女は背中の場所取りライバルの座敷童帝様を睨んで、

"お前のチームは前だろ、ここから下りて並べよ。どうしてもというなら土壁のリーダーの背中に行けよ。ペーターとそんなに大きさが変わんないだろうがぁぁぁ。"

とキャンキャン言っている。

座敷童帝様はそんなことは知らんとばかりに、無表情で廊下の先を見つめているようだ。

彼らの前にはエンが何やらスケベな事を考えて、あれは一番前に並んだエレン教官を見てるな、ニヤニヤしながら並んでいた。


俺の後ろでは弩S腐女子帝様が例のノートを広げて、ぶつぶつとつぶやきながらのそっと並んできた。

"あぁ、手と手を絡めてじゃなくて、腕と腕とを絡めての方が良いわよね、どう思うジェンカちゃん。"とか、ノートを見ながらつぶやいている。

この控室に入ってからその手のことは何もなかったよな。

まさか、さっきの俺とおばちゃんの人生の墓場を掛けた攻防戦をチラ見して、おばちゃんの役を別の♂に脳内変換したとか。

うぁぁぁぁ、と言うことはネタ探しは終わって、今はそれをギリギリ公表できる文章をどう構成するか、イラストはどこまで際どくできるかを考えているところですか。


俺以外に、全く初めての実戦に向かうという緊張感のないチームメンバーと一緒に廊下を転移魔法陣の部屋に向かって進んだ。

少し進んだところで階段を一階に降り、冷たい石造りのかなり横幅の広い廊下をエレン教官の先導で進むこと数分、去年一度入ったことのあるドアの前まで漸く到達した。


転移魔法陣の部屋には大きな荷物の運び入れる必要があるため、転移魔法陣と大きな荷物を運ぶ者の控室は全て一階に設置されている。

各人が持てる程度の荷物しか持たない俺たちの控室は二階にあった。

また、小荷物や手紙などを送る小さな転移魔法陣も2階に設置されている。


目的のドアの前に着くとエレン教官が振り向いて少し声を高かめて、話を始めた。


「今からエゲルの教会に転移します。

まずは廊下の端に寄ってください。

他の場所に転移する人と荷物が廊下を頻繁に通りますから、通行の邪魔にならないように注意して。

それでは中隊ごとに、第1中隊(仮)から転移魔法陣の部屋に移動してください。

あらかじめ必要な魔力溜に魔力を注入して持ってきましたね。

中に入ったら素早く決められた位置にそれを置いて、担当の魔法術士候補生はとっとと転移魔法陣を発動してください。

もう何度も転移しているので要領はわかっていまるわよね。

転移が終わったら魔法陣から素早く出て、部屋の外の廊下に中隊ごとに固まって待機していてね。

それでは第1中隊は中に入って下さい。」


今回の実戦訓練では俺たちの中隊は第2中隊(仮)とあらかじめ決められていた。


第1中隊(仮)がエレン教官に促されてエゲルに通じる転移魔法陣の部屋に入って行く。

その表情はいつもの学校でのそれに比較すると暗いものであった。

それは初めての実戦訓練のため緊張しているというより、やはり先ほどの控室での話が心に影を落としているのかもしれない。


あっ、そうだ忘れてた。


"どうしたの、リュウ君。

昨日渡したアンパンを持ってくるの忘れたの。

今から寮に取りには行けないから、その代わり私のクッキーをあげるから今はそれで我慢して。

後でエゲルの基地の購買でアンパンを補充してあげるね。"


俺が"あっ"と言うとすべてアンパンのことじゃないぞ。

控室でおばちゃんに絡まれたいた俺はまだ魔力溜に魔力を注入していなかったことに気付いたのだ。


「おばちゃん、俺たちの中隊のメンバーが持っている空の魔力溜を急いで集めてくれないか。

おばちゃんが好き勝手に俺を弄んだせいで、まだ俺たちの中隊が転移するのに必要な魔力溜に魔力を注いでないよ。」


「「えっ、まだ、注いで無いの。」」


おばちゃんとエレン教官が同時に叫ぶ。

エレン教官は困った顔をして、少し考えてから後ろの方に叫ぶ。


「しょうがないわねぇ。第3中隊(仮)が第2中隊(仮)の前に転移してくれるかしら。」


後ろから少し力のない返事が。

「了解でぇ~す。」


「弩阿呆、控室で何してたんだ。

ジェンカちゃんとイチャイチャしてる場合じゃなかったんじゃねぇのか。」


凶暴幼女、それは今言わないで控室で言ってほしかったぞ、座敷童帝様とお淑やかな大男さんの背中で戯れていないで。

そうすれば俺も人生の墓場への直行便に乗せられそうにならずに済んだのにな。


"リュウ君、私がお嫁さんじゃぁ不満な訳。

まさか、幼女趣味に変わったの。

それは私と世間様が許さないわよ。"


そっと、ばっちゃの形見のこいくちを切るおばちゃん。


うぁぁぁぁぁ、とんでもございません。

ジェンカ様はとても素晴らしいお嫁さんになってくれると確信しているであります。


"わかっているならいいのよ。"

「さっ、空の魔力溜を集めてたわよ。」


「あっ、ありがとう。」


"できる嫁としては当然よ。"


だんだん深みにはまっていくような気がするんですけど。


"いまさら、手遅れじゃねぇ、じゅるり。"


ここまでの成果

魔力回復: 36+2%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 16時間34分

(私はリュウ君のお嫁さんなのよ。♪~♪(おばちゃん談))

(えっ、それってもう決定ですか。俺は人生の墓場に一直線と言うことですか。)

(私じゃ不満なわけぇ。このもうすぐ網掛けメロンをあきらめるわけ。

まさか、幼女趣味に代わったのぉぉぉ。

私のこれまでの牛乳の努力がぁぁぁぁぁぁ。(おばちゃん談))

(どんだけ牛乳につぎ込んだんだ、おばちゃん。)

(牛乳代を回収するためにも今回の実戦訓練は稼ぎまくるわよ。

いっけぇぇぇ、ポチィィィィ。(おばちゃん談))

(結局、俺も行商に駆り出されると言うことですね。

状況が好転する気配を見せず、スキルダウン。今回はボーナスも大幅ダウン。)


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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よろしくお願い致します。


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